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中学受験の算数 合格できる勉強法

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中学受験 2017年04月19日10時15分
  • 中学受験の算数とは

中学受験情報局「かしこい塾の使い方」がメルマガ会員を対象に実施したアンケート(2016年12月実施)の結果によると、中学受験について考え始めたのが「小学校入学以前」という回答が37%もありました。

そして、中学受験の勉強というと、何よりも算数の難しさが話題に上がることが多いのですが、いったいどれくらい難しく、どのような勉強をしていけばいいのでしょうか。

■中学受験の算数って、学校の算数とどう違うの?

 中学受験に挑戦するとなると、進学塾に通うことが「通説」のようになっています。

学校の算数の勉強だけでは中学受験に対応できないのでしょうか?

この疑問への答えは、残念ながら「学校の算数だけでは中学受験には対応できない」です。

学校の算数では、割合や図形といった「通常の算数の単元」ではない「特別な単元」で和差算や植木算といった、中学受験の算数でも扱うような問題の考え方を学ぶことがあるのですが、中学受験の算数の勉強では、そのような文章題(「特殊算」と呼ばれます)だけでも20ほどもあるのです。

具体的には

つるかめ算・和差算・ニュートン算・過不足算・方陣算・植木算・年齢算・差集め算・植木算・仕事算・倍数算・消去算・損益算・相当算・分配算・旅人算・時計算・通過算・流水算

などです。

和と差・速さ・割合に関するものが多いですが、これらの類題だけでも非常に多く、解き方や考え方のバリエーションも豊富です。

これを学校の算数で網羅することは不可能で、塾に行く行かないにかかわらず、学校の勉強以外の算数の勉強を大量にしなければ中学入試には対応できません。

学校の算数では、割合を5年生で学習します。

割増しや割引きの考え方についても学習するのですが、次のような問題が中心です。

【例題】

Aさんは3200円のゲームを2割引きの値段で買いました。いくらで買ったでしょうか。

3200円の2割引きの値段を計算しますから、式は

3200 × ( 1 - 0.2 )

ですね。計算すると答えは2560円とわかります。

学校の算数では、割合の学習の中心は

・ もとにする量

・ 比べる量

・ 割合

がどんなものか、そしてこの3つの値をそれぞれ計算式を使って出すことができるかが最大のポイントです。

一方、中学受験の問題を見てみましょう。同じく割合の問題です。

【例題】

ある商品を原価の3割増しの定価で120個売ったのですが、残り40個を定価の2割引きで売ったので、利益は18800円となりました。この商品の原価は1個いくらでしょうか。

市販の中学受験用テキストでは、以下のように解説されることが多いと思います。

1個の原価が1だとすると、定価が1.3で利益は0.3となります。

この定価で120個売ったので、利益は

0.3 × 120 = 36 となります。

割引後の値段は

1.3 × ( 1 - 0.2 ) = 1.04 となり、1個あたりの利益は0.04です。この値段で40個売ったから利益は

0.04 × 40 = 1.6 です。

利益の合計は

36 + 1.6 = 37.6

で、これが18800円となりますから、1個あたりの原価は

18800 ÷ 37.6 = 500円


・・・ずいぶん様子が違いますね。

割合に関する理解が深まっていないと、途中で混乱してしまいそうです。

このように、学校で習う算数を完全に理解した上で、さらに・・・というのが中学受験の算数で求められる力なのです。

■低学年のうちに算数でしておけばいいことは?

上記のようなレベルの問題を実際に塾で勉強するのは、小学校5年生、6年生です(一部の塾では4年生でも扱います)。

では、早くから割合を教えておけば高学年になってから楽なのでは、と「先回り」して特殊算を教えてしまうような塾もありますが、多くの場合うまくいきません。

なぜなら、割合のような抽象的な概念をうまく理解できるようになるのは、いわゆる「9歳の壁」(9歳から10歳くらいで多くの子どもは抽象的なことがらの理解がうまくできるようになる)を越えてからです。

つまり早い時期から「やり方」だけを教えても、形だけ覚えて真似するだけで、しっかり「腑に落ちる」ということがないのです。

下手をすると「やり方をまる覚えして当てはめるのが勉強」という悪い癖がついてしまい、逆に高学年で伸びない子になってしまいます。

低学年のうちから「先取り」していて高学年になって成績が急降下、というお子さんの原因に多いのが、この「やり方をまる覚え」です。

低学年で塾に通わせている場合、テストで「結果」を出すために知らず知らずのうちにこうなってしまう場合がありますから、お母さんが気をつけてあげてくださいね。

では、高学年でのびる算数の素地をつけるにはどうすればいいでしょうか?

中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員の私たちが口を揃えるのが「読み・書き・計算」をしっかりやっておくのが大切ということです。

算数に関しては「計算」ばかりに目が行きがちですが、「読み」「書き」も重要です。

わからないと思っていた問題を音読しただけで、読み落としていた問題条件に気づいて解くことができた、という経験がある受験生は多いのです。

「書く」ことに関しては、上記の「特殊算」を考えるときの線分図などの図、図形の問題では問題の図形を大きく見やすく書けるか、というところにつながってきます。

大きく見やすい図を書けるお子さんは、算数の成績が伸びやすいものです。

「計算」に関しては、塾に入る前に、学校での1学年上くらいの計算まで、市販のドリルや問題集などでやっておくと安心でしょう。

私も製作に協力させていただいた、西村則康先生の「つまずきをなくす 算数 計算」シリーズは、ひっ算のしかたなど詳しく説明していて、お父さん、お母さんが見ながら教えてあげられる作りになっています。
入塾前の計算練習にいいかもしれませんね。

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そして計算だけでなく「数に関する感覚」をしっかりつけておくことが大切です。

どういうことかというと、「5」という数字を見たときに、何かが5つある様子が映像として頭のなかに浮かぶようにということです。

「そんなの当たり前じゃないか」と大人は思うのですが、小さい頃から「紙の上での計算」ばかりやってきた子の中には、意外に「5は5番目というだけじゃなく、5つの『量』だ」という感覚が希薄な子が多いのです。

小さなお子さんのお母さんには、ごく小さい頃はおはじきや積み木をいっしょに数え、お子さんが10まで数えられるようになり、「10は10個なにかがあること」と認識できるようになったと感じるようになったら「あわせて10」ゲームをお勧めしています。

【「あわせて10」ゲームとは】

簡単な遊びです。お母さんが「7と?」と聞いたら、お子さんが「3」と答える、というやりとりをゲーム感覚で行います。

ふとした時、お買い物の最中とか夕食のときに、突然始まったりします。

この習慣は小学校に上がるまでだけでなく、学年が上がっていっても「合わせて100」「合わせて1000」ゲームとして発展させていくといいと思います。

「組み合わせを全部覚える」のではなく、「47と?」と聞かれたとき「47は50より少し小さな数だから、50より少し大きな数を足すと100になるぞ」という感覚を養うのが目的です。

数を「量」としてとらえる感覚が希薄な子は、

7 + 5 のような計算で

5 = 3 + 2 

だから

7 + 5 = 7 + 3 + 2

だから

10 + 2 = 12

(小学校ではこう習うと思います)

という感覚に馴染めず、「8,9,10,11,12」といつまでも指折り数える様になってしまうことがあります。

「数は順番」という感覚だけが強くなってしまっているのです。

ぜひ小学校に上がるまでに(上がってからも)「数は量」という感覚を育んであげてください。

お子さんが高学年でもときどき「68と?」と声をかけてみてください。

「32」と即座に返ってきたらOKです。

  • 中学受験の算数ができるようになるには

■塾通いは必須?どんな塾がいいの?

特殊な場合を除いて、中学受験をするなら塾はほぼ必須だと思います。

通塾を始める時期ですが、私たちがお勧めしているのが3年生の2月。

学校で4年生に上がる直前ですが、塾の新年度は2月に始まるので、新4年生としての入塾です。

理由は簡単で、ほとんどの大手進学塾のカリキュラムが、4年生〜6年生の3年間で中学受験に必要な知識や解法のすべてを学習するという内容になっているからです。

年齢的にも上記の「9歳の壁」を超えるころにあたりますから、中学受験の勉強を始めるには「ちょうどよい」年令なのです。

塾選びの視点はいくつかありますが、多くのご家庭では

・ 通塾の問題(近くに教室はあるか・通塾路の安全性はどうか・送迎などがあるかなど)

・ 塾のタイプ(我が子の学力レベルに合っているか・志望校のレベルに合っているか・我が子の志望校の対策を得意としているかなど)

・ 塾の力量(志望校の対策がしっかりできる塾か・カリキュラムやテキストはしっかりしているか・講師のレベルや評判はどうかなど)

といったことを判断基準として選ばれるようです。

都心部やターミナル駅など、複数の受験塾がひしめいている場所もありますが、最寄りで選べる塾は1つか2つしかない、という状況の方も多いでしょうから、実際には「選び方」よりも「使い方」を工夫することになるかもしれませんね。

各塾の算数の授業の特徴を簡単に紹介しておきましょう。

【サピックス】

サピックスの算数にはA授業とB授業があります。A授業は前回の復習内容、B授業がその週に新しく習う単元の授業です。

メイン教材は毎週配布されるプリント教材「デイリーサピックス」ですが、5年生、6年生になると「デイリーサポート」という問題メインのプリント教材が使用されます。

授業は、講師が一方的に生徒に教えるというスタイルではなく、皆でいろいろな解法を考えていくという「討論型」の授業です。

内気なお子さんの場合、その雰囲気についていけるかと心配されるお母さんもいるようですが、サピックスはホームページ内の説明で「先生や仲間の発言を聞くことも大切」と説明しています。

宿題は、クラスの担当から細かく指定されます。

デイリーサポートは、プリントの表側と裏側が全く同じ問題になっていて、授業で解いた問題をあらためて「一から」解いて、理解できているか、自力で解けるかをチェックするといった使い方で宿題を進めます。

サピックスの算数で注意すべきこととしては、「塾で習ったやり方」を無条件に当てはめて正解を出すのではなく、塾でたどった思考の過程をしっかり再現しながら解くということです。

そのための「討論型授業」でもあるのです。

大切なのは「正解を出す」ことでななく、塾でみんなと考えた筋道を思い出し、納得した上で解くことだということです。このことを忘れると「確認テストでは点が取れるけど、組分けテストなどの『実力テスト』では急に成績が下がる」という状態になってしまいます。

【日能研】

メインテキストは授業で使用する「本科教室」、そして演習用の「栄冠への道」です。

「本科教室」は1回分の授業が「学びのとびら」「考えよう」とそれに続く類題、応用問題など、そして「オプション」から構成されています。

「学びのとびら」では、できるだけ子どもたちに身近な話題にこれから習う単元を落とし込み、子どもたちがスムーズに新しい単元の学習に取り組めるよう工夫がされています。

「考えよう」で先生とともに新しい単元学習を進め、その上で類題や演習問題を解いて自力でできるようになったか確認します。

「本科教室」で演習しなかった問題、そして「栄冠への道」から宿題が出されます。

「栄冠への道」は「本科教室」と完全に連動しているので、授業でわかりにくかったところを「栄冠への道」でじっくり考えてみる、といった使い方ができます。

5年生までは隔週、6年生になると基本的に毎週、カリキュラムテスト(通称カリテ)という復習テストが行われ、その結果で席替えが行われるのも日能研の特徴です。

カリテでは得点、偏差値とともに10段階の「評価」が与えられます。

この席替えや評価がモチベーションのもとになっているというお子さんも多いのです。

日能研の算数のテキストは非常によくできているのですが、使いこなしていない子が多いのも事実です。

「本科教室」の「オプション」は3段階に分かれていて、「理解」では単元理解ができているか、「活用」ではそれを自分で使いこなせているか、そして「説明」では学んだことを誰かに説明できるくらい習熟しているかを確認することができます。

しかし、特に中位クラスより下のクラスの子は活用できていない子が多く「宿題に指定されている問題をやったら塾の勉強は終わり」という子が多いのです。

逆に、自分なりに使い方を工夫して、テキストをガンガン使いこなすお子さんは算数の力がどんどんつき、成績がぐんぐん上がります。

【四谷大塚】

四谷大塚がメインで使う算数のテキストが「予習シリーズ」です。

2012年に改訂され、それにともなって非常に進度の速いカリキュラムに変わっています。

分数のかけ算やわり算、割合などまで4年生で習い、5年生の終わりまでに受験に必要なすべての単元の学習が終了します。

6年生は総復習と受験に必要な対策に特化するという新カリキュラムは、サピックスにも匹敵する進度です。

授業は週2回。予習してくる前提で行われる1回目の授業と、1回目の内容の演習が中心の2回目の授業です。

宿題は予習シリーズと必修副教材の「演習問題集」などから、1回目の授業の時に出されます。

2回目の授業の宿題は、復習テストにあたる「週テスト」の準備です。

四谷大塚で気をつけたいのは、なんといってもその難度の高さです。

4年生のテキストが完ぺきにできたら、そこそこの中堅校くらいなら合格できるくらいの力がつくほどです。

塾通いを始める4年生の学年で算数嫌い、塾嫌いにならないよう、毎週の授業の内容が身についているか、週テストだけでなく、月1回の「公開組分けテスト」の内容と結果を親がチェックしておく必要があります。

【早稲田アカデミー】

早稲田アカデミーは、四谷大塚準拠の塾ですが、そのシステムに独自の学習システムを組み合わせているところが特徴です。

四谷大塚の項目で「算数のテキストが難しくなった」と書きましたが、予習シリーズよりも難度の低い問題を中心としたオリジナルの「Wベーシック」というテキストを用意し、下位クラスを中心に使用するといった工夫がされています。

「早稲アカは宿題が多い」と言われますが、正しくは「作業系の宿題が多い」ということです。

難問を理解するのは塾で先生に聞いて済ませ、できるようになった問題の「演習」を数多く家庭で、といった宿題の出され方のようです。

それでも多くてこなしきれない、というお子さんの声も多く、校舎によっては講師に申し出れば「取捨選択」してもらえます。

「作業系」の宿題で大きく時間を取られると合否結果にも関わるので、しっかり現状を伝えれば無理を聞いてくれることが多いようです。

そういった意味でも、話を聞いてくれる講師が多く、面倒見が良い塾です

ただ作業系の宿題があまりに多いので、中位〜下位のお子さんは「よくある解法パターンの問題はできるけどちょっとひねった問題になると途端に・・・」とならないよう、「復習」と「演習」をしっかり区別し、塾で習ったことをもう一度ノートを見ながら思い出す「復習」の時間をとった上で、宿題という「問題演習」をするよう心がけなければいけません。

【浜学園】

関西で圧倒的な合格実績(2017年度 灘中90名・甲陽学院中83名・神戸女学院中63名・洛南校附属中116名・東大寺学園中105名・西大和学園中180名など)を誇る浜学園。

算数に強い塾としても定評があります。

浜学園の算数は「復習主義」というスタイル。

授業で習った単元を家庭で復習、宿題演習することで理解を深めるというものです。

5年生からは算数は週2回授業があります。

1st授業は「導入授業」で、新しい単元を習います。

2ndは演習中心の授業になります。

この2回の授業と家庭学習で理解を深め、次週の「復習テスト」に備えます。

高学年の教材は「テーマ教材」(おもに1st授業で使用)と「演習用教材」(おもに2nd授業で使用)があり、クラス別の細かな学習計画表があり、宿題もあらかじめ決められています。

復習テストの時間に講師によって宿題点検が行われますが、講師によってチェックの厳しさはまちまち。

良くも悪くも家庭の力に委ねられているようなところがあります。

そのため、浜学園では「中だるみ」になりやすい5年生の時期に、宿題が「形だけ」になってしまわないよう、復習テストだけでなく月1回の「公開学力テスト」の結果も見ながら、実力が順調についているかどうか親がチェックする必要があります。

 

■中学受験の算数 デキる子の勉強法とは

では、中学受験の算数の勉強で、どんどん力をつけて順調に伸びていくお子さんは、どのような学習法で勉強をしているのでしょう。

【まずは「ちゃんと数える」ことができるように】

まずは「間違いなく数えることができる」力が算数の基本となる力の1つです。

入試問題では、まず数え出させて、手を動かして数えることによって決まりや法則に気づかせる、というタイプの問題が多いのです。

間違いなく数えられるお子さんは、正解に結びつく「規則性」に気づきやすいというわけです。

お子さんがまだ小さいとか低学年なら、ぜひ「間違いなく数える」練習をさせてあげてください。

間違いなく数えるには、集中力というか、「こらえ性」のようなものが必要です。

すぐにあきらめて投げ出してしまうようだと、高学年になったときに必要以上に「公式」に頼るようになります。

では「こらえ性」はどうやってつければいいのかというと、1つの方法は、早い段階で好きなことに没頭する時間をとってあげることです。

好きなことなら、子どもは没頭=集中します。

この経験が、算数に限らず学習への没頭につながります。

逆説的ですが、その意味では早い時期から「勉強漬け」にしないことです。

繰り返しになりますが、高学年の算数を低学年で先取り学習しても、結局は無駄になる可能性が高いのです。

それよりは、2年後3年後にのびる素地を育ててあげるのが、実は賢い選択です。

お買い物にも連れて行ってあげましょう。

決まった金額を持たせて、コンビニで自分のほしいお菓子を買う、という経験もいいかもしれません。

私が子どもだったら、必死で頭をフル回転させてたし算や引き算を繰り返し、「一番満足度の高いお買い物はどれか」考えるでしょう(笑)。

不思議に思ったことを書き留めたり(それ用のノートを作っている子もいます)、興味のあるものを収集するのもいいことです。

大人が見たらガラクタにしか見えないようなものでも、収集することには意味があるのです。

子どもたちは収集したものを、並べたり、同じ特徴を持つグループに分けたり、いろいろ「操作」します。

この「操作」によって、違いを発見したり、比べたり、視点を変えてみたりという練習ができるからです。

【4年生・5年生で「算数はおもしろい」と感じる状態が理想】

Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさんの5人から、2人選ぶ方法は何通りありますか?

上記の問題を見たら、お子さんはどうするでしょうか?

「場合の数」は、単元としては高学年向きのものですが、このくらいの問題だと低学年のお子さんでも数えてできそうです。

順序よく

「AとB、AとC、AとD、AとE」

これで「Aと誰か」の組み合わせは全部出たから、あとは

「BとC、BとD、BとE」

「CとD、CとE」

「DとE」

これで全部数え出せましたね。

全部で10通りありました。

4年生くらいでちゃんと数えられたらたいしたものです。

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のように書き出すお子さんもいると思います。

塾でもこういった書き出しは、場合の数の最初の段階で行うはずです。

ここで初めて

「4 + 3 + 2 + 1 = 10 でもいいよね。」

と聞くと(あるいは自分で気づいて)、「はは〜ん、なるほど。」

となるわけです。

「なら、5人じゃなくてもっと人数が多いときでも同じように考えれば」

「100人だったら 99 + 98 + …この計算も工夫できそうだぞ」

「数字のカードを並べる問題にも応用できるぞ」

これが「具体から抽象」の1つの例です。

先に述べましたが、これがうまくできるようになるのが小学校の中学年〜高学年。

高学年で算数ができないお子さんには、この「つなぎ」がうまくいっていない子が多いのです。

「5人から2人選ぶときは、4 + 3 + 2 + 1」

と覚えても、そこに算数の楽しさはありません。

5 × 4 ÷ 2 = 10

(1人目の選び方が5通り、その5通りそれぞれに対して2人目の選び方が4とおりあるから 5 × 4 、ただし「AとB」「BとA」といった重複が出るから ÷2)

と解くこともできますが、これも「どうしてそうなるのか」があやふやなまま使っていても応用できない、というよりは、楽しくないでしょう。

「この『考え方』を使えば、もっと難しい問題にもチャレンジできるぞ」

というワクワク感が、算数の醍醐味です。

数学に比べると、算数の大きな楽しみは「手持ちの拙い道具を使って、難解な問題を解き明かす」ところにあります。

弱者が知恵と工夫で大ボスを倒すようなワクワク感があるのです。

受験勉強の中で、この楽しみを手放してしまうと、算数の勉強は「苦行」になってしまいます。

塾の宿題は多く、ともすれば算数の勉強も「作業」に陥ってしまいがちです。

親の方も「宿題できたの?」「復習テストの結果は?」となりがちですね。

日々宿題に追われる中で、お子さんが算数をしっかり楽しめているか、気をつけて見てあげたいところです。

高学年からでも遅くないので、家庭学習の中に「どうしてその解き方で解けるの?」という質問を入れることでお父さん、お母さんが生徒役になってお子さんに説明してもらい、お子さんの算数アタマを活性化させてあげましょう。

■わからない問題、難しい問題はどうすればいい?

とはいえ、中学受験の算数ですから、難しい問題、わからない問題も出てくるでしょう。

親であるお父さん、お母さんにもわからないようなレベルの問題や、解くことはできるけどお子さんにうまく説明できない、というような問題も、高学年になると出てきます。

下手に教えて「塾の解き方と違うから余計にわからなくなった」となってしまう恐れもあります。

そんなときは、誰かに質問です。

できれば塾の担当の先生に聞くのがいいですね。

でも、お子さんに「わからない問題は先生に質問してきなさい」と言っても、なかなかうまくいかないことが多いのです。

「塾で質問できないので」と、個別指導教室や家庭教師を利用するご家庭もあります。

先生が忙しそうにしているので質問しづらい

恥ずかしい

「こんな問題もわからないのか」みたいに思われるのでは・・・

後ろに何人も並んでいるので、納得できるまで聞けない

お子さんもいろんなことを考えてしまうようです。

そこで、「最初の一歩」は親が踏み出させてあげましょう。

塾に連絡して担当の先生に事情を伝え、いつなら質問させてもらえるか、聞いてあげるのです。

塾の先生も、教え子がわからなくて困っているのであれば、しっかりわからせてあげたいと思っているものです。

ただ、授業前後の時間はバタバタしているというのも事実です。

事情を話せば、「では◯◯時に塾に来てください」などと質問のチャンスをくれると思います。

あるいは、今のお子さんにとって、分からなかった問題がどのくらい重要なのかを教えてくれるかもしれません。

いま絶対わかって、できるようになっておくべき問題なのか、今はできなくても先々取り返すチャンスがあるのか、といったことを質問してみてもいいかもしれません。

先生によっては

今絶対にわかって、できるようなっておきたい問題・・・A

できればわかっておきたい問題・・・B

今はわからなくても大丈夫という問題・・・C

というような優先度をつけてくれたりもします。

ちなみに私たちがこのようなご相談にお答えすることもあります。

なお、インターネットの掲示板やYahoo!ジャパンの「知恵袋」などに問題を投稿して解き方を教えてもらっている方もいるようです。

不特定多数の方が答えるので、決してすべてが正解やわかりやすい説明というわけではないようですが、経験者や塾関係者が答えている例もあるようです。

以上、中学受験の算数についてご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?

中学受験に限らずですが、正しく学んでいけば、算数は本来楽しいものです。

特に、中学受験の算数のようにレベルが高い問題になると、解き明かす楽しさは学校の算数の問題とは比べものになりません。

ぜひお子さんが算数を楽しみ、中学受験を楽しく乗り切れるよう、導いてあげてくださいね。

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主任相談員の辻義夫
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