

第710回 男子中の入試問題 速さ 5
「第710回 男子中の入試問題 速さ 5」
ここまで、近年に男子中の入試で出された「速さ」の問題を見てきています。
前回は「流水算」を取り扱いました。
今回は「通過算」について考えていきます。
1問目は、基本レベルの問題です。
【問題】全長108mの上り列車と、全長102m、秒速24mの下り列車が同時にトンネルに入りました。トンネル内で上り列車と下り列車が出会ってからはなれるまで3.5秒かかりました。また、上り列車は、下り列車と出会ってから21秒後に最後尾がトンネルを出ました。次の問いに答えなさい。
(1)上り列車の速さは秒速何mですか。
(2)トンネル内の長さは何mですか。
(立教池袋中学校 2024年 問題9)
【考え方】
(1)
通過算を解くときは、その様子を図に整理することが基本です。
かいた図は線分図ですから、矢印の長さに着目します。
108m+102m=210m … 2つの列車が3.5秒間に進んだ道のりの和
210m÷3.5秒=60m/秒 … 2つの列車の速さの和
60m/秒-24m/秒=36m/秒
答え 秒速36m
上の解答例では2つの列車を動かしていますが、下り列車を止め、上り列車を2つの列車の速さの和で動かす図で考えても構いません。
(2)
2つの列車がトンネルに入り始めてから、上り列車の最後尾がトンネルを出るまでの様子を図に表します。
(1)と同様、矢印の長さに着目します。
☆m=36m/秒×21秒=756m
★m=756m-210m=546m
ですから、下り列車は□秒で
546m+102m=648m
進んだことになります。
□秒=648m÷24m/秒=27秒
27秒+21秒=48秒 … 上り列車の先頭がトンネルに入り始めてから最後尾がトンネルを出るまでの時間
36m/秒×48秒-108m=1620m
答え 1620m
本問は、通過算の基本が確認できる問題です。
正解できないようでしたら、
① 列車が動く様子を図をかく
② 列車の1点(例:最後尾)に着目する
③ 矢印の長さに着目する
という基本ができているかをチェックしましょう。
2問目は、通過算を含んだ速さの総合問題です。
【問題】列車Aと列車Bが、平行に敷かれた線路の上をそれぞれ走っています。列車Aの長さは列車Bの長さより42m短いです。次の問いに答えなさい。
(1)列車Aが車庫に入るために速度を落として時速21.6㎞で走ったとき、停車している列車Bを完全に追いぬくのに33秒かかりました。列車Bの長さは何mですか。
列車Aと列車BはP駅からQ駅まで走ります。342mのトンネルを完全にぬけるのに列車Aは列車Bの2倍の時間がかかります。
(2)列車Bの速度は列車Aの速度の何倍ですか。
(3)P駅とQ駅の間は16.5㎞で、途中に5つの駅があります。列車Aはそれら5つの駅にそれぞれ1分間ずつ停車し、列車Bはそれら5つの駅をすべて通過します。P駅を列車Aが出発してから15分後に列車Bが出発したところ、2つの列車は同時にQ駅に着きました。列車Bの速度は時速何㎞ですか。
(早稲田中学校 2024年 問題9)
【考え方】
(1)
21.6㎞×1000÷3600秒=6m/秒 … 列車Aの速さ
6m/秒×33秒=198m … 列車Aと列車Bの長さの和
列車Aの長さが列車Bの長さより42m短いので、列車Bの長さは
(198m+42m)÷2=120m
です。
答え 120m
(2)
120m-42m=78m … 列車Aの長さ
2つの列車がトンネルを通過する様子を図に表します。
78m+342m=420m … 列車Aが進む道のり
120m+342m=464m … 列車Bが進む道のり
11÷5=2.2倍
答え 2.2倍
(3)
P駅とQ駅の間にある5つの駅の位置は示されていませんから、列車AがP駅を出発する瞬間に
1分間×5=5分間
停車し、その後、止まることなくQ駅まで進んだと考えても、所要時間は同じです。
列車Aと列車Bの速さの比は(2)より5:11ですから、P駅からQ駅まで走行する時間の比は11:5で、その差の
11-5=6
が
15分-5分=10分
にあたります。
10分×5/6=25/3分=5/36時間 … 列車Bの走行時間
16.5㎞÷5/36時間=118.8㎞/時
答え 時速118.8㎞
本問は、通過算の基本、速さと比の関係について確認できる問題です。
総合問題となっていますが、いずれの小問も基本レベルです。
既習範囲であれば、図や表などを使って全問正解を目指しましょう。
今回は、2024年度に男子中の入試で出された「通過算」をご紹介しました。
通過算は条件を図に表して矢印に着目すると、正解できる問題か難問かの判断をしやすくなります。
「なんとなく通過算が苦手」という場合は「図をかいて矢印に着目」という基本に沿って問題に取り組み、定着できていない部分を具体的に見つけ、それを克服していきましょう。