中学受験情報局『かしこい塾の使い方』 -> 主任相談員の中学受験ブログ -> 前田昌宏の中学受験が楽しくなる算数塾 -> 中学入試の算数問題 ->2013年 中学入試 平成26年度に向けて⑪

2013年 中学入試 平成26年度に向けて⑪

中学入試の算数問題2013年04月20日18時00分
~今回から「大問形式」の問題がテーマです。まずは「速さ」から!~

m_20130420_01.jpg

海城中学校
JR 山手線 新大久保駅 徒歩5分・東京メトロ 副都心線 西早稲田駅 徒歩8分




今回は2013年度の灘中入試 算数2日目の1です。


灘中の算数2日目は、大問5題というのが例年の構成です。


2013年4月現在、中学入試において算数の入試が2日間にわたって実施されている学校として、
灘中、甲陽学院中、関西学院中があります。


灘中は1日目が一問一答形式のみ、2日目が大問形式のみで、
1日目が「瞬発力」、2日目が「思考力」が試される試験です。


甲陽学院中は2日間とも、1が小問集合、それ以外は大問という形式です。
2日連続して、安定した「output力」が試されます。


関西学院中も2日間とも、1、2は小問集合、3以降は問題文がやや長い一問一答という 形式で、
基礎力から応用力までまんべんなく出題されています。


これらの2日間タイプの学校を除くと関東・関西の多くの学校が、
試験の前半は小問集合または一問一答、後半は大問という形式の1日入試です。


といっても、当然、開成中は60分で4題、筑駒中は40分で4題、洛南中は70分で7~8題、
女子学院中は40分で5~8題のように、
問題量、試験時間、問題の難度は各中学ばらばらですが…。


話を元にもどして、共通していることは
程度の差はあれ「大問には2つのタイプがある」ということです。


ひとつは、(1)が解けないと(2)も解けないという「芋づる式」の大問です。


このタイプの大問はさらに2つに分かれ、
(1)が比較的易しく、(2)がかなり難しい というタイプと、
逆に(1)がかなり難しく、これを解けば(2)はサービス問題というタイプです。


前者は(1)を正解することが合格の必須条件です。
後者は算数を得点源としない受験生はパスしてもかまわない問題です。


2つめはいわゆる「誘導タイプ」です。
(1)、(2)で調べ出すなどの作業をさせ、
その過程で問題の本質をつかめると(3)も正解できるというタイプです。


今回の2013年度の灘中入試 算数2日目の1は、どのタイプだったのでしょうか。
早速みていきましょう。




1 A君とB君はP地点を同時に出発し、P地点から42km離れたQ地点に向かいました。A君は一定の速さで進みました。また、B君はP地点で28km離れたM地点まで一定の速さで進んだのち20分休み、M地点から先はそれまでの1/3倍の速さで進みました。B君がM地点を出発して1時間21分後、A君はB君を追い抜き、その後A君はB君より20分早くQ地点に着きました。
(1)B君がM地点に着いたとき、A君はB君の後方何kmの地点にいましたか。

(2)A君はP地点を出発して何時間何分後にQ地点に着きましたか。




「速さの文章題」です。


これまで通り、どのような条件があるかをチェックします。


・PQ間は42km → 距離条件
・A君は一定の速さ
・B君はPから28kmはなれたM地点まで一定の速さ → 距離条件
・B君はM地点で20分休む → 時間条件
・B君はM地点からは速さをそれまでの1/3にする
・B君がM地点を出発して1時間21分後にA君に抜かれる → 時間条件
・A君はB君より20分早くQ地点に着く → 時間条件


距離条件が2つ、時間条件が3つあります。


時間条件の方が1つ多いのでダイヤグラム解法を選択してみましょう。
(条件数に大差がないので線分図解法でもOKです!)

m_20130420_02.jpg

さて、(1)は「B君がM地点に着いたとき、A君はB君の後方何kmの地点にいましたか。」ですから、それもグラフに書き入れておきましょう。

m_20130420_03.jpg



ダイヤグラム解法のポイントは

1. 相似形
2.「山」「谷」で、速さの比と時間の比の関係を利用する
3. 平行四辺形、二等辺三角形の利用
4.「琵琶湖」形は、旅人算
5.「もし休まなければ」

の5つです。


上のグラフを見ると、砂時計型の相似形がすぐに目につきますが
条件が不足していて、何もできません。


さらに2~4も該当しないようです。


しかし、「5」が使えますね!
B君が「もし、M地点で休まなければ」どんなグラフになるのでしょうか。

m_20130420_04.jpg

おっと、「谷」が見つかりました。

m_20130420_05.jpg


しかし、谷アも谷イもA君の速さがわからないため、
谷アでしたら、 速さの比 A君:B君=?:3 から、進めることができません。


速さが苦手なお子さんはここで立ち止まってしまい、
「固まって」しまうか、「カンに頼る」ことになりがちです。


「ここまでダイヤグラム解法のポイントに従いながら、
時間条件を中心に解き進めるという方針ですすめてきたが、それだけではムリなんだ」
ということを認めることができるかどうかが、
確実に問題を攻略できるかどうかのカギなんです。


言い換えると、
「まだ使えていない条件が何かを確認して、その使い道を考える」
ということです。


塾の先生が「他にこのグラフからわかることは何かありませんか?」と言われているのは、
残された条件の確認とその利用方法を考えなさいということなんです。


上手く使えない時間条件以外では、
・B君の速さの比 PM間:MQ間=3:1
・PM=28km、MQ=14km
が残っていますね?


このように書き出してみると、もうひとつ時間の比が求められることに気づけます。


PM   MQ
距離    28km : 14km
速さ       3  : 1 
時間の比    2  : 3

m_20130420_06.jpg

すると、別の相似形が浮かび上がってきます。

m_20130420_07.jpg

グラフから ⑤=42km なので、②=16.8km が求められますので
(1)の答えは 28km-16.8km=11.2km とわかります。


基本の方針を守って進んできたのに行き詰まってしまったときは、
「あと一山を越せば正解が見える」ところまできていることが往々にしてあります。


「ここが我慢のしどころ!」と意識し、
残された条件を冷静に見つめる力をつけることで、
この山を越えることができるんです。


「難問演習はこの力を養うためなんだ。」という思いで取り組めるといいですね。

m_20130420_08.jpg


さて、(1)で求めたことをグラフに書き込むと上のようになりますので、
「A君が16.8km進む間にB君は28km進む」ことがわかります。


つまり、A君の速さ:B君のはじめの速さ=3:5 が求められるようになっているわけです。


「A君の速さ:B君のはじめの速さ:B君のあとの速さ=9:15:5」


これを引き出させるために(1)があったのですから、
この大問1は「芋づる式」問題ですね。


この段階で距離、速さ、時間のかなりの条件がわかっていますから、
このあとはどうやっても正解できそうです。

m_20130420_09.jpg

例えば、「谷」(赤斜線の三角形)に着目すると次のようになります。

m_20130420_10.jpg


9=81分 なので、5=45分 です。


すると、A君は11.2kmを 20分+81分-45分=56分 で進むことがわかりますので、
56分×42/11.2=210分 で42kmを進みます。


ですから(2)の答えは、210分後=3時間30分後です。


このように(1)と比べると(2)は比較的易しい問題です。


このタイプの大問は算数が得意な人向きですから、
算数を得点源にするお子さんはぜひ正解したいですし、
そうでないお子さんは2以降の問題に時間を投資する方が結果的に得点が伸びると思います。


基本の方針を守って進んできたのに行き詰まってしまったときには、
「あと一山を越せば正解が見える」はずだと、
冷静に残された条件を冷静に見つめる力をつけて、
算数を得点源にできるお子さんなれるといいなと思います。
 
中学入試の算数問題2013年04月20日18時00分
主任相談員の前田昌宏
中学受験情報局『かしこい塾の使い方』の主任相談員である前田昌宏が算数の面白い問題や入試問題を実例に図表やテクニックを交えて解説します。
Copyright (c) 2008- 中学受験情報局『かしこい塾の使い方』 All rights reserved.