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【低学年の家庭学習】「ドリル」より大切?入塾後に「伸びる子」の家庭だけがやっている『5つの隠れカリキュラム』

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公開: 最終更新日:2025年12月03日

「遊ばせておいて大丈夫?」と不安な保護者様へ

こんにちは、中学受験情報局・主任相談員の西村則康です。

小学1年生〜3年生の保護者の方から、よくこんなご相談をいただきます。 「低学年のうちは、たくさん遊ばせたほうがいいと聞きます。でも、周りの子はすでにSAPIXや四谷大塚の入塾準備を始めていて……本当に遊んでいるだけで大丈夫なんでしょうか?」

その不安、痛いほどよくわかります。 しかし、40年以上現場に立ち続けてきたプロの視点から断言させてください。焦ってドリルを詰め込むことだけが「入塾準備」ではありません。

この記事の執筆者

西村則康近影

西村則康 名門指導会代表

40年以上、難関中学・高校受験指導一筋のカリスマ家庭教師。
「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーションをアドバイス、コーチング手法も取り入れ、親子が心底やる気になる付加価値の高い指導を行う。【主なメディア出演・著書】テレビ:『ノンストップ!』『バイキング』ほか多数/著書:『中学受験は親が9割』『中学受験 基本のキ!』などベストセラー多数/連載:ダイヤモンド・オンライン、プレジデントオンラインなど

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先日、私がダイヤモンド・オンラインに寄稿した記事「子どもが勉強で「ズル」をして学力が向上しない…親が無意識にやっている家庭学習の「NG行動」【入塾準備後編】」でも解説しましたが、成果を焦ってやることを詰め込みすぎると、子供は「とりあえずなんとか終わらせたら褒められる!」「やったことを覚えていればママは喜んでくれる!」という感情が生まれ、『とりあえずの暗記学習』を覚えてしまいます。これでは本末転倒です。

では、机に向かわない時間に、家庭で何をすればいいのでしょうか? 実は、入塾後の偏差値を左右するのは、ドリルをこなすだけではなく生活の中に隠れた『3つのカリキュラム』なのです。

今日は、入塾後に「伸びる子」の家庭が無意識に実践している、家庭での具体的な取り組みについてお話しします。

第1章:【生活体験】台所は「算数脳」を育てる最高の教室

算数が「得意な子」と「苦手な子」の決定的な違いをご存じでしょうか?

問題を解いた数?難しい問題に取り組んだ数?

もちろん、それも大切な一つの要素かもしれません。ただし、低学年においては頭の中にある「原体験(イメージ)」の量が特に算数においては大きな力を発揮します。

特に差がつくのが、「量感」「空間把握」の2つの感覚です。 「1リットル」を「牛乳パック1個の大きさだな。」と大体の大きさがイメージできたり、「駅まで1km」を「大体20分で着くな」と距離と時間を結びつけられたり、「この立方体を切断した図形は?」を「豆腐を切った時こんな感じになってたな。」 と、なんとなく頭の中で切った後のイメージができたりなど・・・

この感覚が肌身に染み付いていることで、高学年になって「食塩水」や「速さ」、「図形全般」の単元に好影響を与えます。式だけで解こうとして、現実ではありえない答え(例:濃さ120%の食塩水など)を平気で書いてしまうということがなくなるのです。

中学受験算数 計算力と図形の感覚をつけるポイントとは

隠れカリキュラム①:料理こそ算数(理科も)だ


これらを養うのに、高い知育玩具は必要ありません。「台所」に立たせてください。

例えば、計量カップを使う場面は「分数」を学ぶ最高のチャンスです。「3人分で300gだから、1人分だと何gだろう」 「200mlのカップ半分(1/2)まで水を入れてみて」 というのは、ただ単に割り算をできるようになるだけではなく、実際の量感と数字とを結びつけることができるようになり、多くのお子さんが躓くポイントの1つである「分数」のイメージを自然と身に付けることができます。

こうして「見て、触って」分数を理解している子は、学校や塾で「1/3 ✕ 3 = 1」という式を見たときに、「ああ、あのことか!」と瞬時にイメージが湧きます。
この「ああ、あのことか!」という納得感こそが、算数のセンスの正体です。

料理と理科や算数を紐づけることについては、主任相談員である辻義夫先生が監修をしている「キッチンで頭がよくなる! 理系脳が育つレシピ」もありますので、ぜひ低学年の入塾準備にご活用ください。

隠れカリキュラム②:買い物で「概数」を学ぶ

スーパーへの買い物も立派な算数の授業です。 お子さんに300円〜500円ほど渡し、「これで好きなおやつを買ってごらん」と任せてみてください。

「128円のチョコと、50円のグミだから……まだ買えるかな?」 「消費税が入ると足りなくなるかも?」

このように、ざっくりと答えの見当をつける力を「概数(がいすう)感覚」と言います。 この感覚がある子は、高学年で複雑な計算をした時に、「あれ? 桁がおかしいぞ」と自分のミスに自分で気づくことができます。これは正答率を上げ、算数に対する自信を養う非常に重要な能力です。

今お話した2つの方法のみならず、生活の中にはたくさんの隠れカリキュラムが潜んでいます。

そして、この習慣、本当に侮ってはいけません。

今まで経験してきたことが数字や文字の中で出てくることで、お子さんの中でありありとイメージができるようになり、それは無機質な学習の中に「納得感」や「好奇心」を生み出すことに繋がっていきます。

第2章:【言葉の力】「〜はどうやったの?」「〜をするとどうなるかな?」「〜って何だろう?」の問いかけが思考力を作る

「今日のプリント終わったの?」 「早くやりなさい」

毎日の会話が、こうした「管理」の言葉ばかりになっていませんか?

低学年の家庭学習で大切なのは、問題を解くことそのものよりも、「どう考えたか」を言語化させることです。

最近の中学入試や入塾テストでは、国語に限らず算数や理科でも「思考力」そして「思考を整理し、形にする力」が求められます。自分の考えを論理的に考え、説明する力は、一朝一夕では身につきません。

声掛けに関しては西村則康著 「子どもがぐんぐんやる気になる魔法の声かけ」

隠れカリキュラム③:正解した時こそ「どうして?」

おすすめしたいのは、お子さんが問題を正解した時にこそ、「すごいね! どうしてそう思ったの(どうやって解いたの)?」と聞くことです。

間違えた時に「なんで間違えたの!」と詰められると子供は萎縮しますが、合っている時に聞かれれば、得意げに説明してくれます。

「だって、ここにこう書いてあるから」

「図を書いたらわかったよ」

このやり取りの積み重ねが、思考力、そして思考を整理し、表現する力を育てます。

また、親御さんの言葉を少し変えるだけでも効果があります。

「早くしなさい」 ➡ 「あと何分で終わりそう?(時間感覚の育成)」

「なんでできないの」 ➡ 「どこで止まっちゃった?(状況分析力の育成)」

「プリントを終わらせること」ではなく、「親子の対話」そのものをカリキュラムと考えてみてください。

隠れカリキュラム④:連想力を育てる「〜をするとどうなるかな?」「〜って何だろう?」

これもとてもおもしろい方法で、実はプロの家庭教師がよく使うワザがあります。

それは1つの問題から、他の問題へとつながる橋渡しをする言葉を投げかけること。

例えば、折り紙をしている時です。 正方形の折り紙を見せて、ただ折るのではなく、こう問いかけてみてください。

「この正方形の角同士を合わせて半分に折ったら、どんな形がいくつできるかな?」

お子さんは想像して、「三角形が2つ!」と答えるでしょう。そこでさらに突っ込みます。 「ということは、この三角形の面積(広さ)は、元の正方形のどういう関係になってる?」

すると子供はハッと気づきます。 「あ! 正方形のちょうど半分だ!」

高学年で習う「三角形の面積の公式(底辺×高さ÷2)」の本質的な理解そのものです。「÷2」の意味を、遊びの中で体感しているのです。

また、言葉の定義遊びも有効です。 「『りんご』って何だろう?説明してみて」

「赤い果物だよ」 「じゃあ、イチゴもりんごかな?」 「違うよ、木になるのがりんごだよ」 「なるほど、じゃあ『木になって、赤くて、丸い果物』といえば伝わるかな?」

このように、「〜するとどうなる?(因果関係)」や「〜って何?(定義)」を問う会話は、知識と知識をつなげる「連想力」を育てます。 この連想力こそが、未知の問題に出会ったときに「あ、これはアレと同じだ!」とひらめく力につながるのです。

高学年の例で、例えば、プロの家庭教師では「旅人算の追いかける問題」を解いた後ただ類題をさせるだけではなく、「時計算の追いかける問題」を提示して、追いかけるという共通点の元、2つの問題を紐づけて学習させて、先に行くものを後から追いかける構図の問題を連想させるようにしていくということを行ったりしていきます。

これにより、「抽象化」と「具体化」を通して連想力を育み、ここ最近の思考力を問う問題が増えた入試問題への対策を行っていくのです。

第3章:【机上の準備】鉛筆の持ち方は「一生の損得」に関わる

ここまで生活体験のお話をしましたが、最低限やっておくべき「机上の準備」もあります。 それは難問を解くことではありません。勉強の「フォーム(型)」を固めることです。

スポーツと同じで、勉強もフォームが崩れていると、どんなに練習しても成果が出ません。特に注意して見てあげてほしいのが「鉛筆の持ち方」と「姿勢」です。

隠れカリキュラム⑤:正しい持ち方は最強の武器

自己流の変な持ち方をしていると、指に余計な力が入り、すぐに疲れてしまいます。 「手が疲れるから、字を書きたくない」 「字が汚くなって、自分の書いた数字を見間違えて計算ミスをする」

これらは高学年になってからでは矯正が非常に難しく、入試本番まで続く「ハンデ」になってしまいます。 「親が口うるさく言って直せるのは、低学年のうちだけ」と割り切り、ここだけは根気強く指導してあげてください。

勉強全般に影響を及ぼす「エンピツの持ち方」〜早い時期に正しい持ち方を身につけよう〜

また、勉強の中身は何でも構いません(迷路でも、塗り絵でも、読書でもOKです)。 「夕飯の前は必ず10分間、机に座る」 このように、歯磨きやお風呂と同じレベルで「座る習慣」をつけておくこと。これができていれば、いざ通塾が始まった時、スムーズに受験生活に入っていくことができます。

まとめ:入塾テストは「準備運動」で決まる

入塾テストが近づくと、焦って『トップクラス問題集』のような難しい教材を買い与え、特訓したくなる気持ちはわかります。 しかし、土台がない状態で建物を建てようとしても、すぐに崩れてしまいます。

ご紹介した5つの「隠れカリキュラム」を家庭で実践できていれば、塾に入ってからの伸びしろは無限大です。さらに、お子さんとのコミュニケーションの中で、新たな隠しカリキュラムを考え、お子さんの好奇心を育てて上げてください。

そして、どうぞ焦らず、今しかできない「体験」をたくさんさせてあげてください。それが、遠回りのようで一番の「入塾準備」になります。

▼ 関連記事(ダイヤモンド・オンライン) 「親が無意識にやっている家庭学習のNG行動」については、こちらの記事で詳しく解説しています。ダイヤモンド・オンラインに寄稿した記事「子どもが勉強で「ズル」をして学力が向上しない…親が無意識にやっている家庭学習の「NG行動」【入塾準備後編】」

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