中学受験情報局『かしこい塾の使い方』

今さらながら考えてみたい「大学入試改革ってどうなったの?中学入試は変わるの?」

このエントリーをはてなブックマークに追加
公開: 最終更新日:2021年07月21日

2020年から大学入試が変わる!?

お子さんに中学受験をさせたいと考えているかに限らず、お子さんのいるご家庭で常にあがる話題があります。それは、2015年1月に発表され、毎日新聞・雑誌AERA・NHKテレビなどでも盛んに報道された、2020年度の大学入試から、現状のセンター試験がなくなり、「高等学校基礎学力テスト」・「大学入学希望者学力評価テスト」というテストに変わるというものがあります。

その大学入試の変化を見越して、従来の入学試験だけでなく、適性検査(PISA・思考力)型の入試を行う学校が増えており、2015年は53校だったのが、86校がこのタイプの入試を取り入れたことで話題になりました。

新しい入試制度では、これまでの「知識量偏重」の試験から、思考力、表現力、判断力などを重視したものになるとのことで、その端的な例として、英語の試験にはスピーキングテストが実施されるとのこと。

テストは「教科別から科目横断へ」のはずだった

新たな大学入試制度の中で行われる「高等学校基礎学力テスト」は、全国一斉に実施されるとの発表が当初ありました。しかし、全国共通の問題を使用して学校ごとに評価にばらつきが出るのを防ぐ、という案は実現可能性が低く(学校行事などで全国の高校のテスト日程をそろえるのが難しい)、同じレベルの別の問題を使う、ということになっていきそうです。

「大学入学希望者学力評価テスト」は現在のセンター試験にあたるものです。こちらは教科別ではなく、科目を横断したものになるはずでした。しかし、こちらも技術的な問題などで、当初の目論見とはちょっと違ったものになりそうです。

と、まだまだ不明な部分が多い大学入試改革ですが、文部科学省が進めようとする方向は見えています。「将来、社会で生きていくための力をつける」という方向です。

では、変化する大学入試に合わせ、中学入試はどのように変化していくのでしょうか。

入試改革を先取りしていた私立上位校

大学入試が知識偏重型の入試から思考力・表現力・判断力重視の入試に変わっていくことを受け、中学入試も変化していると言われています。記述式回答を求める問題が多くなり、複雑なデータをどのように読み取るかといった視点で作られた問題も多くなっています。

実は、記述式の回答や複雑なデータの読み取りといった入試の特徴は、これまでも一部の私立中学校の入試問題の傾向を説明するときに使われる説明と同じものです。麻布中学校などは、この典型のような出題をします。

つまり、一部の私立中学校では、これから変わると言われている中学入試の問題傾向を先取りしていたとも言えるのです。なぜそのような選抜方法を選ぶようになったかというと、いわゆる「詰め込み」で成績を維持するような学習習慣を身につけてきた子どもは、そのままでは中高で伸びないからです。

知識をたくさん持っていることも大切だが、思考力や判断力をつけることはさらに大切、ということに気づいた私立中学校は、「覚えているだけ」「知っているだけ」では太刀打ち出来ないタイプの問題を出題します。それに対応し、塾も塾生であるお子さんたちがそのような問題に対応できるように、テキストに最新の入試問題をどんどん掲載し、学校別の「志望校別特訓」を用意して対策にあたっています。

「勉強のしかた」を勉強しよう

1つ残念なことは、「大量演習型」と言われる進学塾のテキストに、最新の、子どもたちが初めて見るような入試問題が大量に掲載されるようになったため、それを今までどおりの「暗記型勉強」で乗り切ろうとする子がたくさんいたことです。悪いと言っているのではありません。勉強のしかたを今までと変えなければならないということを、誰も教えてあげなかったからです。

受験勉強では、当然「知識」もつけなければなりません。考えるベースとなる知識は、絶対に必要なものです。しかし「問題内容を整理し、データを読み取って筋道立てて考える」という作業は、これまで得た知識を使って、テスト会場その場でやることであり、「麻布中学校の2015年度の理科の、地層の問題の解き方を覚えている」ことが大切なのではないのです。

その意味では、私立中学校を目指して勉強することは、大学入試改革で文部科学省が目指している「思考力・判断力・表現力」を鍛えることの準備ともなりえます。もちろん大学受験が勉強の「最終ゴール」ではありませんが、文部科学省が大学入試改革で目指したような勉強のしかたは、今の大学受験にも役立つものです。

この「大学入試につながる学習のしかたで、中学受験の学習をする」ということに関して、主任相談員の西村則康先生に聞いたところ、注意すべき点として以下のことをあげてくださいました。

  1. 1.「思考力重視」とはいっても、知識や基本技能をつけなくていいということではない
  2. 2.「なぜそうなるのか」「これがわかれば、次に何がわかるのか」といったことを意識して勉強することで、中学以降、大学受験にも役立つ勉強の仕方が身につく
  3. 3.塾の宿題を「作業」として終わらせるだけの学習にならないように注意する
  4. 4.大学入試改革の詳細はわからない部分も多いが、いずれにしても「本質的な勉強」を身につけていれば将来(社会人になってからも)役立つ
  5. 5.大学入試改革がどうなるかにかかわらず「新しい学習のしかた」を模索している私立中学校も多く、学校名だけでなく内容や設置コース・特色などをしっかり見て志望校・受験校を決めるべき

みなさん、参考になったでしょうか。変化の時代、ぜひいろんな中学校の取り組みを調べて志望校を決めてくださいね。

この記事を書いた人
アバター画像 twitter instagram 西村先生に家庭教師に来てほしい方はこちら
Copyright (c) 2008-2021中学受験情報局『かしこい塾の使い方』 All rights reserved.