第382回 2018年度中学入試の速さ 3
「第382回 2018年度中学入試の速さ 3」
2018年度の中学入試で出された「速さ」の問題をご紹介しています。
前回は「比の利用」と「条件整理力」を用いる海城中の問題をご紹介しました。
速さの問題の条件整理方法には、
主に「線分図」と「ダイヤグラム」がありますが、
海城中の2018年度の問題はそのいずれを選んでも解くことができるものでした。
そこで、今回は「知識」がポイントとなる問題をご紹介しようと思います。
出題校は、
東京都や神奈川県に先駆けて1月に入試が行われる千葉県の難関中、
渋谷教育学園幕張中です。
現時点の新6年生には難しいと思われますが、
6年生の学習で身につけておきたい内容が含まれていますので、
今後の目標という意味で見てもらえればと思います。
2018年度 渋谷幕張中 一次 入試問題 算数より
問題3 図1のように、大小2つの円を合わせた形をした平らなジョギングコースがあります。A君とB君はP地点から同時にスタートし、A君は図2のような向きで、B君は図3のような向きで、「8」の字をえがくようにこのコースをそれぞれ一定の速さで走り続けます。A君はB君より速く走ります。また、CさんはA君、B君と同時にP地点からスタートし、大きな円のコースだけを反時計回りに一定の速さで歩き続けます。スタートした後、3人がはじめて同時に出会ったのはQ地点で、そのときまでにA君とB君は4回出会いました。図4は、スタートしてからの時間と、A君、CさんとP地点との道のり(P地点から進んだ道のりとP地点までの残りの道のりのうちの小さい方)の関係の一部を表しています。
このとき、次の各問いに答えなさい。
(1) A君の走る速さは毎分何mですか。また、小さな円のコースの1周の道のりは何mですか。
(2) B君の走る速さとして考えられるもののうち、もっとも速い場合を考えます。
① このときのB君の速さは毎分何mですか。また、3人がはじめて同時に出会ったのはスタートしてから何分後ですか。
② Cさんの歩く速さは毎分何mですか。また、3人がはじめて同時に出会うときまでに、A君とCさんは何回出会いましたか。
【解答例】
(1)
具体的な数値はグラフにしかありませんので、
グラフの読み取りが(1)のポイントになります。
Aについては、図2から動き方、図4から道のりと時間の関係がわかります。
上の図より、Aの速さは 1500m÷7.5分=200m/分 です。
また、
から、大きな円のコースの長さが2000mとわかりますので、
1500m×2-2000m=1000m が小さな円のコースの長さです。
(2)-①
Bについては
「3人がはじめて同時に出会ったのはQ地点で、そのときまでにA君とB君は4回出会いました」
しか条件がありませんので、
この条件の意味を考えることが正解につながることになります。
ここで「知識」の有無が問われます。
「知識」があれば、
・コースが周回コース=池タイプの旅人算
・AとBは5回目にCとはじめてQで出会う
の2つから、次のことを導きだせます。
「3人がQで出会うまでに、Aの走った道のり+Bの走った道のり=3000m×5」
「池タイプの出会いは2人の距離の和=池1周」
という旅人算の知識と、
「CとQで出会うまでにAとBは4回出会った=Qでの出会いは5回目」
という読み取り力が問われています。
「A君はB君より速く走ります」から、
Aは4周+2000m、3周+2000m、2周+2000mの3つの場合が考えられます。
これに
「B君の走る速さとして考えられるもののうち、もっとも速い場合」
という条件を加えると、
A=2周+2000m、B=2周+1000m だとわかります。
Aは 3000m×2周+2000m=8000m、
Bは 3000m×2周+1000m=7000m 走るので、
Bの速さは 200m/分×7/8=175m/分 です。
念のため、5回目の出会いまでに3人がQで出会うことがないか、
AとBの出会いの位置を確かめます。
AとBの速さの比が8:7ですから
コースを15等分して調べると上の図のようになり、
問題の条件を満たしていることがわかります。
出会うまでの時間はAの動きを利用した場合、
8000m÷200m/分=40分後 のように計算できます。
②
Cはグラフから、1000m進むのに10~15分かかっています。
ですから、40分後までに3000m(=1.5周)進んでQでA、Bと出会ったことがわかります。
3000m÷40分=75m/分 ... Cの速さ
AとCが出会った回数は、
コースの長さや走る速さがわかっていますので、
順に調べればOKです。
例えば、ダイヤグラムを利用すると次のようになり、3回とわかります。
2018年度の渋谷幕張中の問題3は、
(1)が「グラフの読み取り」、
(2)-①では「池タイプの旅人算」の知識が、
(2)-②では「図形上の点の動き」の解き方が
それぞれ使えるかが問われる速さの問題でした。
前問が正解できなければ次の問題も正解できないため、
点数の差が大きくなる厳しい問題だと思います。
しかし、一つひとつの知識や解き方のテクニックは通常授業で学ぶレベルですから、
今後学ぶ速さの単元の学習では
宿題などを通してそれらの知識や解き方を十分に理解し、
このように高いレベルの問題でも正解できるような家庭学習ができるといいですね。