中学受験情報局『かしこい塾の使い方』 -> 主任相談員の中学受験ブログ -> 前田昌宏の中学受験が楽しくなる算数塾 -> 速さの練習問題 ->速さ その11 ~今回は本当に上級問題に挑戦~

速さ その11 ~今回は本当に上級問題に挑戦~

速さの練習問題2011年12月06日01時55分
椿!


お元気ですか。
冬の使者の2番手は椿です。
まだ蕾のものもあり、花の数は少ないのですが
濃緑色の葉に深みのあるピンク色の花びらは
やがて顔をのぞかせるおしべとあいまって、
色の少ない冬に鮮やかに目に写ることでしょうね。

今回は「速さの上級問題を解く」がテーマです。

本当に、真っ向から取り組んでみます。

これまで基本~中級レベルの問題で困っているお子さんが、
これから速さの問題に対してどんな取り組みができるかをみてきました。

では、上級レベルの問題で困っているお子さんのケースはどうでしょうか?

上級レベルの問題はどの部分が上級なのかをみてみましょう。

次の問題は大阪府の男子校のトップ、大阪星光学院中の問題(一部改題)です。

【問題】
A君とB君が10.8kmはなれたP,Q2地点を往復しました。2人はP地点を同時に出発し、A君は一定の速さでQ地点に向かい、Q地点に到着後30分休けいして、帰りは行きの3分の4の速さでP地点に向かいました。一方、B君は一定の速さでQ地点に向かい、A君よりも遅れてQ地点に到着し、15分休けいをして、帰りは行きの3分の4の速さでP地点に向かいましたが、A君よりも1時間30分遅れてP地点にもどりました。また、B君がQ地点を出発するとき、A君はB君の前方3.6kmのところにいました。A君がP地点に向かったときの速さは時速何kmですか。

「思考フレーム」にそって考えて見ましょう。

はじめは、条件の整理です。

PQ間…10.8km
P地点を同時に出発→1往復
A…速さ 行:帰=3:4 Qで休けい30分
B…速さ 行:帰=3:4 Qで休けい15分 Aより遅くQに着く Q出発→Aは3.6km先 90分遅れてP着

上級レベルで困っているお子さんもここまでは問題なくできることでしょう。

次は方針の決定です。

まずこの段階で「1つ目の差のつくポイント」があります。

それは、できるお子さんは「どんなことがわかっているか?」をチェックするんですが、
できないお子さんは、とりあえず「目に付いた数値を片っ端から使ってみる」という答案を作りがちなんです。

思考フレームの第2段階、「方針を決める」ということができるかできないかで差がつきます。

さて、整理した条件を見てみると、
速さの条件→AもBも、3:4
距離の条件→PQ間10.8km、Q出発→Aは3.6km
時間の条件→休けいアリ Aは30分、Bは15分、Bは90分遅れてP着
と、一通りそろっているように見えます。

さらにこの段階で「2つ目の差のつくポイント」があります。

できるお子さんはこれらの条件のうち、どの条件に着目すればよいかがわかっているんです。

お子さんに、質問してみてください。

「どの条件に着目するの?」

解法はひとつではありませんから「絶対的な正解」は無いのですが、
「Bは90分遅れてP着」という「時間の差」であることに着目するのがよさそうです。

そして、時間の差に着目したことで、この問題を解く「方針」が決まります。

そうですね、「時間条件のときはダイヤグラム」です。

「時間の差」以外に、この問題には「休けい」という
「線分図で表しにくい条件」もありますから、
このことからも「ダイヤグラムがよさそうだ」と気づけるんです。

速さの上級問題の難しさのひとつの理由は、

「太郎君と花子さんの速さの比は5:4です。同時に甲を出発して乙に向かうと、太郎君のほうが3分先に着きました。太郎君は洪から乙まで何分かかりましたか。」

という「速さと比」の基本問題ならば、
「時間の比が④:⑤だから、その差の①=3分だ!」のように、すぐにわかることが、
条件が増えた(数値だけでも2個から6個!)ことで

「どの条件に着目すればよいか」がわからなくなる

という点なんです。

さあ、それでは方針も決まったので次は「図や表」です。

もちろん、ダイヤグラムを書くんですね。

ところが、ダイヤグラムを書こうにもB君がQについたとき、A君はまだ休けいしているのか、
それともどこかですれ違うのか、問題文に無いからわからない…と手が止まるお子さんもいるでしょう。
(グラフの※のところです。)

ここは問題の練習量がものをいうところですが、
「1回で正しいダイヤグラムがかけるとは限らない。ダメだったら、あとで修正しよう!」と割り切って書き進める『決断力』も必要です。
(後で検算をすればわかりますが、この問題では休けいは重なりません。
それでも計算には影響が無いのでひとつの例として
正確ではないダイヤグラムで解きすすめてみます。)

これが「3つ目の差のつくポイント」です。

ダイヤグラムは書けるんだけれど、そこからどうしていいかわからない…というお子さんも結構います。

「4つ目の差のつくポイント」ですね。

「ダイヤグラムを書く=時間条件を使う」という方針がぶれないことです。

言い換えれば「横軸上に何が書き込めるか」をいつも考えているかどうかということです。

すると次のようになります。


「速さの比の逆比が時間の比」というおなじみの解法を書き加えると…。

「最後の差のつくポイント」がここにあります。

③や(□囲みの代わりです…)が出てきたら、

「消去算のパターンだ!」と、

このレベルの問題が解けるお子さんは結び付けられるのです。

あとは「式」の出番です。

④+30分+③+90分=+15分+…ア
②+90分=…イ

とわかり(②は、3.6kmのところの「チョウチョウ型相似」から見つけてくださいね!)、
アからは ①+15分= となるので、3倍してイと比べれば
①=45分、=60分 が求められます。

最後に、
10.8km ÷ 9/4時間=4.8km/時 から、時速4.8km が答えとわかります。

速さの上級問題の難しさのもうひとつの理由は、
「ダイヤグラムの書き方」、「利用の仕方」、「消去算のような計算技法」など、一つ一つは基本技術ですが、
それが問題を解く仮定で見つかるたびに
「○○(条件)とくれば☆☆(方針)だ」を引き出してくる力が必要な点です。

このように見てくると、
速さの上級問題を解くのに必要な練習がわかってきますね。

1.条件を整理して何に着目するかを見やすくすること
2.基本問題がいつでも解けるように練習をすること
3.上級問題もある程度の量にあたり、問題の構造に慣れること

ここで「3」において大切なことは、
「初めっから上手く解こうなんてと思わない」ことです。

まずはお子さんなりに解かせてみましょう。

でもお子さんが正解にたどり着いたときは、
できるだけその場で
「どうやって考えたの?」
「すごいと思うけど、なぜそんなことに気づけたの?」
と、お子さんの思考を言葉にし、
お子さんがその思考をいつでも再現できるように応援してあげて下さい。

「勘の鋭いお子さん(=ポイントをつかむのが早いお子さんのこと!)」には
不要なことかもしれませんが、
多くのお子さんにとって「なんとなく解ける」を積み重ねて、自分のものにするにはかなりの時間が必要です。
時間の限られた受験生には応援が心強い味方になるんです。


速さの練習問題2011年12月06日01時55分
主任相談員の前田昌宏
中学受験情報局『かしこい塾の使い方』の主任相談員である前田昌宏が算数の面白い問題や入試問題を実例に図表やテクニックを交えて解説します。
Copyright (c) 2008- 中学受験情報局『かしこい塾の使い方』 All rights reserved.