国語のテスト直し、正解・不正解より大切なこと。「客観的に読む力」と「解く技術」を育てる親子の対話術
こんにちは、中学受験情報局・主任相談員の西村則康です。
みなさん、国語のテスト直しはどのようにしているでしょうか? 「漢字の間違いを直して終わり」「解説を読んで納得して終わり」になっていませんか?
実は、国語のテスト直しにおいて、点数やマルバツの結果だけに注目するのは、非常にもったいないことです。
今日は、入試本番で「初見の文章」を読み解き、確実に得点するための、本質的なテストの振り返り方についてお話しします。
この記事の執筆者

西村則康 名門指導会代表
40年以上、難関中学・高校受験指導一筋のカリスマ家庭教師。
「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーションをアドバイス、コーチング手法も取り入れ、親子が心底やる気になる付加価値の高い指導を行う。
目次
第1章:【生活体験】台所は「算数脳」を育てる最高の教室
まず、大前提としてお伝えしたいことがあります。 日々のテストや模試は、それ自体がゴールではありません。すべては「入試当日のための練習」です。
ですから、テスト直しで最も大切なのは、「この問題が解けたか?」ということよりも、「本文を客観的に把握できていたか?」そして「正しい手順で解こうとしていたか?」を確認することです。
まずは「読む力」:主観ではなく客観で読めているか?
中学受験の国語で求められるのは、お子さんの「感想」ではありません。 書かれていることを、書かれている通りに受け取る「客観的な読解力」です。
テストが返ってきたら、マルバツを見る前に、まずはお子さんが「正しく読めていたか」を、文章の種類ごとに確認してあげてください。
説明文の場合
筆者の主張(要約すべき部分)を正しく捉えられていますか? 細かい具体例に惑わされず、「つまり何が言いたいのか」を要約できていますか?
物語文の場合
登場人物の感情を「自分の主観」で読んでいませんか? 「自分ならこう思う」ではなく、「本文の描写」から論理的に感情を特定できていますか?
物語文の場合
筆者の「体験談(エピソード)」と、そこから導き出される「主張(メッセージ)」を区別できていますか?
まずは、これらが「読めていたか」を確認すること。これがテスト直しの第一歩です。
次に「解く力」:正しいアプローチができているか?
「文章は読めているのに、なぜか点数が伸びない」 そんなケースでは、**問題を解く際のアプローチ(作業手順)**に課題があることが多いです。
テスト直しでは、お子さんの問題用紙を見て、以下の「作業」ができているかを確認してあげてください。
選択問題:選択肢を「分解」して評価しているか?
選択肢の文を、一文丸ごと読んで「なんとなくこれが正解っぽい」と選んでいませんか? 入試問題の選択肢は、前半は正しいけれど後半が間違っている、というような「ひっかけ」が多く作られています。
正しいアプローチは、選択肢の文をスラッシュ(/)で2つ以上に切り、前半と後半それぞれに「◯・✕・△」をつけていくことです。 「ここは合ってるけど、ここは本文に書いてないから✕」というように、書かれているコトを細かく評価できているかチェックしましょう。
記述問題:本文から「材料」を探せているか?
記述問題で、一生懸命「自分の言葉」だけで文章を作ろうとしていませんか? 実は、中学受験の記述問題の多くは、本文の中に答えの材料(キーワード)が落ちています。
記述の点数は、無理にオリジナリティを出そうとせず、本文の中から必要な言葉を抜き出し、それをつなぎ合わせるだけでも十分に取れます(合格点がもらえます)。 「答えの要素を本文から探そうとした痕跡があるか?」を見てあげてください。
「教える」のではなく「語り合う」テスト直し
では、どうすればこうした力が育つのでしょうか。 解説を読み聞かせる必要はありません。
まずは、「今回の文章、どんな話だったの?」と聞いてあげることから始めてください。
そして、お子さんの説明に対して、 「お母さんは、ここはこういう意味なんじゃないかなと思ったよ」 「〇〇ちゃんはどう思う?」 「なるほど、そういうふうにも感じるんだね」
という形で、あくまで「一つの読み物」として興味を持ちながら、話し合う時間を作ってください。
ここで大切なのは、親の解釈を押し付けないことです。 「正解はこうでしょ!」と決めつけるのではなく、 「本文のここに『涙をこらえた』って書いてあるから、悲しいだけじゃなくて、悔しさもあったんじゃないかな?」 と、本文を指差しながら対話をすることで、お子さんは「あ、自分勝手に読んじゃいけないんだ。本文に根拠を探さなきゃいけないんだ」と自然に気づいていきます。
テスト直し上手は「読み方」を育てる
それでも、なかなか本文に対する意識が変わらないお子さんもいます。 「国語は苦手、文章を読むのも嫌い」という子もいるでしょう。
先ほどお伝えした「選択肢に印をつける」「本文から抜き出す」といったテクニックも有効ですが、それを使う土台として、 「主観と客観の区別」 「要約する力」 「主張と例示の切り分け」を本文に線を引きながら捉えるといった能力が育っていなければ、学年が上がるにつれて成績は頭打ちになります。
たとえ文章を読むのが苦手な子であっても、テスト直しの時間の対話を通じて、「正しく読む回路」を育てていくことが、遠回りのようで一番の近道なのです。
さまざまな「感情」と「視点」を経験する場として
もう一つ、テスト直しで大切にしてほしい視点があります。 それは、テストに出てくる文章を通じて、さまざまな「感情」や「視点」を経験することです。
中学受験の入試問題には、小学生には馴染みのないテーマや、大人でも読み解くのが難しい複雑な心情を描いた文章が出題されます。 (例:戦争体験、老いや死、複雑な嫉妬心など)
これらを読み解くためには、これまで読んできた文章から、「世の中にはこういう考え方があるんだ」「こういう時には、こんな複雑な気持ちになるんだ」という経験値を貯めておく必要があります。
なんとなくでも構いません。 テスト直しで文章を読み返すことで、 「この主人公、口では強いこと言ってるけど、本当は寂しかったんだね」 「昔の人は、こういうことを大切にしていたんだね」 と、自分以外の視点や感情を疑似体験すること。
この積み重ねが、入試本番でどんな文章が出ても、俯瞰(ふかん)的かつ客観的に読むための「強力な支え」になります。
国語のテスト直しは、単なる答え合わせではありません。 親子で文章を味わい、「世界を見る目」を広げるチャンスだと捉えて、ぜひ豊かな対話の時間にしてみてください。

