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夏休み キッチンは理科実験室

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公開: 最終更新日:2021年07月26日

台所は理科実験教室

夏休みといえば自由研究。今年はどのようなものにするか、お子さん同様お父さん、お母さんが頭を悩ませているご家庭もあるかもしれませんね。

自由研究といえば、大げさな実験や工作などを連想するかもしれませんが、ふだんお母さんが料理をしているキッチンも、立派な実験教室といえるものです。食物に含まれる成分によって調理のしかたが違ったり、温度によって材料の状態に変化があったり、ふだん何気なく行っていることが、じつは理科で習ったことで説明がつくことだとわかるのです。

そういう意味で、お手伝いは最高の勉強の機会といえますね。

料理や家事で行っていることに関して「どうして?」と突き詰めていくと、とても勉強になることが多いのです。夏休みのようにお子さんが家にいる時間が長いときこそ、そんな時間をお子さんといっしょに楽しむようにしたいものです。

食事で大活躍の「でんぷん」の性質を体験する

日本人の主食、お米。白米として食べる米の主成分がデンプンです。理科で習うデンプンの性質は、

  • 乾燥させると白色の粉末となる
  • 水にとけず、沈殿する
    (ここからデンプン=澱粉という「沈殿しやすい粉」の意味の名前がついたと言われています)
  • こがすとモチがこげたようなにおいがする
  • 湯にとけてのり状になる(デンプンのり)

といったところですが、これらはいずれも料理の過程でみることができます。

乾燥させると白色の粉末であるということは、売っている澱粉の粉末であるかたくり粉がそうであるように、ひと目見てすぐに分かります。ジャガイモなどを切った包丁が乾いたときの様子から、白い粉であることをあらためて確認できることもありますね。

水ときかたくり粉は料理でもよく使いますが、デンプンは水にはとけません。だから水にかたくり粉をとくと、白くにごった液体になります(水溶液は透明である、と理科で習いますね)。そのまま放置するとデンプンが沈殿し、かたくり粉の層と水に分離しますが、ふだんあまりそのような機会はないかもしれません。いちど試してみましょう。

デンプンのりもふだんは作る機会がない、なんて思っていないでしょうか。実は、あんかけなどを作るときにかたくり粉で「とろみ」をつけることこそ、デンプンのり作りに他なりません。あのトロトロこそ「のり」なんですね。

人体がタンパク質でできていることを実感する、たまご料理

理科で習うタンパク質の性質は

  • 熱するとかたまる
  • こがすと髪の毛を焼いてようなにおいがする

ですが、この「熱するとかたまる」ということは、日常的に私たちが経験していることです。

生たまごは、ほぼ液体といっていい状態ですが、これを熱してゆでたまごや目玉焼きにすると、柔らかいですが固まって固体状になります。生肉と熱した肉をくらべても、熱した肉のほうが硬いと感じると思います。

これは、熱によってタンパク質が固まったためです。

ところで、人体の筋肉はタンパク質を原料としてできています。また人間の脳もタンパク質でできています。

今の体温計は、ほぼすべてデジタルですが、昔の体温計(目盛りのついた小さな温度計になっていました)が最高で42度までしかなかったのは、このことに関係があります。

それは、人体をつくるタンパク質が温度によってかたまる温度が42度だからです。42度を超えると体を構成するタンパク質が固まり、人は生命を維持できなくなるため、温度計は42度が限界温度となっているのです。

実体験で原理を知り、化学的な視点を養う

ちなみに消化液に含まれる消化酵素もタンパク質を含んでいますが、こちらも高温になると変質してしまいます。そして一度高温によって変質したタンパク質は、温度を下げてももとの状態には戻りません。焼き肉の温度を下げても、もとの生肉に戻らないのと同じようにです。

理科のテキストには、消化酵素の温度を0度、100度などにして、それを常温に戻してはたらきが失われたかどうか調べる実験がありますが、低温にした消化酵素は常温に戻すと働きを取り戻すのに対し、高温にした消化酵素は常温に戻しても働きが戻りません。

これも、焼き肉を冷やしても生肉に戻らないのと同じ理由ですね。

また食べ方も同様で、焼き魚に大根おろしをつけるのも、酢豚にパイナップルを入れるのも、ちゃんとそれぞれに含まれる酵素が消化を助けるという理由があるのです。

このように、ふだん何気なくおこなっている料理も、化学の法則に則って行っているものなのですね。

こういった原理を知りながら実体験することで、仕組みを考えて理解し、さまざまな現象に興味をもつ姿勢が培われていきます。

この夏、お子さんといっしょにキッチンに立ってみませんか?

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