「良かれと思って」が仇になる。中学受験で父親が陥りやすい「4つのNG行動」とその処方箋
中学受験の勉強が本格化する6年生。志望校との距離に焦りを感じ、「もっとやらせなくては」「なぜできないんだ」と、つい語気が強まってしまう親御さんは少なくありません。特に、社会の第一線で活躍されているお父様ほど、ご自身の成功体験を我が子に重ねるあまり、無意識のうちに子どもを追い詰めてしまう傾向があります。
今回は、私が家庭教師として現場で見てきた「2人のお父さんのエピソード」を軸に、父親が陥りやすいNG行動と、本来あるべき親のサポートについてお話しします。
この記事の執筆者

西村則康 名門指導会代表
40年以上、難関中学・高校受験指導一筋のカリスマ家庭教師。
「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーションをアドバイス、コーチング手法も取り入れ、親子が心底やる気になる付加価値の高い指導を行う。
1. 親世代の成功体験が生む「量」への執着
多くのお父様は、「努力は裏切らない」「量は質に転化する」という信念をお持ちです。しかし、これが中学受験においては、子どもを潰す刃になることがあります。
学習スケジュールを詰め込むお父さん
少し前、家庭教師をしていて印象に残っているお父さんがいます。 Aくんの家庭教師に就いたのは、Aくんが5年生の秋でした。 Aくんの志望校は男子御三家のひとつの学校で、4年生のうちは順調に勉強が進み、成績も伸びていました。でも、5年生になって徐々に成績が下がり始めました。それを知ったAくんのお父さんは、積極的に中学受験に関わり始めます。
そこからAくんの成績はどんどん下がり始めてしまいました。 そこで5年生の秋に、家庭教師として私が関わることになったのです。お父さんはとても真面目なタイプの方で、Aくんの成績を上げるために一生懸命でした。 驚いたのは、お父さんがAくんのために作成した「学習スケジュール」。
自宅のホワイトボードには毎日の予定がぎっしりと書かれていて、正直、その3分の1でもこなせたらたいしたものだと感じました。 塾のある日もない日も、4教科の復習や宿題、テキストの応用問題やテスト直し、そして計算や漢字など、隙間なく学習スケジュールで埋められていました。
普通なら、塾のある日はその日の授業の復習だけで手一杯のはずですが、それ以上の学習量がスケジュールとして記入されていました。明らかに詰め込みすぎです。 しかも、お父さんは詰め込みすぎていることに気づかず、お父さんが指示する学習量をこなせないAくんを叱咤激励します。
できない分は週末に取り組み、Aくんは息抜きの時間もありません。 お父さんの期待に応えようとがんばっているのですが、Aくんの顔にはもう精気がありません。 毎日がんばっているのに、お父さんに認めてもらえないAくんの表情は次第に暗くなっていき、ただスケジュールに追われるだけの毎日になってしまいました。 こうなると、成績は下がる一方です。
お父さんが「やらせすぎる」理由
なぜ、お父さんはAくんをここまで追い詰めてしまったのでしょうか。
お父さんは、もちろんAくんに深い愛情がありAくんもお父さんが大好きで、決して親子関係は悪いものではありませんでした。
ただ、お父さんは「努力をすれば結果を出すことができる」「たくさん勉強したら合格できる」という一心でAくんの学習スケジュールを立てたのです。
これには、お父さん自身の大学受験や仕事での成功体験があったのかもしれません。
でも、中学受験をするのは小学生の子どもです。
精神的に成熟している高校生や大人はたくさんの課題をこなし、目標に向かって進めるかもしれません。
でも、まだ発達途上の子どもには難しいことなのです。私は、お父さんに「やらせすぎると子どもを潰してしまう」ということを説明しました。
お父さんは熱心に私の話に耳を傾けてくれましたが、そのあとも相変わらず膨大な量の学習をAくんにやらせようとしていました。
中学受験においては、小学生の子どもの精神力と体力に応じたやり方で進めていかなければ成績は伸びません。
このことをAくんのお父さんが理解して変わるまでには、数ヶ月の時間が必要でした。
2. 「苦手=努力不足」という決めつけの罠
次に多いのが、弱点補強を急ぐあまり、子どもの心を「苦手」という鎖で縛り付けてしまうケースです。
無意識に苦手意識を刷り込んでしまうお父さん
別のご家庭で、こんなことがありました。 Bくんの家庭教師に就いたのは、6年生の春のこと。
Bくんは勉強ができる子で、御三家を目指していました。でも、算数の「速さ」だけがどうしても苦手で塾の先生からも補強を勧められていました。
Bくんのお父さんは名門大学卒業のいわゆるエリートで、「苦手なものでも、何度も繰り返して取り組むことで克服できる」という考えを持っていました。Bくんが苦手な「速さ」を克服させたい一心で、「速さ」の問題ばかりをやらせていたようですが、Bくんはやればやるほど解けなくなってしまいました。 Bくんは学力が高く、「速さ」の概念は理解できています。
でも、お父さんから何度も「お前は『速さ』の問題ができない」と言われながら繰り返し問題を解くことで、すっかり苦手意識を刷り込まれてしまっていたのです。
入試直前の時期に、Bくんがこれまで秘めていた気持ちを吐き出し、お父さんの前で大泣きしたことがありました。
それがきっかけとなり、お父さんはBくんの気持ちに気づくことができました。「全部、完璧にできなくていい」という気持ちになったお父さんは、Bくんに「速さ」の問題でプレッシャーをかけることがなくなりました。
そうして迎えた入試当日。 「できるところまでやった」という自信を持ったBくんは、見事、第一志望校に合格したのです。 「速さ」の問題では、いくつかの小問でしっかり正解できていました!
3. 父親が陥りやすい「4つのNG行動」
これら2つのエピソードに共通する背景には、父親特有の心理的傾向があります。ここでは、特によく見られる4つのNG行動を整理してみましょう。
① 「量」で不安を解消しようとする
Aくんのお父様のように、スケジュールを埋め尽くすことで「これだけやっているんだから大丈夫」と、親自身の不安を解消しようとしてしまいます。
② 子どものプライドを尊重しない
お父様にとっての「叱咤激励」が、子どもにとっては「人格否定」に聞こえてしまうことがあります。
③ 精神論で解決しようとする
「最後は気合だ」「努力は報われる」という信念は、まだ脳が発達途上の小学生には時に毒となります。
④ 感情のコントロールを失う
テストの結果一つで不機嫌になったり、強い溜息をついたりすることは、子どもから「安心」を奪い取ります。
4. 父親にしかできない「最高のサポート」とは
では、お父様方はどのように受験に関わるべきなのでしょうか。
大人の「精神論」は子どもには逆効果になることも
大学受験や仕事で成功体験を持つお父さんは「努力すれば結果につながる」と考えがちです。 もちろん、そういう側面はあるのですが、多くの場合このような精神論は子どもには通用しません。 子どもは大人が思っている以上に繊細で、お父さんやお母さんからかけられた言葉を重く受け止め、傷ついてしまうことが多々あります。
子どもの学力を伸ばしたい、成績を上げたい、志望校に合格させたいという親心はわかります。 そのために必要なのは、学習スケジュールを詰め込んだり、苦手なことを繰り返しやらせることではなく「子どもの気持ちになって考える」ことです。 12歳の子どもはどんな言葉をかけられると嬉しいのか、どんな言葉をかけたら自信につながるのか。 それらを考えることが、中学受験成功への近道になるのではないかと考えています。
合格への鍵は「勉強メンタル」にあり
入試本番は、子どもが自分の力で戦うしかありません。その時に最大限の力を発揮するために必須なのは、子ども自身が「自分ならできる」と自信を持つことです。
どれほど優れた教材やカリキュラムがあっても、土台となる「勉強メンタル」が崩れていては、知識は吸収されません。AくんやBくんのケースが示すように、親の「無意識のプレッシャー」を「絶対的な安心感」へと変えること。これだけで、子どもの偏差値は驚くほど動き出します。
お子さんのやる気に火をつけ、最後まで走り抜くための「正しいメンタルサポート」とは何か。 具体的な声かけの魔法や、親の心の整え方については、「本当にかしこい子になる!勉強メンタルの育て方」で詳しくお伝えしています。
お子さんの精気のない表情を、自信に満ちた笑顔に変えたいと願うすべての親御さんに、ぜひ手にとっていただきたい内容です。
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セミナー後半では、知識を得るだけでなく、その場でお子さんとの関係をアップデートする体験型ワークショップを行います。
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「理想」と「現実」のギャップを埋める 「勉強メンタル」の視点を取り入れると、今までの接し方のどこに「ブレーキ」があったのかが見えてきます。
明日からの「魔法の声かけ」を具体化する 「どんな態度で、どんな声をかけてあげれば、あの子の瞳は再び輝き出すのか?」具体的な言葉をその場で書き出していただきます。
「指示」を「伴走」に変える。この10分間のワークが、あなたとお子さんの受験生活を劇的に変えるきっかけになるはずです。

