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味付けとその心得のお話

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浜作三代目主人 森川裕之

こんにちは。
浜作の森川です。


今日は味付けの心得のお話をさせていただければと思います。


昨今、カウンターのお客様も率直に「旨い、不味い、美味しい」をお口にされる方がめっきりと少なくなりました。
浜作は代々数多くのその道の達人=食通の方々に長くご贔屓を頂きました。


父が亡くなりました後、跡取りとして一家の長になりましたからには、店の者や他店の先輩にご指導を受けるわけにもいかず、祖父や父の味を覚えている母の数少ない助言の外は、ただ毎日お越し頂けるお客様のご批評だけが、味付けの指標となりました。

その間わかったことは、味付けをする上で一番大事なことは、固定観念を持たないということです。
浜作のお料理教室でも、生徒さんは必ず
「先生、レシピを教えて下さい、レシピを...」
と口を揃えておっしゃいます。

たしかに料理経験の少ない方には、レシピがないと何をどれだけ入れれば良いのかさっぱりわからず、途方に暮れてしまわれることでしょう。
しかしレシピはあくまで大まかな基準であって、絶対的なものではありません。
レシピを金科玉条のように信奉すると、固定観念が生まれます。
またそのことにより、日々くり返すことによる熟練をさまたげる結果を生むことになってしまいます。

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旬の素材を活かし季節を大切にした料理教室を、浜作本店にて開催しております。

京都の料理の基本は、素材を湯がいたり、蒸したりして、まず食べられる状態にし、それを出汁でしっかり煮込むこと、ここまでが重要です。
皆さんの思われるレシピによる味付けというのは、この後の作業であり、レシピに重きを置くあまり、それまでの下ごしらえと出汁煮込みをおろそかにしがちです。
下ごしらえさえしっかりしておけば、あとは甘味なり、醤油味なり、塩味はお好みのまま加えて頂ければよろしい訳で、その度に何回もお味見なされば、まず食べられないというような大きな失敗は防ぐことができましょう。

よくお料理番組などで調味料を最初にまとめてお入れになる場面をお見受けします。
しかしこれでは、合わせ調味料が支配する単調な味付けとなり、奥行きが生まれません。
なぜなら、一車線のトンネルがあるとお考え下さい。
そこに秩序なく砂糖や醤油、塩などが通ろうとすれば、必ず渋滞が起こります。
それを防ぐには、順に交通整理をする必要があります。
まず出汁煮込みをしっかりして出汁の味を含ませ、次に含みにくい甘みを最小限加え、ここでまたしっかり煮込み、最後に醤油や塩で味の輪郭をはっきりと描きます。
順に段階を踏んで調味料を加えることにより、逆に表面から醤油や塩、次に甘味、そして出汁、最後に素材と噛むほどに味わいに変化が生まれます。

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交差点の多い狭い道を徐行して進むように、ご自分の舌を信じて、焦らずじっくりとお味付けされますよう、そしてお子さんに「あぁ美味しい」という感覚をお伝えになられますよう願っております。


次回は焚き合わせ、素材の組み合わせなどについてお話できればと思っております。



森川 裕之 著

¥2,520
和食の教科書 ぎをん献立帖
→アマゾンで購入する

本書は日本最初の割烹料理店である京都・ぎをん「浜作」ご主人・森川裕之さん、初めての著書です。
名店のレシピ集があまた刊行されている中で、「浜作」の料理本がこれまでなかったのは意外なほど。
森川さん入魂の本書には、長年、カウンターそして料理教室で披露してきた和食の基本の技、料理がぎっしりとつまっています。川端康成、河井寛次郎、中村吉右衛門など著名人たちが来店すると決まって注文した逸品や名物料理のレシピも惜しげもなく掲載、"食べものがたり"としても面白い一冊です!

【目次】
【料理心得帖1】包丁の使い方、おだしのとり方など
【料理心得帖2】煮焚きもの、焼きものなど
【料理心得帖3】蒸しもの、汁もの、ご飯ものなど
【御贔屓献立帖】川端康成、河井寛次郎、中村吉右衛門、グレース・ケリー、バーナード・リーチ、
ダイアナ妃など著名人が愛した逸品、名物料理の数々
引用 - Amazon 和食の教科書 ぎをん献立帖

京都・ぎをん「浜作」のご主人森川さまに、「食育」に関してご寄稿いただきました。
中学受験に直接関わることではないかもしれませんが、主任相談員の先生方がおっしゃるように、お子さんの日常の体験は「あっそうか!」という腑に落ちる感覚に繋がる大切なことでもあります。
お子さんが口にする毎日の食事の中で、繊細な味付けは「ああ、美味しい!」という経験から始まって、次第に素材の味にも興味が移っていくものかもしれません。
毎食ご家庭ならではの味付けがなければならないということではなく、お子さんと一緒に食事を楽しむといった視点で、改めて食事を見なおす機会を持っていただければと思います。

かしこい塾の使い方編集部
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