偏差値40台から抜け出せない子が偏差値50の壁を超えるために「絶対に」やらなければならないこと

こんにちは。
中学受験情報局 主任相談員の辻義夫です。
中学受験において、多くの親御さんが「偏差値の壁」を感じています。
「なんで安定して偏差値50を超えられないのかしら。」「どうやったら、偏差値55以上を取り続けることができるんだろう?」「志望校偏差値が65なんだけど、あと10足りない。あの子は今の現状わかってるのかな。。。」といったようなご相談が相談会を実施する度に出てきます。
そして、「テストによっては望んでいる偏差値に近づくこともあるけど、次のテスト、また次のテストとやっているうちに元々取っていた偏差値へと戻ってしまう。それが続いている内に我が子の偏差値はこれくらいが適正なのではないか」と感じてしまうこともあるようです。
先にお話をしておきます。偏差値はあなたのお子さんの能力を適切には示していません。その時のテストにおいて他のお子さんとの相対的な数値で表しているだけです。
本当に必要なのは、あなたのお子さんがどんなことを理解していて、何を記憶していて、問題に対してどういう対処をしようとしているかであり、その現状に対し、親子でどうアプローチをしていくかなんです。
今回は、偏差値が40台の生徒が偏差値50を安定して超えることができるようになるために、「偏差値が40台のお子さんがなぜ抜け出すことができないのか」と「どのように学習に取り組むべきか」について解説していきます。
しっかりと読んでいただき、注意を向けていただくことで、成功体験を得ていただけるように、具体的なアプローチについてもお話しています。
目次
中学受験における偏差値40台の子が陥っている状況とは?
〜偏差値50以上の子が当たり前にやっていることとの比較〜
中学受験における偏差値40台のお子さんは、多くの場合、塾が求めている学習サイクルに乗り切れていない状態にあると考えられます。これは、「塾のカリキュラムすべてを理解し、できるようにならないといけない」というわけではなく、塾が設定した「今週はここまでできるようになってほしい」という最低限のライン(量と質)が維持できていない状況を指します。
勘違いされがちなことですが、偏差値40台のお子さんも、毎週の授業で最低限のことをこなし、基本的なラインの知識は積み上がっています。
しかし、彼らの学習は「式に当てはめて、知っている式を使って計算して解くことが勉強だ」という傾向が強く、「教えられたことを理解する力」「考える力」「記憶に定着させる力」が育っていないことが根本的な課題です。これらが育っていないから、頭に入れておくべき最低限のラインを維持ができない単元が増えていき、後々の単元でつまづくことが起きていくわけです。
例えば算数では、基礎的な問題(例:つるかめ算の基本パターン)は「作業」としてこなせるだけでなく、その根底にある「仕組み」や「理由」も授業後では、なんとなく理解できている状態になります。しかし「完全に理解し、納得した」状態になっておらず、カリキュラム実施直後のテストなどでは解けるが、時間が経つと「仕組み」や「理由」に関して、記憶から抜け落ちてしまい、うろ覚えである「作業」のみで対処する、あるいは、完全に記憶から抜け落ちているため、多くの単元が含まれる公開テストや組分けテストになると「これってどうやってやるんだっけ?」と手が止まってしまうのです。これは、「理解が不足している」という状況から、「作業だけをして覚えようとする」状況をつづけてしまったため、「記憶ができていない」に近い状態でとなり、一度理解したつもりでも、後々思い出すことができないため、結果的に定着しないという悪循環に陥ります。
具体的に彼らが抱える問題をまとめると以下の通りです。
理解の不足
塾が「今週はこれだけのことをできるようにしてきてくださいね」と設定した基本的な内容、特に理数系科目における「必須の基本パターン」や「典型的な解法」が、おぼつかない状態にあります。例えば、算数のつるかめ算で「面積図を書いて考える」という場合、そのやり方は知っていても、なぜその図で解けるのか、どのような時に面積図を使うのかといった「根幹」の部分を深く理解できていません。
「作業」に偏った学習
問題を解く際に、ただ手順をなぞるだけの「作業」になってしまいがちです。表面上は作業ができていても、その裏にある仕組みや理由を本当に分かっていないため、時間が経つと記憶から抜け落ちてしまいます。大きなテストになると、それらしい図は書いてみるものの、「どういうときに使うんだっけ?」と思い出せないという状況に陥ります。
往々にしてこのような子はテスト後の解答を見て、「あーこれを使えばよかったんだ。なるほどね。」といった受け取り方をしがちです。
「考える力」の不足
偏差値40台のお子さんは、問題を解く際に「式に当てはめて、知っている式を使って計算すること」が勉強だと思っている傾向が強いです。彼らは1問1問を深く考えず、ひたすら作業的にこなそうとします。これは「考える力が育っていない」状態と言えるでしょう。考える力については、後述します。
復習サイクルの欠如
一度理解したつもりでも、忘れてしまうのは誰にでも起こります。しかし、偏差値40台の子は、その忘れていくことをうまく防ぐ「復習サイクル」が確立されていません。
これらのことが当てはまっているなとスグに感じ取れるもので、塾の組分けテストなどでもよく出される例を提示しましょう。
「1立方センチメートルあたりの重さが2.8gの物体を5.6立方センチメートル用意すると、重さは何gになるか?」というようなひっかけ問題です。
どういうひっかけかというと、「5.6」と「2.8」が、さも関係ある数字(「5.6÷2.8=2」という関係)になっていることから、なんとなく問題を見ていて、単位の関係性についてうろ覚えになってしまっていることもあり、計算しやすい数字に引っ張られて「2g」と答えてしまうんです。
これは、単位の計算について授業で「単位の関係について意識し、整理をして解きましょう」と教えられているのにもかかわらず、その後の復習を行う中で、「作業を行うだけの学習」悪い言い方をすると「手癖で解く学習」が習慣となってしまい、安易な暗記や直感に流されてしまうことになっている証拠なんですね。
ここまでのお話から、「今のままの学習ではいけないことはよく分かったけど、じゃあどうしたらいいの?塾の宿題をこなすだけでも今は精一杯なんです。これ以上どうすれば?」という疑問や不安もあるかと思います。
ここからは精一杯の現状から「やることを増やさず」、今の状況を打開するための方法について解説していきます。
算数の壁を乗り越える!偏差値50への道
算数で偏差値40台から50台に引き上げるには、「考える力」を育む学習に切り替えることが不可欠です。
1. 基礎トレの「やり方」を見直す
多くの塾で推奨される基礎的な計算問題集など(サピックスでは「基礎トレ」)は、毎日同じような問題が出題されるものです。ご存知かと思いますが、基礎トレの中には過去に習った内容を思い出すための問題が意図的に設けられています(SAPIXの方はビックリマークの問題ですね)。
これを「きっちり」やっている生徒は、偏差値50程度に到達する可能性が高いとされています。この「きっちり」が大切です。
しかし、偏差値が上がらないお子さんは、基礎トレのやり方がいい加減であることが少なくありません。
例えば、難しい問題に直面した際に、すぐに答えを見て「ああ、そうだった」と手順を上書きするだけで終えてしまうのです。これでは、一時的に解けても「仕組み」が理解されないため、時間経過とともに忘れ、応用が利かなくなります。
効果的な基礎トレのやり方は、以下の通りです。
- • すぐに答えを見ない!!
- • 「これ、どうやるんだっけ?」と考え、過去のテキストに戻って確認する。
- • ただの作業ではなく、「なぜこの計算をするのか」「どういう時にこの解き方をするのか」という納得を積み上げていく。親御さんが付き添いでやっている場合は、「これどうやって解くの?」「これって前のこことどう違うの?」といった声掛けをし、「理解」と「納得」を得ていく習慣を身につけていくようにしていきます。
- • 「考えながら」問題を解く習慣をつける。一見、ただの反復演習に見えても、成績の良い生徒は常に頭の中で思考を巡らせています(どのような思考になっているのか後述します)。
2. 「書く」ことの重要性を理解する
「書くのが面倒くさい」というお子さんは多いですが、偏差値40台のお子さんの場合、そもそも「書くことが大事だと思っていない」ケースが多々あります。線分図や面積図といった図解を「先生が説明するときに分かりやすいように書くもの」だと捉えがちで、自分自身が考える上で不可欠なツールだという認識が薄いのです。
例えば、先ほどお話しした単位換算を例に取ると、「1立方センチメートルあたり2.8g」であれば、「1cm3・・・2.8g」「5.6cm3・・・■g」のように単位と数値をきちんと書き出して整理することが非常に有効です。(これを「端折る」と、成績上位のお子さんでも間違いがちな問題ですね)
「整理し書き出す」ことは、「注意を向けるべきことを意識的に区別できるようにする」ということです。
整理し書き出すことにより、何を問われているかを意識することができ、問題に対して正しく考えるアプローチを手に入れることができるようになります。
逆に書き出さなければ、注意すべきこと、記憶すべきことが頭の中でごちゃごちゃになってしまい、直感的な行動を取りがちになります。
保護者の方の具体的なサポート方法として、以下の点が挙げられます。
- • 類題演習の量を減らし、その代わりに「きちんと全部書いてやる」ことを徹底させる。
- • 単に「書きなさい」と指示するのではなく、「なぜ書くことが必要なのか」を丁寧に説明する。図を書くことで「正しい解き方が見える」ようになること、練習で丁寧に書くことが本番での確実な正答に繋がることを伝えます。
- • 「書くのが面倒」という感情を理解しつつも、具体的なメリットを提示する。例えば実際に書くのにかかる時間を計測し、「15秒で書けることを省略して、もし間違えたら損だ」といった具体的な時間感覚を伝えることも有効です。
- • 解説を頼りにしながら、親子で「書く」という作業の反復練習を行う。
私が講師として生徒に教えているときには、例えば、テストで図や表を描かずに間違えた問題については、「なぜ書かなかったのか」「なぜ同じミスをしたのか」を生徒自身に気づかせるような質問を投げかけるようにしています。
単に、「なぜ書かないのか!」という直接的な言葉で言うのではなく、「あれっ?ここってどうなってたんだっけ」と投げかけ、生徒にその部分に関する図を描かせ、「これ解けそうじゃない?」という言葉を投げかける。
そうすることで、書いたことで解けるようになったという経験をさせ、失敗経験と成功経験の両方を通じて、「書くことの重要性」を体感させていきます。
このような学習を徹底することで、算数の偏差値は40から50に伸びる可能性が極めて高くなります。
3. 「考える力」の育成:問題への向き合い方を変える
偏差値50を超えるためには、「考える力」が育っていることが必須です。これは、与えられた問題に対し、単に公式を当てはめるだけでなく、「これはどういう問題だったか」を思い出しながら、その問題に合わせた解き方の手順を積み上げていく思考プロセスを指します。
見た目には、偏差値40台の子も50台の子も同じように宿題をこなしているように見えるかもしれません。しかし、その頭の中では大きな違いがあります。偏差値50台の子は、一見「作業」に見えることでも、常に頭の中で問題文から得られる数字と文章を見て「この問題はこういう問題だ。だからこういうふうな条件が揃った問題であれば、こういう手順の解き方を行えばいいんだな」と、授業で習った概念や、その他の似た問題との関係を考えながら、理解を深めていきます。
私のような家庭教師の目から見れば、この「考えているか、いないか」は一目で分かります。単に計算が早い子でも、少し突っ込んだ質問をすると、暗記型の学習に陥っている子はボロが出やすいものです。例えば、「なぜ面積図で解けるのか?」と問われた時に、説明できないようなら、それはまだ本当の理解には至っていません。
この力を育むには、日々の学習において、「問題を最後まで丁寧に読む」「図を書く」「式を丁寧に立てる」ことを習慣にすることです。
これらの「必須の作業」が安定的にできることが、偏差値50を安定的に達成するためのラインです。特に公開模試のような実力テストで50台を目指すなら、このような学習は不可欠です。
国語の壁を乗り越える!偏差値50への道
国語で偏差値50を安定的に達成するためには、以下の点が重要になります。
1. 語彙力・漢字の定着が最重要
「読解力」は「言葉を知っている」ことが前提であり、文章中に知らない漢字や言葉が多ければ、正しく文章を読み解くことは困難です。中学受験のテストでは、漢字や語句の問題で20〜30点程度の配点があることが多く、ここを半分、または6割程度取れていないと、偏差値50は非常に難しいでしょう。
2. 自分に合った「覚え方」を見つける
漢字や語句の学習は、単に「書いて覚える」だけでは不十分です。「自分がどういう覚え方をすると覚えやすいのか」を理解し、それに合わせた学習方法を見つける必要があります。
様々な覚え方の例としては、以下のようなものがあります。
• 「唱える(音読する)」:音声で覚えることが得意な生徒には効果的です。例えば、「様は3本線ね」のようにフレーズにして覚える方法もあります。
• 「見て覚える」:視覚で形を捉えることが得意な生徒に適しています。
• 「意味や例文と共に覚える」:単に漢字の形を覚えるだけでなく、その漢字がどのような意味を持ち、どのような文脈で使われるのかを理解する習慣をつけることが非常に重要です。例えば、「様」という字が「様子」「有り様」「模様」のように「状態」を表すことを教えてあげることで、その言葉のニュアンスを掴みやすくなります。
• 「偏(へん)と旁(つくり)」など漢字の法則を意識する:学年が上がると形声文字の割合が増えるため、漢字の成り立ちを意識して覚えることで、効率的な学習に繋がります。
保護者の方は、お子さんが普段どのように覚えているのかをチェックし、もし効果が出ていない場合は、「書いた方がいいのか、唱えた方がいいのか」といった様々な方法を試して、一番覚えやすい方法を一緒に見つけてあげましょう。
3. 語彙力を日常生活で育む
語句の習得には、問題集を解くだけでなく、日常生活の中に語彙を増やす工夫を取り入れることも有効です。
• 「ことわざカルタ」や「慣用句カルタ」などの遊びを取り入れる。
• 会話の中で、子供の知らない語句をあえて使い、言い換えたり説明したりする。例えば、「それって〇〇のことだよね」というように、別の慣用句や熟語に変換して伝えることで、自然と語彙力を高めることができます。
最後に:偏差値50は「安定」の第一歩
中学受験で偏差値50を安定的に達成するためには、基本的な解法をきちんと守り、漢字や語句といった基礎固めを徹底することが必須です。特に公開模試などの実力テストで50台を取りたいのであれば、今回ご紹介したような「考える学習」と「質の高い基礎固め」が不可欠です。
偏差値40台から50台への移行は、単なる知識の詰め込みではなく、学習に対する姿勢や方法を根本的に見直す時期です。焦らず、一歩ずつ、丁寧に学習習慣を身につけていくことで、必ず成果は現れるでしょう。
この次は、偏差値50台後半から60台、そしてさらに難関校を目指す生徒たちの学習方法について、深掘りしていきます。
「2025年度版 中学受験ハンドブック」では、単元毎についての学習についても丁寧に触れています。ぜひご活用いただき、よりお子さんにとってよい中学受験にしていただければと思います。