アンケート結果から見つめ直す、中学受験における親の役割と理想の関わり方
こんにちは。
中学受験情報局 主任相談員の西村則康です。
中学受験において大切なのは、お子さんとお母さん、そしてお父さんのチームプレーではないかと思います。
お子さんが長い期間、中学受験という目標に向かって頑張れるのは、親御さんが一緒に頑張ってくれているからこそです。
しかし、親が「どれだけ頑張っているか」と、それが「お子さんのためになっているか」は違います。
親御さんが頑張りすぎるあまり、お子さんが辛くなってしまったり、空回りして親御さん自身が自分を責めてしまうことも少なくありません。
中学受験情報局ではアンケートを行い、中学受験を目指すお子さんをお持ちの親御さんに「親の悩み・ストレスに関するアンケート」ご回答いただいたのは回答数94名、母親が80%、父親が20%で、お子さんの学年は6年生が最も多く41%の方から頂いております。
今回は、皆様から寄せられたアンケート結果や赤裸々なお悩みに触れながら、どのように親子の関わりや親の役割を行っていくべきかについて、詳しくお話ししていきたいと思います。
この記事の執筆者

西村則康 名門指導会代表
40年以上、難関中学・高校受験指導一筋のカリスマ家庭教師。
「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーションをアドバイス、コーチング手法も取り入れ、親子が心底やる気になる付加価値の高い指導を行う。
目次
1. 中学受験のスタートは「家族の気持ちの統一」から
アンケートで「家族は皆、中学受験に協力的ですか?」と伺ったところ、「まあまあ協力的」が55%、「とても協力的」は30%という回答でした。
親子で受験勉強に取り組むのは素晴らしいことですが、そのときに夫婦で、子どもに対する認識が同じかどうかはとても重要です。
中学受験で1番大切なのは「受験をしよう」と決断し、スタートさせる前の家族の気持ちの統一です。
これがしっかりできていない家庭は必ずつまずきます。
「中学受験をはじめてから夫婦喧嘩が増えたと思いますか?」という問いには、「あまりそう思わない」が41%、「まあまあそう思う」が24%でした。
ここで私が強調したいのは、中学受験に不可欠なのは「夫婦の意見一致」だということです。
中学受験を言い出すのはお母さん、それをなんとなくお父さんが認めて始まる…というパターンだと、途中で家族みんながしんどくなることが多いようです。
現実的にサポートするのは、子どもの近くにいるお母さんになりがちで、お母さんもそれを納得していますが、すべてを担っているとどうしても煮詰まる時があります。
そんな時に陥りやすいのが、「中学受験に賛成したんだから、あなたも少しは協力してよ」「仕事があってなかなか時間が作れない。言い出したのは君じゃないか」という夫婦喧嘩です。
お母さんからすると「夫が協力してくれない」というストレスが溜まってイライラの原因になり、子どもにきつく当たってしまうという悪循環に陥ります。
そうならないために、まずは夫婦の意見を一致させて、早い段階から準備を始めておくことが重要です。
家族に協力して欲しいこととしては、「家庭での環境づくり」が77%、「お子さんへの声かけ」が56%、「相談にのる」が41%と続きました。
自由記述でも、以下のような生の声が寄せられています。
- ・「子供の話、おしゃべり、気分転換につきあう」
- ・「邪魔をしない。見守る。」
- ・「マイナス言葉を言わない」
- ・「いつも機嫌良くしていること。」
- ・「子供優先の環境にして欲しい。いつでもテレビつけっぱなし、週末自分は遊びに行く、基本は家の中で自分の行動が優先だから。。」
お子さんが自分から「受験したい」と言い出したことであっても、「中学受験する」というのは家庭の方針として決めましょう。
ご家族全員で成功させるものなのです。
2. 親御さんのストレスと、「一番悩んでいること」の実態
では、実際に親御さんのストレスや悩みの種になってしまうのはどのようなことでしょうか。
アンケートでは、「親御さん自身の心理的余裕」が55%、「反抗期のお子さんの態度」が53%、「お子さんの成績の伸び悩み」が49%、「お子さんへのサポートがうまくいかない」が41%という結果になりました。
「中学受験をするお子さんを持つ親として一番悩んでいることは何ですか?」という自由記述の問いには、皆様の切実な思いがそのままの言葉で綴られています。いくつかご紹介します。
- ・「ついつい口を出しすぎて管理したくなってしまいます。コツコツやるタイプなので、黙っていた方が良いのかも知れませんが、より効率を求めるとついつい口を出してしまいがちです。」
- ・「自分から勉強をしないこと。教えるわけではないが、親が隣に座って一緒に漢字の練習をしたり、算数の問題を解くのがわが家のスタイルになってしまい、自走する気配がありません。」
- ・「5年生までは順調だったが、6年生になり反抗期に入り、全く勉強しなくなってしまった。成績も10くらい下がり、志望校を見直すべきか悩んでいる。」
- ・「子供が主体的に勉強に取り組まない。塾の宿題の解答を写していたこともある。」
- ・「自主性に任せたいが中々出来ず、厳しい声をかけてしまい、親子喧嘩が増え、家族皆ストレスが多くなること。」
- ・「志望校を塾の言われるままに設定してしまっているが、本当にこの学校が息子に合っているのかよくわからない。」
- ・「偏差値が届いていない現実を知っているのにいまだに他人事で必死さがうかがえず、できない問題や分からない問題にあたった時、分かろう理解しようとせずこなすことだけを考えている。」
- ・「どのようにこどもに中学受験を自分事とさせるか?親のやらせたいという気持ちばかりが肥大化して、こどもの気持ちも、学習に向かう姿勢も全くできていない。」
- ・「信じて待つということ。待つというのは思ってる以上に難しいと感じている。」
- ・「量よりも質を重視しその方向に舵を切らねばと思うのに結局量をこなす勉強になってしまっている」
- ・「現段階では第一志望校にむけて、全力でがんばってほしい。とはいえ、中学受験は一通過点である事もどこかのタイミングで気づかせたい。」
- ・「夫との意見の相違。私に対する批判、塾に対する批判(中略)、また中学受験は許さないと言って勝手に方針を決めようとする、夫の理解の無さに嫌気が差しています。」
これらの悩みは、どれも中学受験生を抱えるご家庭でよく見られるものです。中学受験の学習は、小学生の子どもにとっては遊びや好きなことを我慢することになるので、つらく感じることもあります。
そして毎日それに関わり続ける親御さん、特にお母さんも、相当パワーを消耗しているのです。
3. 親の失敗談から学ぶ、子どもとの理想的な接し方
アンケートの「今までで、お子さんとの接し方で失敗したなと感じたこと」についても、赤裸々な声がたくさん寄せられました。こちらも、できるだけそのままの言葉でご紹介します。
- ・「距離感が難しいです。近すぎるとついつい口出しが多くなり、気まずい雰囲気になる時があります。」
- ・「何度も同じ事を注意してしまう。成績が下がった時の声かけが、ついネガティブになってしまう。」
- ・「なかなか勉強を始められない子どもにプレッシャーをかけ過ぎて、さらにやる気を削いでしまったこと。」
- ・「なかなか勉強を始めないので声をかけてしまうこと。今やろうと思ったのにやる気なくなった、と言われてしまう。」
- ・「ゲームとの付き合い方。宿題が終わったら、ゲームを決まった時間やってOKとしたが、ゲームのための勉強になってしまい、受験へのモチベーションが下がっている。」
- ・「親がスケジュール管理や宿題などのサポートし過ぎたので、本人が受け身になってしまった。」
- ・「反抗期が始まりなかなかスムーズに勉強を始めてくれない時に、叱りつけて無理やりやらせようとしてしまった。結果、逆効果だったように思う。」
- ・「こちらから、命じるのではなく、自分で計画を立てる、自分でルールを作らせるようにするといいと塾の先生からアドバイスされ、実行したけれどうまくいかなかった。「やらせる」という時点で間違っているんだと思った。」
- ・「「宿題終わった?」「どこまで進んでる?」など、進捗状況を確認したこと。マイペースだがコツコツとやっているので、自主的にやっていることを認めて褒めた方が良かった。」
- ・「テストの結果が悪かった時に追い打ちをかけるようなことを言ってしまった。」
- ・「親の気持ちの中に焦りがあり、あれもこれもやらなければと子供に過負荷をかけてしまったことがあります。」
- ・「テストでの間違い箇所を、こどもなりに話してくれている時、「丸が付かなかったんなら、言い訳でしょ⁈」と一蹴してしまった事。」
- ・「頑張っていることは重々承知ではあるのに、褒めるより、更に頑張るような声がけをしてしまってきたこと。」
たくさんの体験談を共有していただきありがとうございます。
中学受験を成功させるために、どう子どもと関わればいいのでしょうか。それはまず、目の前の子どもをよく見つめることです。
子どもをよく観察し、子どもの気持ちになって考えましょう。
いちばんわかりやすい方法が「自分が小学生のとき、こんな状況だったらどう思うだろう」と想像してみることです。
ただし、「自分はできたから」「自分はこうやって言われてきた」ということを押し付けてはいけません。
重要なのは、どんなことを考えて、どんな言葉を親からかけてもらったらうれしいのかを考えてみるのです。
そうすれば、自然と子どもにかける言葉や行動が変わってくると思います。
わずか10〜12歳の子が、遊びや楽しいことを我慢して勉強をするには、身近に励ましてくれる存在が必要です。
それなのに「もっと勉強しなさい」と叱咤したり「こんな成績では合格できないよ」と子どもの自尊心を傷つけてしまうとうまくいきません。
「今日も勉強をサボって」「またテストで悪い点を取って」などの言葉はぐっと飲み込みましょう。
言い方を変えて、「今日は疲れているのにえらいね」「結果には出なかったけどがんばっている姿はずっと見ていたよ」「次があるから大丈夫、ずっと応援しているからね」など、子どもが前向きなれるような明るい声かけをしてあげましょう。
4. 母親の役割と父親の役割〜それぞれの適切なサポート〜
特に学習面では、お母さんが勉強を直接教えようとすると、うまくいかないことが多いようです。
お子さんが苦手な問題や難問に頭を悩ませているとき、すぐに答えを教えたり、解き方を教えたりしてしまうお母さんがいらっしゃいますが、これはお子さんから”考えて答えを導き出す”チャンスを奪うことになります。
できればお母さんには「生徒役」になっていただき、「お母さんもわからないから、塾で聞いてきたらお母さんにも教えてね」と、お子さんに説明させてあげてください。
しっかり理解し、納得していないと、誰かに教えたり正確に伝えることができません。
お子さんに説明させることで、塾で聞いてきた解き方を体験として自分の知識に変えることができるのです。
一方、父親の役割はどうでしょうか。 イクメンという言葉が流行り、受験に関してもあれこれと直接手や口を出したがる父親がいますが、母親がある程度しっかりと子どものサポートをしている場合は、父親が手や口を出さないほうが、無難に受験勉強が進むことが多いようです。
あえて父親は子どもとの距離を詰めてあれこれとやっきになる必要はありません。
父親としての良いポジションは、いい意味で距離を置いた立場にいることが多いようです。
ビジネスマンとしての情報整理力や伝達力を活用し、テスト戦略を立てたり状況分析をしたりするときにサポートするととても役に立ちます。
また、お父さんの最も重要な役割は「母親のサポートをすること」です。
お母さんが一生懸命になりすぎて少し周りが見えにくくなっているときは、「いつもありがとうね。最近はどんな感じ?状況知りたいな」とねぎらい、何が起きているのかを聞いてあげることが肝心です。
逆に、こんなタイプの父親は要注意です。
- 「受験は闘いだ!」と勝手に燃え上がって塾を批判し始める「闘う父親」
- 自分の自慢や過去の成功体験をくどくどと語る「褒められたい父親」
- 子育てに関してすべて母親に任せている「無関心な父親」
お父さんからの「俺は塾に行かず、自分で買った問題集を何度も解いて、難関校に合格した」というような自慢話は、子どもからすると過剰に意識してしまい、やる気がなくなってしまいます。
なにか問題が起きたとき、たとえば子どもがスランプに陥って嘘をついたり、お母さんに暴言を吐いたりした非常時には、お父さんの出番です。
お父さんが登場してしっかり子どもを叱る必要がありますが、叱る時は論理的かつ簡潔な言い方を心がけてください。
そして、どんなに厳しく叱っても、子どもの「ぬけ道」を必ず用意してあげてください。
5. 悩みを抱え込まないために〜誰に相談するべきか〜
アンケートで「親御さんに悩みや不安があるとき、主に誰に相談していますか?」と伺ったところ、「夫/妻」が38%、「塾の講師」が29%、「ママ友」が13%という回答でした。
夫または妻に相談されているご家庭が4割近い結果になりました。
お父さんは、お子さんにつきっきりで受験勉強をサポートするお母さんに比べて、常時関われないからこそ、物事を冷静に見て判断できる存在です。
お母さんの悩みを聞いてあげるだけでもかまいません。
お母さんも相談できる人がいることで安心してお子さんの受験のサポートができます。
また、子どもを最も近くで見ている親、特にお母さんは、お子さんに言いたいことがたくさん出てきてしまいます。
それを伝えようとしても、お子さんの反抗期もあってうまく伝わらないこともあります。
そんなお悩みは受験にはつきものですが、伝える役割を上手に誰かに託し「サポート役」にまわるのが、中学受験期の親子関係で悩むお母さんたちにはよいのではないでしょうか。
ときにはお父さん、そしてもう少しお子さんから遠い存在の塾の先生などに役割をお願いするのもいいですね。
身近にいる協力者を探して、あらためて役割分担を考えているのもいいですね。
また、それでも行き詰まった場合は、定期的に弊社でも個人相談会を行っておりますので、ぜひご参加いただければと思います。
おわりに:中学受験は家族の絆を深める機会
「中学受験をして良かった」「家族の絆が深まった」。
中学受験で得られるのは、決して「志望校合格」だけではありません。
お子さんだけでなく、親御さんの成長にもなるとも言われる中学受験。
特にお母さんの存在は重要で大変でもありますが、とても貴重で実り多い経験にもなります。
お互いの不安がぶつからないように、親は子ども以上にストレスを溜めないことが大切です。
ポジティブな気持ちで受験を迎えられるように、親がまずリラックスをして子どもが安心して勉強に取り組めるようにしてあげましょう。
どの学校に進学することになっても、親子とも「これでよかった」と思えるよう準備することが大切です。
受験の成否は家庭にあるとも言われます。
今一度、親御さんの役割を見直してみてはいかがでしょうか。
ぜひ親子で成長し、絆を深める機会にしてください。

