中学受験 子どものケアレスミスをなくすことはできるのか
お子さんのテストの答案を見て「ここでミスさえなければもっと点数がよかったのに」と思ったことがある親御さんは多いのではないでしょうか。
計算ミスや読み間違い、文字の写し間違いなど「ケアレスミス」と呼ばれるものには様々なものがありますが、ミスさえなくなればもっと点数が良くなる、というお子さんは非常に多いものです。
ケアレスミスはただのミスとしておいておくことはできません。
なぜなら、その1問のミスの積み重ねが5点、10点となり、偏差値5-10の違いを生み出していくからです。
そして、その偏差値を元にお子さんも親御さんも今の現状を考えることになり、大きく偏差値が落ちてしまったことに落ち込んだり、不安になったりをすることになっていきます。
4年生はまだしも、5,6年生となると、その差は大きな不安へとつながっていき、モチベーションの低下を引き起こしていきます。
今回の記事では、そんなお子さんのケアレスミス対策として、親ができることについて考えています。
目次
1.まずはミスの原因を突き止める
お子さんにケアレスミスが多いという場合、親御さんとしてはまず、お子さんのミスの原因を突き止めなければなりません。
テストへの書き込みや書いている式、図などをよく見て、どこで間違っているのかお子さんと一緒に検証しましょう。
ミスの原因が分かったら次に対策ですが、その前に一つ気をつけて欲しいことがあります。
それは「どうしてこんなミスをしたのか」とお子さんを責めないことです。
親としてはどうしても「こんなミスさえなければ」という思いから、お子さんをなじりたくなるものなのですが、「どうしてこんなミスをしたのか」と責めても、多くの場合良い効果はありません。
逆にお子さんのモチベーションは下がり、ミス対策どころではない状況になることがほとんどです。
一旦は「どうして?」という気持ちをぐっとこらえて「どうすれば次からこのようなミスがなくなるか」という対策を考えるようにしましょう。
2大ケアレスミス、計算ミスと読み取りミス
ケアレスミスとひとことで言っても、大きく分けて2つの種類があります。
ひとつは「計算ミス」。計算自体は合っているのに、自分の書いた数字の読み間違いから起こることがほとんどです。
焦らずにていねいに字を書くことが、予防方法でしょう。
もうひとつは「読み取りミス」。算数だけでなく全教科共通で見られます。
文章問題で問題文の内容や、最後に「ただし、○○とする」という条件が書いてあるのを読み取れなかったためにミスにつながってしまうというものです。
読み取れなかった子どもにあとで話を聞いてみると、早とちりして問題文を正しく理解できていなかったり、文章の最後に書いてあることは、ただの付け足しで問題に関係ないと思っていることが多いようです。
計算ミスの原因と対策
時々、計算問題のケアレスミスに対して「ちゃんと筆算をせずに暗算で解いてしまったから」と考えるお母さんがいるのですが、これは違います。
簡単な計算まで筆算でさせていては、時間がいくらあっても足りません。
限られた時間で問題を解かなければならない計算問題は、正確性と速度の両方が必要なのです。
そのためには、暗算で解ける範囲を少しでも多くしておくことが大切です。
2ケタ×1ケタの暗算練習を毎日やって、とにかく暗算に慣れることが基本ですが、「分解して計算する」という方法もあります。
たとえば「25×12」なら、まず「12」を分解して「4×3」にします。
そして「25×4=100、100×3=300」となり、答えを導くことができます。
こんな風に、一見暗算では無理そうな計算も、工夫することによって暗算で楽に解くことができるのです。
その他にも、単純ではありますが、筆算の桁を揃えて書くことや、3.14の筆算は必ず3.14を上に書くといった細かいミスをなくすためのテクニックがあります。
塾ではこのような計算テクニックを教えてくれるのですが、家庭学習のときに「ここはあの方法も使えるんじゃない?」などとリマインドをしてあげると、子どもの記憶も少しずつ定着していくでしょう。
読み取りミスをなくす方法
「読み取りミス」は、問題文を最後までじっくりと読むことを習慣づければ防げます。
具体的な方法としては、問題文を読むときに文字の上を鉛筆でなぞるように読むクセをつけるといいでしょう。
実際に線を引く必要はありませんが、鉛筆でなぞることを意識するだけで、読み間違いや見落としを予防することができます。
音読で読み取りミスをなくす
「この問題がわからない」と質問に来た子どもに「では問題を声を出して読んでごらん」と促して音読させるだけで「わかった」となることが多いです。
これは親御さんも経験があることかもしれませんね。
そんなとき親御さんは「ちゃんと読むのよ」とアドバイスされるかもしれません。
しかし、その「ちゃんと読む」が意外にできていないのです。
テストでは子どもたちは問題を黙読しています。
その際、意外に「字面を追っているだけ」になりがちなのです。
問題の情報がうまく頭の中に入ってきていないのです。
これを解決するには、問題を音読させて自分の音声を自分でも聞かせ、文章の理解を促す方法があります。
しかし、テストでは問題文を音読するわけにはいきませんね。
その場合は、動画でもお話していますが、「ひそひそ音読」を行うようにしていきましょう。
自分の頭の中ではしっかりと反芻できていると思える程度の小さな声で読むようにしていき、それが習慣化されていくと、実際には声を出していないけど、しっかりと問題文を反芻できるようになり、正確に問題文を読むきっかけになります。
表や図を使う。単位を意識することで読み取りミスをなくす
また、算数や理科では問題文を読んでわかったことを表や図、式で表すことを塾の先生から必ずと言っていいほど言われています。
この作業をおろそかにしがちなお子さんは読み違いミスを起こしやすい傾向がありますので、塾で習った書き方、問題の解き方を必ず行うことを習慣づけていくようにしましょう。
そして、「すでに答えが出ているのに、さらに計算して間違う」「まだ答えではない途中の計算結果を、答えとして書いて間違う」ということがあります。
「今、この計算で出てきた数値は何か」
「答えとして求められているものは何か」
があやふやになってしまっているのです。
これを避けるには、いちいち出てきた答えに「単位」をつけて考えるという方法があります。
計算で出てきた答えがお菓子の個数で、問題に戻って確認すると求められているのは子どもの人数だとしたら、それは問題の答えではありませんね。
ケアレスミスをなくす第一歩。正確さの優先。
ケアレスミスをなくすためには、まず正確さを優先することです。
速く解かなくてもいいので、正確に解答できるように心がけます。
お子さん本人が理解している問題であれば、ゆっくり解けば正解を導き出すことができる可能性が高いでしょう。
落ち着いてゆっくり解くことで、まずは正確さを手に入れます。
正確にできるようになると、徐々に速さを身につけていきます。
はじめから速く解こうとするとケアレスミスをしてしまう原因になります。
正確にできるようになってから、速く解くという手順です。
これは楽器の練習に似ているかもしれません。
楽器は、まず正確に演奏することが大事です。
正確に演奏できるようになって初めて、速く演奏する練習をすることができるようになります。
はじめから速く演奏しようとしても、正確な演奏にはなりません。
正確な演奏を繰り返しているうちに慣れてきて、正確で速い演奏ができるようになるのです。
ケアレスミスは正確な作業を何度も繰り返すうちに、解消されていきます。
正確に解答して、段々と速さも手に入れていきましょう。
「小問1問に書けられる時間は3分」を目安に声をかける
高学年になると問題の難易度が上がるので、いくら解答とその解説書があっても、お母さんやお父さんが指導するのは難しいでしょう。
だからといって、すべてを塾任せにしなければならないというわけではありません。
ご家庭でできることもあるのです。
子どもがある問題の解き方がわからず立ち往生してしまっているときは、時間に注目してください。
1分以上手が止まっているのなら「お手上げ状態」です。
お子さんはいろんな記憶の引き出しを開けて知っている解法を探っているのですが、見つからなかったのでしょう。
わからない問題にいつまでもこだわっていては先に進めません。
ひとつの問題に時間をかけすぎてそのあと時間が足りなくなり、焦って解いてケアレスミスをしてしまうのはもったいないことです。
子どもの手詰まり状態が1分以上続いたら、さらに少し待ってあげましょう。
3分ぐらいしてからさりげなく「何を書けば解けそうな気がする?」と声をかけてあげてください。
3分というのは、中学受験の試験の小問1問にかけられる最大の時間です。
実際の解き方を教える必要はありません。「何を書けば解けそう?」というひとことで子どもが一歩進めることもあります。
それでも解けない場合は「明日、先生に質問してみようか」と塾の先生にバトンタッチするといいでしょう。
自分で問題を解いたという成功体験も大事ですが、子どもに熟考させるのは3分くらいが限界です。
ひとつの問題に時間をかけすぎて時間配分がうまくいかなくなり、本来なら解ける問題のケアレスミスを防ぐためにも、わからない問題に固執しすぎない習慣を身につけさせてあげましょう。
一人で勉強する時にもミスをしない子に
親子でテスト直しをしたり間違った問題の解き直しをした時には、ミスの原因に気づき、再度注意しながらミスなく解けるようになっても、後日一人で勉強している時にはまた同じようなミスをしている、ということはよくあります。
ここでも「前にもやったじゃない!」という気持ちをぐっと抑えて冷静に考えましょう。
一緒に解いた時にはできていたのに、一人で宿題をやっている時には「早く終わらせたい」という気持ちがあったのかもしれないし、単に前のクセが出てしまっただけかもしれません。
問題への取り組み方を変えるということは、習慣を変えるということです。
習慣を変えるのは簡単なことではありません。
動画でもお伝えしている通り、親御さんも少し「長期戦」になることを覚悟して取り組んでみましょう。
テストでもミスが少なくなれば安心
家庭学習ではミスが少なくなってきた、と感じていても、いざテストになるとやはり前と同じようなミスを繰り返すことがあります。
ここでも親御さんとしては「あんなにやったのに、なんでミスがなくならないんだろう」という気持ちになってしまいがちですが、制限時間のあるテストに取り組んでいる時には、普段の勉強でできているようにできないことも多々あります。
このような場合も親御さんはできるだけ感情的になることを避けて、テストへの取り組み方などを一緒に考えてみましょう。
例えば算数の模試では大問1から8くらいまで並んでいることも珍しくないですが、うしろの大問ほど難問であることが多いものです。
テスト前半でいかにミスをなくすかということに重点を置いて受けるよう、お子さんに提案するのもよいでしょう。
大問1〜3あたりはやさしい問題が多いですから、ここまでは完璧に、4以降の問題については得意な問題は完璧に、苦手な問題は(1)だけでも正解になるように取り組む、と言ったテスト戦略を親子で考え、試してみるのも良いでしょう。
いずれの段階でも、最大のポイントは親御さんが感情的にならず「次の一手」を行動に移すことです。