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お子さんを「工夫して計算する子」にするヒント

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公開: 最終更新日:2023年12月14日

お子さんは、工夫して計算しているでしょうか。

工夫できるところをせずに、正直にすべて計算して多くの手間をかけ、そこまでしたのに答えが間違ってしまっては、お子さんのモチベーションも下がってしまいますね。

そのようなお子さんの状況にやきもきしている、という親御さんもいらっしゃるかもしれません。

今回の記事では、具体的な計算の工夫の例と、お子さんに「工夫して計算すれば楽になるんじゃないかな?」という視点を持ってもらうための方法について考えてみたいと思います。

計算の工夫は「センス」ではなく「知識」

計算の工夫に限らず、算数の多くの問題についての「解法」や「目のつけどころ」は、センスによるものではなく知識によるものです。

「ひらめき」ではなく「知っているかどうか」で決まると言ってもいいでしょう。

たとえば次のような計算問題があります。

  3.7 × 3.14 + 11.2 × 3.14 − 4.9 × 3.14 =

3つの掛け算のパートから成り立っていますが、かけている数がすべて3.14なので、まとめることができますね。

  3.7 × 3.14 + 11.2 × 3.14 − 4.9 × 3.14

=( 3.7 + 11.2 − 4. 9)× 3.14
= 10 × 3.14
= 31.4

と、答えを出すことができます。

「分配法則」を使った考え方です。

この「分配法則」は、多くのお子さんが抵抗なく使いこなせる計算の工夫の1つです。

分配法則は「3.14円玉」で伝えると理解させやすい

分配法則を理解させようするときに「同じ数をかけているんだから、まとめられるよね」と伝えても、今ひとつ納得感を感じにくいお子さんは意外に多いものです。
「まとめられる」と言われても、「ほんとに?」と感じるわけです。

そんなときには「3.14円玉」で伝えてみましょう。

「今回、日本で新しく『3.14円玉』が発行されることになりました!3.14円のものを買うときに便利に使えるよ!」

と話してあげるのです。

ほぼ確実に

「え〜、3.14円のものなんてないよ!」
「使いにくそう!」

といった反応が返ってきます。

そうなると、しめたものです。

荒唐無稽な話ですが、話が荒唐無稽であればあるほど、子どもは食いついてくるものです。
上記の反応から「食いついてきた」とわかるからです。

「3.14円玉がこっちに3枚、こっちに7枚あるよ。ぜんぶで何円?」

こう聞くと「31.4円!」と返ってくると思います。

「だよね、合わせて何枚って考えた?」

こういうやり取りで「まとめられる」が腑に落ちるんです。

ぜひ試してみてください。

整数で成り立つことが分かれば、最初の計算のように小数や、あるいは分数であっても成り立つことはほとんどのお子さんが納得できます。

計算の工夫をしたがらない子の事情

親御さんが見ていて「工夫すれば楽に計算できるのに、なんでしないんだろう」と歯痒い思いをするお子さんもいます。

計算の工夫をしない、あるいはしたがらないお子さんには「事情」があるんです。

「事情」の1つは、知識がないこと。

先程あげた問題も、分配法則を知らなければ工夫することはできません。
お子さんが、知識がないから計算の工夫をしていないようなら、教えてあげるといいですね。

くれぐれも、知識がないことを責めたりなじったりしないことです。
それがたとえ「塾で習っているはずのこと」だとしてもです。

親としては「塾で習ったでしょう?どうして忘れちゃったのよ!」という気持ちになりますが、そこをなじっても前には進みません。

先程の「◯◯円玉」の話を、できればかんたんな整数を例にしてしてあげるといいですね。

そしてもう一つは、計算の工夫をしたがらないお子さんの「事情」です。

いくつかあるのですが、多いのは「自信のなさ」によるものです。

先程の問題は易しいですが、下記のような問題だと、少し難度が上がります。

3.14 × 7+ 1.57 × 8 + 0.9 × 31.4

3.14と31.4があるのに気づいた時点で「工夫できるんだろうな」ということに多くのお子さんは気づくと思います。

円の面積などの計算を習い、3.14の計算に習熟してきた頃なら、1.57は2倍すると3.14になる(知識1)ことに気づくお子さんも多いでしょう。

でも、実際に作業するとなると、気をつける必要がありますね。

上記のように、1.57は2倍すると3.14になりますから

 3.14 × 7+ 1.57 × 8 + 0.9 × 31.4

= 3.14 × 7+ 1.57 × 2 × 4 + 0.9 × 31.4

と変形すれば

= 3.14 × 7+ 3.14 × 4 + 0.9 × 31.4

となり、「0.9 × 31.4」の部分に関しては

たとえば

2 × 70

の答えと

20 × 7

の答えがいずれも

140

になるように、かけ算の一方の数を10倍し、もう一方の数を10分の1にすると、答えは同じになる(知識2)ことを利用すれば

= 3.14 × 7+ 3.14 × 4 + 0.9 × 31.4

= 3.14 × 7+ 3.14 × 4 + 9 × 3.14

となり、

=( 7 + 4 + 9 )× 3.14

= 20 × 3.14

= 62.8

と楽に計算ができます。

でも、いくつか超えなければならないハードルがありましたね。

こうなってくると「工夫すればいいのは頭ではわかっているけど、工夫して失敗するくらいなら真面目にすべて計算したほうが確実だ」

といった気持ちになるお子さんもいます。

「式を前からすべて、書かれているとおりに計算するのが本来であり、正しいんだ」

と感じているお子さんもいます。

このようなケースでも「どうして工夫しないんだ」と責めることは何の効果も生みません。
ひとまず工夫せずにせんぶ計算してみる、というのであれば、そのままやらせてもいいでしょう。
その結果、答えが間違っていたとしても、とやかく言わないことです。

やるだけやってみて「やっぱり工夫したほうがよさそうだな」という気持ちになったようなら、上記(知識1)(知識2)を1つずつ乗り越えさせてあげましょう。

「塾の宿題がたくさんあるのに、そんなに時間と手間をかけられない」

そんな気持ちに、親御さんはなってしまうこともありますね。。。

でも、こういったことこそ「急がば回れ」です。

いったんは「いずれ解決すること」として、時間のある冬休みの解決テーマにする、といった作戦でもいいでしょう。

着実に前進していきましょう。

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