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小5の学習ポイント6 ニュートン算

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文章題の練習問題 2015年12月19日18時00分

「第265回 小5の学習ポイント ニュートン算」


今回は、小5で学ぶ、ニュートン算について、
サピックス第36回の「デイリーサポート(過年度版)」を題材にして見ていきます。


「第36回 ニュートン算」の学習ポイント今回の学習では、
以下の3点について学びます。

(1)ニュートン算の導入問題
(2)ニュートン算の基本問題
(3)ニュートン算の応用問題 


今回学ぶニュートン算は、苦手の問題のひとつとしてよく上げられます。


その理由は、3つあります。

1つ目は、
注水と排水の「差」=水の変化量という関係
を理解できない場合です。

2つ目は、
「窓口の個数の差=変化量」
「食べた草の総量の差=生えた草の総量の差」
のような
「違いどうしを結びつける」ことができない場合です。

3つ目は、
ニュートン算の最後の小問に多い、
仕事算やつるかめ算とセットになった部分が解けない場合です。




1つ目が原因となっている場合は、
「なぜ回転寿司のレーンにはお客さんが食べているのに、お寿司がなくならないのか」
のような、
日常レベルの出来事を利用して、
納得感が得られるように関わってみて下さい。


2つ目は、
「ニュートン算は2つの解法パターン」を絵や線分図を用いながら、
練習を通して覚えて克服します。


3つ目は、ニュートン算自体に課題があるわけではありません。


何がわかっていて、何がわからないかの
整理が十分ではないために解けなくなっていますので、
線分図や面積図、グラフなどに問題条件を表してから
解くようにしてみましょう。




中学入試で出題されるニュートン算は標準レベルのものが多いので、
ある程度はパターン暗記で対応できますが、
中には「E問題-3」のように
パターン暗記だけで解くことが難しい問題もありますので、
できれば
「○○になっているから◆◆なんだ」
といった理由まで落とし込むことができればベストです。




「第36回 デイリーサポート ニュートン算」…重要なポイントを含む問題(抜粋)


【A問題-1】
ある水そうに水が300L入っています。今、水道のじゃ口から毎分35Lの水を入れながら、1台のポンプで毎分50Lの水をくみ出すと□分後に水そうは空になります。




【基本の考え方】
前述の「ニュートン算が苦手な理由1」にあてはまるお子様は、
この問題から解き直しましょう。


「注水しながら排水するとどうなるか」がわかりにくい場合は、
「はじめ300L→注水して335L→排水して285L→1分間で15L減った」
のようにして、
問題に取り組んでみて下さい。

20151218152305.jpg

(解き方)
1分間に15L減るので、300L÷15L=20分後




【B問題-1】
ある水そうに水が1600L入っています。今、水道のじゃ口から毎分きまった量の水を入れながら、同時に1台のポンプで毎分きまった量の水をくみ出すと、40分後に水そうは空になります。この場合ポンプを2台にしてくみ出すと、16分後に空になります。
(1)1台のポンプでは毎分何Lの水をくみ出せますか。
(2)水道のじゃ口からは毎分何Lの水を注いでいますか。
(3)ポンプを3台にすると何分後に空になりますか。




【基本の考え方】
前問同様に「問題条件を絵」に表してみます。

20151218152326.jpg

「A問題」と同じように表せましたから、
「1分間に何L減るか」
に着目してみましょう。


1600L÷40分=40L … 図1で1分間に減る水の量 
1600L÷16分=100L … 図2で1分間に減る水の量 


図1と図2の「違い」は「図2の方が排水するポンプが1台多い」ですから、
100L-40L=60L が、
ポンプ1台が1分間にくみ出す水の量とわかります。


20151218152418.jpg(1)でわかったことを右の図のように表すと、
60L-40L=20L とわかります。

もし図に表しても(2)を正解できない場合は、
「A問題」に戻ってみましょう。


(3)も図に表します。

20151218152448.jpg

図より1分間に160L減ることがわかりますから、
1600L÷160L/分=10分後 という答えが求められます。

20151218152548.jpg




【C問題-1】
ある駅で改札をはじめたとき132人の行列があり、毎分10人の割合で増えるものとします。改札口が1つのときは22分で行列がなくなるものとすると、改札口を2つにすると行列は何分でなくなりますか。




【基本の考え方】
ここでも、問題条件を絵に表してみます。

20151218152525.jpg

もし、絵に表せないようでしたら、「B問題」に戻りましょう。


図1より、1分間に減る人数が 
132人÷22分=6人/分 とわかりますから、☆=16です。


20151218152614.jpgすると、図2は右図のようになりますから、
1分間に 16人/分×2-10人/分=22人/分 ずつ減る
とわかりますので、
132人÷22人/分=6分 でなくなります。








【C問題-4】
ある劇場で入場券の発売の何分か前から行列ができはじめて、毎分8人ずつ行列の人数が増していきます。今、入場券発売口を1つにすると発売をはじめてから40分で行列がなくなるが、入場券発売口を2つにすると15分で行列がなくなります。行列 は発売の何分前からできはじめましたか。ただし、発売に使う時間はいつも同じと考えます。




やはり、問題条件を絵に表してみます。

20151218152731.jpg

この絵を描くと、これまでの問題と違って
「1分間に何人減る(単位量)かを求めることができない」
ことがわかります。


この単位量を求められない問題がニュートン算の標準レベルです。


今回の学習目標は、このレベルの問題が解けるようになることですから、
非常に重要な問題といえます。



【最小公倍数を利用する解き方】
図から「1分間に何人減るか」を求めようとすると、
図1は「○人÷40分」、図2は「○人÷15分」ですから、
○が40と15の最小公倍数であれば「割り切れる」ので
計算しやすくなります。


そこで「仮に、○=120とする」と、
図1は120÷40分=③/分、図2は120÷15分=⑧/分となり、
「B問題」のように「違い」に着目すると、
差⑤=発売口1つ分 がわかります。


20151218152828.jpgこのことを図1に書き込むと右図のようになりますから、
②=8人 → ①=4人 が求められます。







すると図1は下図のようになります。

20151218152859.jpg

12人/分×40分=480人 がはじめにできていた行列となりますから、
480人÷8人/分=60分前 と答えがわかります。

20151218153013.jpg




【等しい関係の量に着目する解き方】
ニュートン算の標準レベル問題では、
「満水→空」という設定が多いのですが、この場合は、
「はじめに入っていた水の量+注水した水の総量=排水した水の総量」
という関係が成り立ちます。


このことに着目するときは
「線分図を用いた解き方」
がピッタリです。


20151218153034.jpg

満水→空のニュートン算を「線分図で解く」ときのポイントは、
1分間の排水量=①と仮定することです。


するとこの問題は下の図のように表せます。

20151218153152.jpg

図の「違いに着目」すると、
㊵-㉚=200人とわかりますから、
①=20人と求められます。


これを線分図にあてはめると、
初めの行列=20人×2×15分間-120人=480人 とわかりますので、
480人÷8人/分=60分前 となります。


20151218153221.jpg




今回の学習で「問題C-4」~「問題D」が解けるようになると、
中学入試でよく出題される問題も解くことができます。


そのために、
「問題C-4」でご紹介しました2つの方法のいずれか一方を先ずは習得し、
できれば両方を使いこなせるようになれるとよいでしょう。





最後に2015年の中学入試問題より、ニュートン算2題をご紹介します。




2015年 浦和明の星女子中 より

【大問1-5】ある劇場で開場前に560人の行列ができています。開場後も一定の割合で行列に並ぶ人がいます。入口が2つだと35分間で行列はなくなり、3つだと20分間でなくなります。入口を4つにすると、何分間でなくなりますか。




今回のB~C問題が解ければ、十分に正解が可能な問題です。


(解き方)
問題を図にあらわします。
(ニュートン算に慣れれば下図のように書いてもOKですね)

20151218153254.jpg

左上図より560人÷35分間=16人/分、
中央図より560人÷20分間=28人/分 とわかりますから、
「違い」に着目すると、入口1つ分=12人/分です。


20151218153327.jpg従って、右図より、□=24-16=8 もわかります。







これを右上図にあてはめると、
560人÷(12人/分×4-8人/分)=14分間 を求めることができます。






今回学ぶ学習を忠実に守れば、5年生でも正解できますね。


しかし、このようなパターン問題だけが出題されるわけではありません。




2015年 明治大学付属明治中 より

【大問5】ある動物園のチケット売り場では、販売開始の10時にはすでに行列ができていて、その後も1分あたり12人の割合で行列に加わっていきます。チケットは券売機と係員がいる窓口のいずれかで購入することができます。券売機1台と係員がいる窓口1ヶ所で販売を開始したところ、7分後には行列が10時の時点より28人増えました。そこで、券売機4台と係員がいる窓口を2ヶ所にして販売したところ、10時17分には行列が10時の時点の半分になり、10時25分には行列がなくなりました。このとき、次の各問いに答えなさい。ただし、券売機と係員がいる窓口ではそれぞれ一定の割合でチケットを阪売しています。
(1)券売機1台と係員がいる窓口1ヶ所では、合計で1分あたり何人がチケットを買うことができますか。
(2)券売機4台と係員がいる窓口2ヶ所では、合計で1分あたり何人がチケットを買うことができますか。
(3)券売機1台では、1分あたり何人がチケットを買うことができますか。





条件が増えただけでなく、
「行列が増えてから減る」という部分も複雑そうです。


何よりも「文字数が多い」問題は「問題把握が難しい」ですから、
「これまで通り、図に表し」て、
題意をとらえやすくしましょう。

20151218153434.jpg


(解き方)
(1) 問題文に「券売機1台と係員がいる窓口1ヶ所」とありますから、
まずは図1と図2を見比べてみます。


7分間で28人増えていますから、
1分間に増える人数が28人÷7分間=4人/分 とわかります。


増えていますから、
「注水」のほうが「排水」よりも多いことになりますので、
12人/分-4人/分=8人/分
が「券売機1台と係員がいる窓口1ヶ所」にあたります。


(2)  問題文に「券売機4台と係員がいる窓口2ヶ所」とありますから、
図3~5に着目します。


図3と図4を見比べると、
10分間で28人と10時の時点の半分が減り、
図4と図5を見比べると、
8分間で10時の半分が減っていることがわかります。


「違い」に着目すると、
2分間で28人が減ったことになりますので、
28人÷2分間=14人/分 
14人/分+12人/分=26人/分 が
「券売機4台と係員がいる窓口2ヶ所」にあたるとわかります。


(1)(2)で、
「券売機1台と係員がいる窓口1ヶ所=8人/分」
「券売機4台と係員がいる窓口2ヶ所=26人/分」
がわかりましたから、
ここから先は「消去算」です。


ここで手が止まるようでしたら、「消去算」自体の復習を取り入れましょう。

20151218153516.jpg

10人÷2台=5人





明治大学附属明治中の問題は、
パターンを「覚える」だけでは解きにくい問題ですが、
「問題を図にあらわす→見比べる(違いを見つける)」
という
「流れを理解」していれば、正解できるでしょう。


2014年10月の本ブログでご紹介しました、
大阪星光学院中の問題や開成中の問題は、
今回の問題よりも少し難しいかも知れませんが、
「図に表す&流れを理解する」ことができれば
きっと正解できると思います。


今回の学習を通して、
パターンレベルの問題に必要な「解法」、
より高度な問題に必要な「問題を解く流れ」
の両方を習得できるといいですね。


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文章題の練習問題 2015年12月19日18時00分
主任相談員の前田昌宏
中学受験情報局『かしこい塾の使い方』の主任相談員である前田昌宏が算数の面白い問題や入試問題を実例に図表やテクニックを交えて解説します。
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