中学受験情報局『かしこい塾の使い方』

宿題=復習ではない!その日のうちの「思い出す」作業が超重要

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公開: 最終更新日:2026年05月18日

こんにちは。
中学受験情報局 主任相談員の西村則康です。

「毎日、子どもが塾から帰ってくると、すぐに宿題をやらせているのですが、時間がかかって親子ともに疲弊しています」
「一生懸命宿題をやっているのに、テストになると点数が取れません」

このような切実なご相談を、私は日々多くの親御さんからお受けしています。お子さんのためを思い、なんとか宿題を終わらせようと日々奮闘されているお気持ち、痛いほどよくわかります。しかし、良かれと思って塾帰りの疲れたお子さんに「早く宿題を終わらせなさい」と急かしてしまうことが、実は成績が伸び悩む、あるいはご家庭に笑顔がなくなってしまう大きな原因になっているとしたらどうでしょうか。

多くのご家庭が陥りがちなのが、「復習」と「宿題」を同じものだと思い込んでしまうことです。この記事では、宿題に取り掛かる前の「ちょっとしたひと手間」で、知識の定着率を劇的に上げる方法をお伝えします。これを読めば、なぜこれまで宿題に何時間もかかっていたのかが腑に落ち、今日からのお子さんへの接し方や声かけが大きく変わるはずです。

この記事の執筆者

西村則康近影

西村則康 名門指導会創設者

40年以上、難関中学・高校受験指導一筋のカリスマ家庭教師。
「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーションをアドバイス、コーチング手法も取り入れ、親子が心底やる気になる付加価値の高い指導を行う。

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宿題=復習ではない!その日のうちの「思い出す」作業が超重要

「復習」と「宿題」の決定的な違いとは?

多くの親御さんが、「復習=宿題をやること」と勘違いし、塾から帰宅したお子さんにいきなり宿題をやらせてしまっています。塾の先生から「今日授業でやったことをちゃんと復習しておくように」と言われると、真面目なご家庭ほど「早く宿題のプリントを終わらせなければ」とプレッシャーに感じてしまうものです。

しかし、いきなり宿題に取り組ませても、知識が定着していないため当然時間がかかります。分からない問題ばかりに直面し、結果として「解き方を丸暗記して答えを当てはめる」だけの無味乾燥な作業になってしまいがちです。これでは、テストで少し視点を変えられた問題が出た途端に、手も足も出なくなってしまいます。

お子さんには、宿題という演習の前に、まずは「授業を振り返る時間」が必要なのです。

復習と宿題の違いについて明確な定義を設けています。それは、「復習とは『思い出すこと』であり、宿題とは『自分で正確に問題が解けるようになったかを確認する』ための演習である」というものです。

つまり、授業で先生がどんな風に説明していたか、黒板には何が書かれていたか、自分がどんな風に考えたかを頭の中に思い描くプロセスこそが「復習」であり、そのプロセスを経た上で、自力で解けるかどうかを試すのが「宿題」なのです。この順序を飛ばしていきなり宿題に取り掛かるのは、準備体操をせずにいきなり全力疾走をするようなもので、非常にもったいない学習法だと言えます。

なぜ「その日のうち」に復習すべきなのか?

「そうは言っても、塾から帰ってくるのは夜の8時や9時。そこからさらに復習の時間なんて取れません」というお声が聞こえてきそうですね。確かに、塾からへとへとになって帰ってきたお子さんに、そこから本格的な勉強をさせるのは至難の業です。

しかし、宿題のプリントを解くところまではできなくとも、「思い出す作業」だけは、なんとかその日のうちにやっていただきたい確固たる理由があります。

ここで、人間の記憶のメカニズムについて考えてみましょう。当情報局の辻義夫先生もよくお伝えしていますが、「エビングハウスの忘却曲線」というものをご存知でしょうか。これは人間の記憶が時間とともにどう失われていくかを示したもので、人はなんと「1日で半分以上」の記憶を忘れてしまうと言われています。

つまり、授業の翌日や数日後に「さあ宿題をやろう」とテキストを開いた時には、授業で先生が熱弁していたポイントや、自分が「なるほど!」と腑に落ちた感覚の半分以上は、すでに頭の中から消え去ってしまっているのです。その状態で宿題に向かえば、「分からない」「解けない」とつまずくのは当然のことです。

だからこそ、記憶が新鮮な「その日のうち」に、少しでも思い出す作業(=復習)をして記憶を定着させることが不可欠です。その日のうちに5分でも10分でも思い出す作業をしておくだけで、記憶の定着率は劇的に変わり、翌日以降に宿題をする際の取り組みやすさや、問題を解くスピードが見違えるようにアップします。

塾帰りの10分でできる!「家庭内ミニ授業」のやり方

では、疲れ切って帰ってきたお子さんに、無理なく「思い出す作業」をさせるにはどうすればよいのでしょうか。ここでおすすめしたいのが、隙間時間を利用した「家庭内ミニ授業」です。

親は「生徒役」になって教えてもらう

まとまった時間を取って机に向かい、ノートを綺麗にまとめ直すような必要はありません。塾のお迎えの帰り道や、夕食を食べている時の10分から20分程度の隙間時間を活用してください。

やり方は非常にシンプルです。親御さんが「今日は塾でどんなことを習ったの?お母さんに教えて」と、お子さんに質問をするだけです。この時、親が先生のように「これはわかってる?」「あれはどうなの?」と詰問するのではなく、親があえて「生徒役」になり、お子さんに「先生役」になって教えてもらうスタンスをとることが重要です。

子どもは、人に教えようと自分の言葉でアウトプットする時、脳の中でバラバラだった知識が整理され、記憶により強く定着します。

この時、「○○君が授業中にこんなことを言ってて面白かったんだよ」といった、一見授業の理解とは関係のない雑談が混ざっても全く問題ありません。むしろ、友達の発言やその時の教室の雰囲気など、自分の具体的な「体験」に乗せて話すことで、より強固な記憶として残りやすくなるからです。まずは楽しく会話を引き出すことを心がけてください。

「忘れた・わかんない」と言われた時の上手な対処法

「今日は何を習ったの?」と水を向けても、お子さんが「忘れた」「わかんない」と答えるケースは少なくありません。親御さんはこうした返答を聞くと、「あんなに高い塾代を払っているのに、何も聞いていないの!?」と焦ったり怒ったりしてしまうかもしれません。

しかし、お子さんは決して授業を聞いていなかったわけでも、完全に忘れてしまったわけでもありません。多くの場合、漠然と「何を習った?」と聞かれても、どこからどう話せばいいのか「うまく説明できない」状態にあるだけなのです。ですから、ここで親が感情的になってしまうのは逆効果です。

このような時は、親御さんがあらかじめ塾の学習範囲(カリキュラム)を把握して予習しておき、答えを引き出しやすい具体的な質問を投げかけてヒントを出してあげる方法が有効です。

辻義夫先生が提案する、理科の「昆虫とさなぎ」の授業があった日の具体的な会話例を見てみましょう。

お母さん:「今日の理科は昆虫を習ったの?」
お子さん:「うん。」
お母さん:「昆虫のどんなこと?」
お子さん:「さなぎになるとか。」
お母さん:「さなぎにならない昆虫もいるの?」
お子さん:「うん、いるよ。」
お母さん:「どんな昆虫?」
お子さん:「バッタとか。」
お母さん:「バッタはさなぎにはならないんだ?」
お子さん:「うん。」
お母さん:「じゃあ、バッタに似ているコオロギとかキリギリスもさなぎにはならないの?」

いかがでしょうか。このように、「何を習った?」というオープンな質問から、「今日の理科は昆虫?」「さなぎにならない昆虫もいるの?」といった具体的な質問へとステップを踏むことで、子どもは「あ、そういえば先生がそんなこと言ってた!」と思い出しやすくなります。あくまでも「お母さんは知らないから教えてもらう」というスタンスを崩さずに、お子さんの記憶の糸口を見つけるサポートをしてあげてください。

授業を再現できる!復習がスムーズになる「ノートの取り方」

ノートに書き込むべき「4つのポイント」

さて、この「家庭内ミニ授業」をさらにスムーズかつ効果的に行うためには、塾での授業内容を思い出すための「手がかり」が必要です。その最強のツールとなるのが「ノート」です。

お子さんのノートを見た時、黒板の文字がただ綺麗に丸写しされているだけになっていませんか? もしそうだとしたら、それは復習の役には立ちません。授業を再現するためには、単なる板書のコピーではなく、自分自身の思考のプロセスが残されている必要があるのです。

辻義夫先生は、復習の役に立つノートを作るために、以下の「4つのポイント」を授業中に意識的に書き留めるようルール化することを推奨しています。

1. 先生が強調したところ(「ここはテストに出るぞ」と言ったポイントや、色付きチョークで書かれた部分など)
2. 自分自身が疑問に思ったところ(「なぜここでこの公式を使うのか?」など、つまずいたポイント)
3. 問題を考えるときのヒント・糸口(先生がポロリと言ったヒントや、別解へのアプローチなど)
4. 解き方のプロセス(答えだけでなく、どのような順序で考えたかの過程)

これら4つの情報がノートやテキストに書き込まれていれば、家に帰ってノートを開いた瞬間に、「あ、先生はここで大きな声を出してたな」「自分はここで一瞬分からなくなったけど、このヒントで解けたんだった」と、授業の情景や自分の感情が鮮明に蘇ってきます。

「ノートのどこに何を書くか」をあらかじめ決めておくことも大切です。例えば算数なら、「見開きの左側は先生の板書、右側は自分の問題演習用」などとルール化しておけば、進みが速い授業でもテキパキと書き込むことができます。

この「授業を再現できるノート」をもとに、お母さんが生徒役になって「この先生が赤で書いてる所ってどういう意味?」「このヒントからどうやって答えを出したの?」と深掘りしてあげれば、家庭内ミニ授業はさらに実りあるものになります。

その他のノートの作り方、使い方については、「成績が上がる 理解度が上がる 塾では教えてくれないノートの作り方とお子さんへの教え方 まとめ」をぜひご覧ください。

「復習=宿題」という思い込みを捨て、宿題の前にまずは「思い出す」作業を取り入れること。これだけで、知識の定着率は驚くほど変わり、後から取り組む宿題にかかる時間もぐっと短縮されます。ぜひ今日のお迎えの帰り道や夕食の時に、「今日は塾でどんな面白いことがあった?」「どんなこと習ったの?」と、お子さんに明るく声をかけてみてください。その小さなコミュニケーションの積み重ねが、お子さんの成績アップと自信に確実につながっていくはずです。

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