小5生の学習方法 秋編 サピックスの場合(前半)
「第254回 小5生の学習方法 秋編(前半) ~第2回志望校診断サピックスオープンに向けて~」
前回までの2回に渡り、
サピックスの「第1回 志望校診断サピックスオープン(小5)」を
振り返りました。
その振り返りによって、
Aタイプ(基礎力・問題処理能力重視)と
Bタイプ(思考力・記述力重視)の
2つのタイプの問題によって構成されるこのテストで
好成績を収めるためには、
学習方法を
「覚える」から「覚える+理解する」に切り替えることが
ポイントになることがわかりました。
今回は過去のテストを題材に、
デイリーサピックスなど通常授業教材の
利用方法について考えていきます。
はじめに、
2012年11月23日に実施されました
「第2回志望校診断サピックスオープン(小5)」の出題と
塾の教材の関係を見ておきます。
※教材欄の見方
○...教材にほぼ同じ問題がある
△...教材に近い問題または解き方が似かよった問題がある
×...教材に類似問題がない問題
2012年のテストでは、
Aタイプ18問(配点90点相当/150点)のうち、
教材にほぼ同じ問題があったものは
わずかに6問(30点)でした。
これに計算問題の3問を加算すると
45点が「覚える」で正解できる問題だったことが分かります。
実際の問題で見比べてみましょう。
2012年11月 志望校診断サピックスオープン 小5 算数より
大問2-(2) たて144cm、横168cmの長方形の紙を、余りを出さずに同じ大きさの正方形に切り分けます。できるだけ大きい正方形に切り分けると、正方形は全部で□枚できます。
デイリーサポート 第3回C-大問1 右図のような、たて60cm、横126cmの長方形の紙があります。この紙から無駄なく、同じ大きさの正方形を切り取りたいと思います。
(1) 切り取る正方形をできるだけ大きくするには、1辺の長さを何cmにすればよいですか。
(2) (1)のとき、何枚の正方形が切りとれますか。
このようにほとんど同じ問題ですから、
「覚える」学習で対応が可能です。
ただし、
学習した時期が2月ですから、
「忘れている」こともありえます。
習ったときはできていたのにテストではできない
ということがないように、
9月以前に学習した内容の復習も
「志望校診断サピックスオープン」対策に
組み込んでおくことが必要でしょう。
例えば、
テストの過去問演習は、
忘れてしまったことがないかをチェックできますから、
ひとつの有効な方法といえます。
では次に、
教材の問題に近い問題または解き方が似かよった問題について
見ていきます。
2012年11月 志望校診断サピックスオープン 小5 算数より大問3-(2) 右の図は半径4cmの円です。円周上の点A、B、C、D、E、F、G、Hは円周を8等分した点で、点Bと点D、点Fと点Hを直線で結びました。斜線部分の面積は□cm2です。ただし、円周率は3.14とします。
サマーサポート8回D問題 右図は、円の中にちょうどはいる正十二角形です。次の問いに答えなさい。(Oは円の中心です。)
(1) ア、イ、ウの角の大きさはそれぞれ何度ですか。
(2) この正十二角形が半径12cmの円を利用してかいたものであるとき、この正十二角形の面積を求めなさい。
問題図だけを見ると
「まったく別の問題」に見えますが、
どちらも「円問題」とよばれている問題です。
この2問の違いは「補助線」です。
サマーサポートでは
補助線の引かれた図が与えられていますが、
テストの問題図には
その補助線がありません。
自分で見つけて
書かけるようになっていなければいけません。
そのために必要な学習が、
「習う+理解する」です。「円問題の補助線は円の中心と結ぶ半径」
ということを習い、
「補助線を引くと、問題を解くのに必要なおうぎ形や二等辺三角形ができる」
ことを理解します。
サマーサポートの問題を解いたときに
「答えがあっているかどうかの確認」だけでなく、
ヒントとして与えられた補助線についても学習をすることが、
「志望校診断サピックスオープン」の得点に結びついていきます。
これらの教材の問題に近い問題または解き方が似かよった問題まで正解できれば、
テストの得点は70点になります。
次は残りのAタイプの問題がどのような問題であるかを見ておきましょう。
2012年11月 志望校診断サピックスオープン 小5 算数より
大問5 長さ120mで秒速30mの甲列車と、長さ180mで秒速20mの乙列車が向かい合って走っています。甲列車の先頭と乙列車の先頭が同時にトンネルに入り始め、甲列車の先頭と乙列車の先頭が出会ってから36秒後に、甲列車の最後尾がトンネルを出ました。
(1) 乙列車の先頭がトンネルに入り始めてから甲列車の先頭と出会うまでに何秒かかりますか。
(2) 乙列車の先頭がトンネルに入り始めてから最後尾がトンネルを出るまでに何秒かかりますか。
教材ではデイリーサポートなどの第25回で通過算を学びます。
教材には、
通過算の基本(踏切や人前などの「1点通過」、鉄橋やトンネルなどの「幅あり通過」)から、
列車同士のすれ違いや追い越し、
電車に並行して進んでいる人や自動車とのすれ違いや追い越し、
電車の速さが変化することによる追い越し時間の変化など、
基本的なパターンが
一通り載せられています。
しかし、上記のような問題はありません。
では、
どのような学習をすれば、
このようなテストの問題を正解できるようになるのでしょうか。
その答えは、
やはり、
「習う+理解する」です。
教材レベルの問題で、具体的な学習例をご紹介します。
例題 太郎君が真っ直ぐな線路に沿った道を東から西に向けて毎時4kmの速さで歩いていると、10分ごとに電車(の先頭)とすれ違い、11分ごとに電車(の先頭)に追いこされました。電車の速さは時速何kmですか。ただし、どの電車も同じ間隔、同じ速さで進んでいます。
6年生になれば「遅い方を止めて考える」「比を使う」というような解き方になるでしょう。
【遅い方を止める解法】
電車の方が早いので人を止めて考えると、
上のような図になり、
距離が等しい(赤矢印の長さ)ことから、
時間の比 10:11 より、
速さの比 ⑪:⑩ → 差①=8km/時
8×11-4=84(km/時)
と求められます。
一方、
5年生は通過算を習うときに
「比を使った解き方」は、まだ習いません。
【5年生の解き方】
上の図から、
電車と電車の間隔は、
電車が10分間に進む距離イよりも太郎君が10分間歩く距離アだけ長く、
電車が11分間に進む距離エよりも太郎君が11分間歩く距離ウだけ短いので、
エとイの差がアとウの和に等しいことがわかります。
4km/時×(10+11)/60時間=1.4km ... アとウの和
1.4km÷(11-10)/60時間=84km/時
計算の方法はちがいますが、
6年生も5年生も
「絵と線分図を書いて」
考えていますね。
ここが大切なポイントです。
「通過算は線分図を書いて、→の長さに着目すると解ける」
ということが理解できれば、
難しい通過算でも正解できます。
「電車の長さ÷電車の速さ=人の前を通過する時間」
のような基本公式を覚えたら、
それらを使う代表的なパターン問題で
「線分図の使い方を理解」する学習ができれば大丈夫です。
実際に
「通過算は線分図を書いて、→の長さに着目すると解ける」
ということを用いて、
志望校診断サピックスオープンの大問5を解いてみましょう。
【大問5の解法】
速さの線分図を書くときの鉄則「出来事の順に図を書く」に従います。
「通過算は線分図を書いて、→の長さに着目すると解ける」という方針から、
2つ目の図の「甲が36秒間に進んだ距離」が計算できることに気づけます。
30m/秒×36=1080m
すると、
1つ目の図の「乙が□秒間に進んだ距離」が、
1080m-120m=960m
とわかりますので、
9600m÷20m/秒=48秒後 より、
2つの電車の先頭は48秒後に出会った(□=48)を求めることができます。
(1)の答えが出れば、(2)は簡単です。
トンネルの長さが、(30m/秒+20m/秒)×48秒=2400m ですから、
(2400m+180m)÷20m/秒=129秒
※他の解き方もあります。
このように、
Aタイプにある「中級」「上級」の問題は
「覚える+理解する」という学習ができれば正解することが可能となり、
90点まで得点を伸ばすことができます。
「○○は□□のためにする(例:中心を結ぶとおうぎ形や二等辺三角形ができる、通過算は電車の1点に着目すると、電車全体の移動距離が見やすくなる)」のような理由、
「○○は☆☆のように整理すれば問題を解く糸口が見えてくる(例:線分図は同じ時間の→に距離や距離の比を書くと解ける)」のような方針を
この秋の学習で身につけていけるといいですね。
次回は、Bタイプの問題で得点できる学習方法を考えたいと思います。