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言い切ること

中学受験2014年05月29日22時50分
「絶対合格できる。大丈夫。」

われわれ講師は、時には嘘になる可能性があることでも、言い切らなければならないことがあります。たとえば入試前日。習ったことをすべて習得し、どんな問題が出ても大丈夫という状態で臨むことができれば理想です。

でも、誰もがそうではありません。というより、入試前日でもできないことがある子もいます。実力に対して大幅に易しいレベルの学校を第一志望校にする子は稀です。第一志望校は「なんとか合格できそう」という偏差値での勝負になることも多いです。

入試前日でも、いや入試前日だからこそ不安でいっぱいなのです。何回も習ったけど、やはり今でも苦手と感じている単元や分野はある。どうしよう。。。そういう気持ちです。ではそういう子に対して、われわれ講師は何と声をかけるか。

「絶対合格できる。大丈夫。」

入試に「絶対」なんて言葉はほんとうはありえませんが、そう言います。「やるだけやったんだから、僕は(私は)大丈夫」と自信をもって入試に臨んでもらうためです。



遠い昔。

私がまだ学生講師だった頃。担当の生徒が、憧れの中学校を目指してがんばっていました。ひたすらその学校を目指して、塾の授業もまじめに受け、熱心に質問にも来ました。なんとか合格ラインに近い偏差値まで成績が上がってきましたが、まだギリギリ。不安は尽きません。

入試当日。その中学校の入試に私は同行し、担当の志望校別コースの生徒達を集め、直前の激励を行っていました。いよいよ会場に入るというときに、その子は私に駆け寄ってきて「先生、私、大丈夫だよね?」と言ったのです。

「絶対合格できる。大丈夫」

私はそう伝えました。そうなってほしいという強い願いを込めて。

合格発表の日。

その学校は、みんなが集まっている前で、合格者の受験番号が書かれた大きな紙が張り出されるのです。その年、私が担当する志望校別コースの「成績」は上々でした。在籍する子どもの80%以上が合格したのです。
歓声とため息と泣き声が飛び交う中、手に持った生徒の一覧表と合格者の番号を急いで照らし合わせていきます。

・・・その子の番号は、残念ながらありませんでした。瞬時に何と言葉をかけようかと考え、焦る気持ちで全員の確認を済ませて駆け出そうとしたとき、後ろから大きな声で呼び止められました。

「先生!」

私が振り返ると、その子が泣きながら立っていました。私が口を開く前に

「大丈夫って言ったじゃない!!」

それだけ言い残し、その子はすたすたと歩き去りました。
その後姿は今でも目に焼き付いています。


「今の私なら、合格させることができたかもしれない」
今でもふと、そんなことを考えます。


結局その子は第2志望校に合格し、そこへ通うことになりました。


3年後、その子が通う中学校の説明会に参加する機会がありました。よく晴れた春の日。
校舎へ向かって歩いているとき、後ろから大きな声で呼び止められました。

「先生!」

振り返ると、その子が笑顔で立っていました。顔の横で小さく手を振りながら。

刺のように心に突き刺さっていた何かが、じわっと溶けていったのを覚えています。


私たち講師の使命は、生徒の成績を上げること。
私たち講師の使命は、生徒を志望校に合格させること。

そのために、全力で成績を上げる方法を考え、試し、検証し、研鑽する。
それを繰り返す。1回の授業の中で何度も繰り返し、生徒の受験の日まで何度も何度も繰り返す。

生徒のために。そして自分のために。

あの頃の私は、あまりに若く、あまりに無知で、あまりに未熟だった。


久しぶりにそんなことを考えた春の夜です。
中学受験2014年05月29日22時50分
主任相談員の辻義夫
中学受験情報局『かしこい塾の使い方』の主任相談員である辻義夫が家庭学習で悩んでいる方にすぐに実践できる効果的な学習方法をお教えします。
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