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初見の問題にひるまず取り組むお子さんにするために親ができること

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公開: 最終更新日:2023年02月15日

「4年生のときまでは理科が好きだったのに、5年生になって苦手になってしまって…」こんなお話をお母様方からよくお聞きします。
どうして4年生まで得意だった理科が、5年生になって急に苦手になってしまうのでしょうか。

4年生までは「暗記」で乗り切れる

4年生までに塾で習う理科は、ほとんどが暗記分野といわれるものです。
動物や植物などの生物分野、星・月・太陽などの地学分野が中心で、化学や物理分野も覚えてしまうことで乗り切れる単元がほとんどです。

物理分野である電流も、「豆電球とかん電池」というタイトルで、「豆電球1つ、かん電池1つのときに回路に①の電流が、乾電池を直列で2個に増やすと電流が2倍流れる」といったことを覚えることで乗り切れます。
この時点で上記のことを「覚えている」のは悪いことではないのですが、「乾電池を直列で増やすと電池の『パワー』が強くなるんだ」というイメージを持っておらず「丸覚え」になってしまうと、高学年になってから困ることになります。

4年生のうちは他の教科の宿題も多くはないですから、暗記にかける時間の捻出もしやすいのです。
ところが、5年生になると、大手の進学塾では計算分野の学習が多くなります。

5年生になって急に理科が苦手になってしまうお子さん(と親御さん)のほとんどは、「理科は計算しなくても点が取れる科目」と固く信じているので、水溶液の計算や力学の計算のときも、「塾で習ってきたことをいかに覚えるか」に重点を置いて学習します。
そこで重宝するのが「公式」です。

「塾でおもりの重さの求め方を習ったでしょう?公式を言ってごらん。」となるわけです。
もちろん公式にはそこへ至る原理などがあるはずで、塾ではそのことも習っているはずです。
しかし、5年生になると宿題も多くなり、ついついその「原理」を復習することをすっ飛ばして、「公式」の暗記から入ってしまうのです。

こうなると「公式」が一人歩きを始めます。「公式を覚える→当てはめて答えを求める」という学習に陥りますから、学習に「考える」という要素が乏しくなり、楽しくなくなってきます。
こうして「理科嫌い」のお子さんが誕生していくのです。

こうなってしまうと、パターン問題への対応力はあっても、いわゆる「初見」の問題に対応できないということになります。
「復習テストでは点が取れるのですが、実力テストでは点が取れなくて…」というお悩みのほとんどはこのパターンではないでしょうか。

さて、「暗記分野」と思われがちな生物分野の中にも、計算問題は存在します。たとえば、こんな感じです。

代表的な生物分野の計算問題

【問題】ある草原で、モンシロチョウを120匹つかまえ、すべてのモンシロチョウに印をつけました。120匹のモンシロチョウをすべて放し、翌日、また同じ草原でモンシロチョウを100匹つかまえました。印がついているか確認したところ、つかまえた100匹のうち20匹のモンシロチョウに、昨日つけた印がついていました。このことから、この草原には約何匹のモンシロチョウがいると考えられますか。

生物に関する出題ですが、暗記だけでは対応できない問題ですね。
しかし、お子さんによっては、難なく解いてしまいます。

そのポイントを、お父さんとお子さんのやり取りを通して見ていきましょう。

お父さん「難しい問題だね。でもこれは、動き回る生物を数える代表的な方法なんだ。
お子さん「飛んでいるモンシロチョウを全部捕まえるのも、数えるのも無理だよね。」
お父さん「今日つかまえた100匹のモンシロチョウのうち、20匹のモンシロチョウに印がついているんだね。100匹のうちの20匹、これは何分の一になる?」
お子さん「ええと、20/100だから、1/5。」
お父さん「そう。捕まえたモンシロチョウの1/5に印が付いていた。・・・ところで、昨日捕まえて印をつけたモンシロチョウは何匹だったっけ?」
お子さんの「120匹だよ。・・・あっ!なんかわかりそうな気がする・・・。」
お父さん「昨日捕まえて印をつけたモンシロチョウは、この草原にいるモンシロチョウ全体の・・・?」
お子さん「1/5にあたるんだね!」
お父さん「つまりこの草原にいるモンシロチョウは全部で?」
お子さん「120 × 5 = 600匹!」
お父さん「正解!」

実際、このように考えを進められるお子さんは、かなりの思考力を持っています。
覚えた何かをそのまま答えるのではなく、与えられた条件から考えることで結論を導くことを、「当然」と認識しているわけです。

見たことがない問題にもひるまず取り組むお子さんにするには

理科という科目は「仮説を立て、検証する」ことを学習する科目である、ということを理解していると言ってもよいでしょう。
興味を持って問題文の内容を理解しようとするので、正解となる考え方に至りやすい、ともいえます。

一方、公式を覚えて「パターン問題」に対応することのみが勉強だととらえているお子さんは、このような問題に遭遇したときに、「習っていないことだからできなくて当然」という反応を示します。
「見たこともない問題だから、難しい」⇒「自分には解けない」という単純な拒絶反応になりがちですので、考えが先へ進みません。

今現在のお子さんは、どちらの反応をしますか?

この、理科という科目そのものに対する認識を、高学年になってから大きく変えるのは困難です。
ぜひ低学年のうちから「考えて答えを出す習慣」をつけていってください。
そのためには、親御さんの声掛けが大切だと思います。

「どうしてその公式が使えるの?教えて。」
と、お子さんに「先生」になってもらい、親御さんが生徒になって教えてもらうのがおすすめです。

公式を憶えることに労力を費やすのではなく、その公式が導き出されるに至った過程を一緒に考える習慣を親子でつけることを意識してみてください

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