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高学年で算数が苦手になる理由

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公開: 最終更新日:2021年07月21日

4年生までは算数が得意だったのに、苦手になってしまいました・・・

4年生くらいまでは算数が得意だったのに、5年生から急に成績が下がり、すっかり算数が苦手科目になってしまった、というお子さんは多いものです。

もともと得意だった算数が、なぜ急にできなくなってしまうのでしょうか。

・・・実は、急にできなくなったわけではなく、ちゃんと理由があるのです。
算数だけではなく、他の科目についても同じようなことが言えるのですが、学年が上がって学習内容が高度になることで、「できなくなる」のではなく、「力がついていなかったことが明らかになる」というのが本当のところなのです。

塾によって多少の違いはありますが、受験算数のひととおりの勉強は、5年生まででほぼ終わってしまいます。
6年生で初めて習うことはあまりありません。
では6年生では何を中心にやるのかというと、5年生までに習ったことを使って、応用問題や複合問題を解けるよう練習するのです。

算数が苦手になる子は何が足りないのか

算数の学習で、まずつけておかなければならないのは、計算力です。
進学塾に通うお子さんの場合、計算力がまったくついていない、というお子さんはあまりいません。
ほとんどのお子さんは、最低限の計算力を身につけています。

そして、基本的な問題の「解き方」も身につけています。
和差算やつるかめ算のような文章題、そして様々な図形の問題など、どの問題にも「解き方・考え方」があり、それをよく覚えています。

では、算数が苦手になってしまうお子さんには、何が足りないのでしょうか?

次にあげるのは、ある進学塾の6年生秋の公開テスト(算数)の問題です。

「花子さんとお父さんは同時に家を出発し、公園まで往復しました。花子さんは行きも帰りも同じ一定の速さで歩き、お父さんは行きと帰りで速さを変えて歩きました。花子さんは公園を折り返してから2分30秒後にお父さんとすれ違い、お父さんは花子さんより6分遅れで公園を折り返しました。帰りはお父さんが速さを変えて進んだため、2人は同時に家に到着しました。花子さんとお父さんの行きの速さの比を求めなさい。」

速さの問題ですが、図などをまったく書かずに解くことができるお子さんは少ないと思います。
実はこの問題、花子さんが公園から2分30秒かかって進んだ距離を、お父さんがどれだけかかって進んだかということから考えるのですが(お父さんは花子さんより6分遅れで公園を折り返しましたから、6分?2分30秒=3分30秒です)、グラフなどを書いて初めてそれに「気付く」ことができるのです。

この問題では、

  • A.グラフを書くと解きやすい
  • B.同じ距離を進むとき、進む速さとかかる時間には逆比の関係がある

という2つの知識が必要ですが、どちらも「この問題だけ」の考え方ではありません。
速さの問題においてはよく使う考え方です。速さの問題を解くときの手法には他のものもあります。
しかしこの問題で「グラフ」を選んだのには、理由があるのです。

問題によっては2人が進んだ様子を線分図のように整理する場合もあるのですが、線分図に「2分30秒かかって」「6分遅れで」といった時間の条件を書き表すことが難しいのです。
だから縦軸に進んだ距離、横軸に時間をとったグラフが便利なのです。

こういった具合に「この問題はどのように整理すれば解けそうか」という知識・経験のあるなしで、6年生の算数の問題の出来は大きく左右されます。

「暗記型」から考える勉強に

問題が簡単な4年生のうちは、問題の「解き方」を暗記していればいい点が取れたのですが、5年生の後半になると、それでは対応できなくなるのです。
問題の「タイプ」を見抜き、問題によって「◯◯の理由で、この解法を使う」という思考を経て問題を整理する事が必要なのです。

「暗記型の勉強は通用しなくなる」というのはこういうことです。

お子さんがもう高学年で、どうやら「暗記型」の勉強を続けてきてしまっているようだと思ったら、お母さんの声かけで修正をしてあげましょう。

問題を解くお子さんに「その解き方を使うのはどうして?」という質問のするのです。
うまく説明できないこともあるかもしれませんが、学習の中に「考える」という要素が多くなるはずです。
宿題のすべての問題でこれをやったら時間も労力も大変ですが、1回につき数問、お子さんの説明してもらうようにしてみましょう。

6年生のお子さんでも、この習慣でずいぶん算数の理解がよくなるはずです。ぜひためしてみてください。

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