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速さ その12 ~速さの難問2~

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速さの練習問題 2011年12月13日02時10分
柘榴 その後!


お元気ですか。
冬の使者の3番手はザクロです。

前回の椿は海柘榴といわれたこともあるそうですが、
これは正真正銘のザクロです。

秋に撮影したときから数週間を経て、
ようやく中の鮮紅色の実が見えるようになりました。

この実から絞った果汁と砂糖からできるのがグレナデンシロップで、
ミリオンダラーやピンクレディといったカクテルの材料にもなります。

ちなみに、ミリオンダラーは日本生まれのカクテルですし、
ピンクレディは同名のアイドルデュオの名前の由来となっているそうです。

街中ではあまり目にしませんが、何かと日本にかかわりのあるザクロです。

さて、今回も「速さの難問を解く」がテーマです。

しだいに入試も近づいていますので、
今回も上級レベルの問題で困っているお子さんが、
これから速さの問題に対してどんな取り組みができるかを考えてきます。

次の問題は御三家のひとつ、開成中の問題(一部改題)です。

【問題】
A君とB君がP,Q2地点を一定の速さで何回か往復しました。A君はP地点を、B君はQ地点同時に出発し、出発してからA君とB君が2回すれちがった後、P、Qの真ん中ではじめてB君がA君を追いこしました。A君の速さとB君の速さはの比を求めなさい。

やはり「思考フレーム」を利用して考えて見ましょう。

はじめは、条件の整理です。

A君…P地点から
B君…Q地点から
同時出発
2回すれちがった後、P、Qの真ん中ではじめてB君がA君を追いこす

次は方針の決定です。

まずこの段階で「1つ目の差のつくポイント」があります。

「この問題は『N回目の出会い』問題だから、僕は線分図で解くぞ。」のように、
「○○のときは、☆☆という解き方」といった「解法のカード」を何枚持っているかが、
この問題のような上級レベルの問題を解くのに欠かすことができません。

もちろん、「僕は、『N回目の出会い』問題はダイヤグラムのほうが使いやすいんだ。」でもOKです。

この問題には、「2回の出会いの後、はじめてB君がA君を追いこす」という条件がありますね。

この条件が「範囲のヒントだ!」と気づけば、線分図でもダイヤグラムでも上手く利用できます。

逆に言うと、この問題で苦労するお子さんは
「2回の出会いの後、はじめてB君がA君を追いこす」がヒントだと気づいていても、
「範囲」だと意識できないのでスムーズに解くことができないんです。

「範囲のヒント」だと気づけないので、この条件に当てはまるように、試行錯誤しながら線分図やダイヤグラムを書くことになります。

もちろん、「試行錯誤する」ということ自体は受験算数にとって大変重要な要素ですから、
「試行錯誤する」ことはこれからも続けてほしいと思います。

ただ、「○○のときは、☆☆という解き方」という「解法カード」と同様に、
「問題文を読み替えるための知識」は非常に大切なものです。

この「問題文を読み替えるための知識」が「解法カード」と並んで、
問題を正確に、あるいは早く解くための重要なもうひとつの要素なんです。

そこで、この問題では「図・表」の前に、「範囲の計算」を行ないます。

「2回の出会いの後、はじめてB君がA君を追いこす」という条件は、「時刻の範囲」を示しています。

つまり、「2回目に出会う時刻<初めて追いこす時刻<3回目に出会う時刻」です。

ここで「往復の旅人算」の知識として、
「初めて出会ったあと次に出会うまでに2人の進む距離の和は1往復分」がなければいけません。

上級問題はこのように、「複数の解法カードの組み合わせ」によって解いていくんですね。

話を元に戻しましょう。

PQ間を①とおくと、

2回目に出会う時刻=③÷(Bの速さ+Aの速さ)
初めて追いこす時刻=①÷(Bの速さ-Aの速さ)
3回目に出会う時刻=⑤÷(Bの速さ+Aの速さ) なので、

③÷(Bの速さ+Aの速さ)<①÷(Bの速さ-Aの速さ)からは、
(Bの速さ+Aの速さ):(Bの速さ-Aの速さ)=1:3
つまり、Aの速さ:Bの速さ=1:2


①÷(Bの速さ-Aの速さ)<⑤÷(Bの速さ+Aの速さ)からは、
(Bの速さ-Aの速さ):(Bの速さ+Aの速さ)=5:1
つまり、Aの速さ:Bの速さ=2:3


が、それぞれわかります。

この2つのグラフの間で、「P、Qの真ん中でBがAを追いこす」グラフは、


のようになりますから、

距離の比 A:B=3:5 がわかり、速さの比も A:B=3:5 とわかります。

今回のように何度も往復しない場合は、試行錯誤でも十分ですが、
難度があがるほど「問題文を読み替えるための知識」は有効です。

このように見てくると、
前回のブログでまとめた、速さの上級問題を解くのに必要な練習が

1.条件を整理して何に着目するかを見やすくすること
2.基本問題がいつでも解けるように練習をすること→「解法カード」の習得
3.上級問題もある程度の量にあたり、問題の構造に慣れること→「問題文を読み替えるための知識」の習得

につながっていることもわかってきますね。


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速さの練習問題 2011年12月13日02時10分
主任相談員の前田昌宏
中学受験情報局『かしこい塾の使い方』の主任相談員である前田昌宏が算数の面白い問題や入試問題を実例に図表やテクニックを交えて解説します。
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