中学受験秋の学習戦略〜夏休み明けの「秋バテ」対策と学習戦略で飛躍を掴む~

こんにちは。
中学受験情報局の主任相談員の西村則康です。
夏休みが終わり9月に入ると、中学受験を目指す4年生、5年生の学習は新たな局面を迎えます。
夏休みの頑張りの成果を期待しつつも、実はこの時期にこそ、お子さんの心身のケアと学習の見直しが重要になります。
今回は、夏休み疲れ、夏から秋への季節の変わり目の体調管理、そして算数の難易度アップといった、秋に注意すべきポイントについて、詳しくお話ししていきます。特に5年生は9月以降に習う「割合と比」の単元が入試において最重要となってきます。「割合と比」についても触れていますのでぜひ最後まで御覧ください。
この記事が、皆様の9月からの学習戦略の一助となれば幸いです。
目次
夏休み明けの落とし穴:見えない疲労と「秋バテ」
夏休み中、中学受験を目指すお子さんたちは本当によく頑張りました。特に各塾の夏期講習は非常に密度が高く、小学生にとってはかなりの負担です。
■ サピックスの夏期講習は、平常授業と同様にカリキュラムが猛スピードで進み、1日に1項目消化する慌ただしい日々でした。この進度の速さゆえに、夏期講習内容の理解が不十分なまま9月を迎えるお子さんも少なくありません。
■ 四谷大塚の夏期講習も近年、目まぐるしいカリキュラムで、5年生では予習と復習を繰り返す「夏期講習を2回分」とも言えるボリュームです。これにより、多くのお子さんが「自分がどこまで分かっているのか不明確」な状態になってしまう傾向が見られます。
■ 早稲田アカデミーでも、元々の演習量の多さから、夏休みに課題をこなしきれないお子さんが多く見られます。
■ 日能研の夏期講習は、大手四塾の中で唯一、純粋な復習内容だけで構成されています。講習会の日程や時間も他の塾ほどハードではないため、まとめテストの結果を参考にテスト直しを丁寧に行ったご家庭も多いことでしょう。理解が不十分だと判明した項目は、1学期の学習内容からの「積み残し」と認識し、大きな穴が見つかった場合は早めに復習しておくことが大切です
このように、体力的にもキツい暑さに加え、目まぐるしく進むカリキュラムの中で頭を使い続けることは、小さな体にとって大きな負担です。夏の疲れが溜まった状態で学校が始まると、「やる気が出ない」「集中できない」といった状態を引き起こし、8月マンスリーテストや9月の組分けテストで成績を落としてしまうお子さんも少なくありません。
また、この「やる気が出ない」背景には、夏の酷暑で受けた体のダメージだけではなかう、2学期の行事の多さによる自律神経の乱れ、いわゆる「秋バテ」が潜んでいる可能性があります。秋バテの主な症状は、体のだるさ、疲労感、胃腸の不調などで、当然、体調が悪いと勉強意欲も低下します。
心と体を守る秋の体調管理術
中学受験において、お子さんの努力や親御さんのサポートも大切ですが、何よりも優先すべきは「体調管理」です。小学生の体は成長期であり、大人に比べて風邪をひきやすく、疲れが溜まると体調を崩しやすいものです。長期にわたる受験勉強を乗り切るためには、日々の体調管理が不可欠です。
最も大切な「睡眠時間」の確保
お子さんにとって必要な睡眠時間はそれぞれ異なります。7時間で十分なお子さんもいれば、10時間以上ないと疲れが取れないお子さんもいます。
宿題や復習が終わらないからといって、睡眠時間を削って夜更かしをすることは絶対に避けましょう。元気を回復するには、やはり睡眠が欠かせません。思い切って勉強を早めに切り上げ、早寝早起きを心がけることが大切です。
バランスの取れた食事と体を冷やさない工夫
バランスの取れた食事は当然重要ですが、冷房の影響や冷たい飲食物で胃腸の働きが低下しがちなこの時期は、体を冷やさない工夫、特にお腹を温めることを心がけましょう。食欲が落ちやすいお子さんも、冷えが原因かもしれません。
入浴と適度な運動によるリラックス効果
睡眠の質を上げるためには、入浴時間や適度な運動も重要です。涼しくなってきたら、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かるのがおすすめです。リラックス効果が快眠をもたらし、体の復調にも繋がります。リラックス効果のある入浴剤を利用するのも良いでしょう。
また、冷房の効いた部屋にいると汗をかきにくく、自律神経の乱れに繋がることがあります。朝夕の涼しい時間帯に、少し汗ばむ程度の軽い運動を取り入れることで、自律神経を整えることができます。受験生は時間が取れないかもしれませんが、朝のラジオ体操や夜のストレッチだけでも、ぜひ習慣にしてみてください。
「心の健康」も忘れずに
体調管理は体だけでなく、心の健康も大切です。受験勉強は長期戦であり、学校行事や習い事との両立、友達と遊ぶ時間の減少、時には好きな習い事をお休みしなければならないこともあります。体が元気でも、気持ちに余裕がなくなってしまっては、パフォーマンスを発揮できません。
お子さんがリラックスできる場所を必ず用意してあげてください。
そして、それがご家庭であれば理想的です。親御さんや家族との団らんの時間は、たとえ短い時間でもお子さんの元気の源になります。勉強を忘れて最近あった出来事を話したり、本を読んだり、同じ空間を共有するだけで、お子さんはリラックスできるものです。
特に運動会や発表会が多い秋は、体調を崩しやすい季節の変わり目でもあります。頑張り屋のお子さんは、自分自身の限界に気づかないこともあります。お母さんもお子さんの体調の変化に気を配り、時にはご自身も休息を取りながら、お子さんとご自身の心と体の健康を守ってあげてください。体調を整えるには、毎日一定のリズムで生活することが大切です。睡眠・食事・入浴の時間はできるだけ同じにしましょう。
算数「割合と比」の壁を乗り越える
5年生の夏から秋にかけての算数は、まさに「ヤマ場」と言われます。その理由は、この時期に「割合と比」について本格的に学習するからです。
■ サピックスでは夏期講習中に4回、四谷大塚系の塾では夏休み中に2回、9月初旬に2回、比に関する授業が行われます。
■ 四谷大塚系の塾では夏休み中に2回、9月初旬に2回、比に関する授業が行われます
■ 日能研はやや遅れて10月から11月にかけて6回も比に関する授業があります。
この「割合と比」の感覚をしっかり身につけ、使いこなせるようにしておくことが、中学受験の算数の最大のポイントの一つなのです。だからこそ、5年生の2学期が算数の「ヤマ場」と呼ばれるのです。
では、なぜ「割合と比」はそこまで大切なのでしょうか。 それは、これ以降、速さの問題、図形の問題、文章題など、さまざまな分野で割合や比の考え方を使うからです。これまで速さの問題では「速さの和」「速さの差」を中心に使ってきたかもしれませんが、今後は「速さの比」を使って問題を考えることができるようになります。
例えば、ある問題を比の考え方を使わずに解くこともできますが、比の考え方を使うことで問題の印象がずいぶん変わることがあります。比べてみると、明らかに比の考え方を使った方がシンプルで、楽に、そして速く正確に解くことができるようになります。速さの問題に限らず、比の考え方を使って問題を解くことが、5年生2学期の算数の大きなテーマの一つなのです。
もし、夏期講習中に学んだ比の概念がしっかり腑に落ちていなければ、秋の学習内容の習熟度も下がってしまいます。9月初旬に実施される組分けテストや、8月マンスリーテストの結果と内容を基に、理解があやふやな項目がどこにあるのか、特に比や割合の単元でつまずきがないかを確認し、秋の学習と並行して復習を進める必要があります。親御さんは、お子さんが割合や比の感覚をきちんと身につけられているか、ぜひ気にして見てあげてください。
比の学習の支援する問題集として、「中学受験 すらすら解ける魔法ワザ 算数・文章題」をおすすめします。
また、主任相談員の前田昌宏の「前田昌宏の中学受験が楽しくなる算数塾」でも、「割合と比」についてたくさんの記事がありますので、ぜひご参考にしてください。
秋からの学習戦略:日々の「小さな復習」が道を拓く
「書店には様々な過去問題集が売られていますが、実際に過去問演習をする際は、できるだけ本物の入試問題に近い体裁で解くことをお勧めします。問題用紙の余白や解答用紙の解き方を書くスペースの実際の大きさを体感することで、「どれぐらいの量書き込めばいいのか」「計算に使えるスペースはどれぐらいありそうか」など、様々なことが体感できます。学校が販売している実物の過去問や、四谷大塚の「過去問データベース」のように、入試問題の実物をPDFで入手できるサービスも活用すると良いでしょう。
具体的な学習戦略を塾別に見ていきましょう。
サピックス生は「日々の15分」を意識
まず夏休みの間の学習で理解が不十分な項目がどれぐらいあるかを把握することから始めましょう。
参考になるのは、8月マンスリーテストの結果と内容です。間違った問題については、「内容がわかっていない」のか、「内容は分かっているが計算や処理のミスがある」のか、この2つをしっかり区別することが重要です。内容がわかっていない項目が多い場合は、9月の学習と並行して少しずつ復習が必要です。
夏期講習のテキストに戻って復習するのは、進度の早いサピックスのカリキュラムを進めながらでは負担が大きいと思います。当該単元の内容を簡潔にまとめた市販の使いやすい問題集などを探して、まとめて復習するという方法でも良いでしょう。
日々の学習の中で復習にあまり長い時間はかけられないため、例えばデイリーで今週学習する内容に関連した過去の内容を家庭で復習し、その状態で今週の授業に出かけるなど、少しずつ日々の学習に折り込んでいくのがポイントです。
シラバスを上手に活用し「来週は過去のどの内容に関連したことを学習するのか」をしっかり把握して毎週の授業に臨みましょう。朝学習、または夜寝る前の学習のうち15分程度、少しずつこういった項目を復習していくのも効果的です。
四谷大塚・早稲田アカデミー生は組分けテストを活かす
目まぐるしい夏休みを過ごした四谷大塚生は「迷子」になっていないか確認が重要です。
9月初旬には組分けテストがありますが、夏期講習のボリュームから、このテストで大きく成績を落としてしまうお子さんも出てきます。
9月の組分けテストの結果・内容をもとに、理解があやふやな項目がどこにあるのか、特に比や割合の単元でつまずきがないかを確認し、秋の学習と並行して復習を進める必要があります。
早稲田アカデミー生も、四谷大塚と同様に9月の組分けテストをしっかり確認することが大切です。日々の家庭学習の中に過去の項目を少しずつ組み込んで、9月からの家庭学習メニューを考える必要があるでしょう。
日能研生は「1学期の積み残し」を丁寧に解消
日能研の夏期講習は純粋な復習内容で構成されているため、夏期講習のテストで理解が不十分だと判明した項目は、1学期の学習内容からの「積み残し」と認識しましょう。
大きな「穴」が見つかった場合は、早めに復習しておいた方が良いです。 幸い日能研のカリキュラムは、9月以降もじっくり進んでいくタイプになっています。つまずきを発見した場合も、現在の学習内容と並行して復習を進めやすくなっていますので、ぜひふだんの学習から「いま習っている内容だけでなく、関連する過去の内容も家庭学習に織り込む」ということを意識されると良いと思います。
一方で、成績上位のお子さんに関しては逆に、このゆったりしたカリキュラムが退屈に感じられるかもしれません。その場合は、市販の問題集などを併用し、少し踏み込んだ内容まで学習することを心がけると良いでしょう。
例えば、東京出版「プラスワン問題集」「ステップアップ演習」(算数)や、実務教育出版「中学受験 すらすら解ける魔法ワザ」(算数・理科)「中学入試 塾技100」(算数・理科)などがおすすめです。
最後に
夏休みが明け、秋の気配が深まるこの時期は、中学受験の学習において重要なターニングポイントです。
夏休み中に蓄積された疲労を解消し、季節の変わり目に合わせた体調管理を徹底すること。
そして、算数の「割合と比」という重要単元を確実に習得すること。さらに、日々の学習の中に復習を賢く組み込み、お子さんの心身の状態と塾との相性にも目を向けること。これらが、秋からの成績向上、そして志望校合格への確かな道を築くための鍵となります。
「中学受験情報局」では、こうした受験に役立つ勉強法やお役立ちの情報を動画でも発信しています。ぜひ、この秋を親子で乗り越え、実り多い学習の期間としてください。
「2025年度版 中学受験ハンドブック」では、単元毎についての学習についても丁寧に触れています。ぜひご活用いただき、よりお子さんにとってよい中学受験にしていただければと思います。