

第729回 女子中の入試問題 数と計算 1
「第729回 女子中の入試問題 数と計算 1」
前回まで、近年の男子中の入試問題について考えました。
今回からは、女子中の2025年度の入試問題を中心に見ていきます。
最初のテーマは「数と計算」です。
今回は、その中から「工夫のできる一行計算」を取り扱っていきます。
1問目は、小数を分数に直す工夫ができる問題です。
【問題】次の□にあてはまる数を求めなさい。
0.0143÷0.01+0.1-0.125×4.2=□
(香蘭女学校中等科 2月1日 2024年 問題1-①)
【考え方】
0.0143 は 143/10000、0.01 は 1/100 に直すことができます。
0.0143÷0.01
=143/10000÷1/100
=143/10000×100/1
=143/100
また、0.125=1/8 ですから
0.125×4.2
=1/8×42/10
=21/40
となります。
0.0143÷0.01+0.1-0.125×4.2
=143/100+1/10+21/40
=286/200+20/200-105/200
=201/200
答え 201/200(1 1/200、1.005)
本問のように小数点以下の桁数が多い計算では、分数を利用することで位取りやかけ算のミスを減らすことができます。
小数どうしのかけ算や割り算は大切な計算技術ですから正確にできることが必要ですが、計算練習をするときは、今回のような分数の利用にも取り組んでみましょう。
2問目は、「分配のきまり」を利用できる問題です。
【問題】34.6×2.8+2.3×17.3+7.9×2.7 を計算しなさい。
(山脇学園中学校 算数1科入試 2025年 問題1)
【考え方】
34.6=17.3×2を利用すると、
34.6×2.8+2.3×17.3+7.9×2.7
=17.3×2×2.8+2.3×17.3+7.9×2.7
=17.3×(2×2.8+2.3)+7.9×2.7
=17.3×7.9+7.9×2.7
のように変形できます。
さらに
17.3×7.9+7.9×2.7
=(17.3+2.7)×7.9
=20×7.9
となりますから、計算結果は158です。
答え 158
本問は、数を分解(34.6=17.3×2)することで分配のきまりが利用可能になる問題です。
計算を始める前に「工夫ができなる問題かな?」と普段から考えるようにすると、工夫すると計算を簡単にできそうかどうかを見分けやすくなると思います。
3問目も、「分配のきまり」を利用できる問題です。
【問題】次の□にあてはまる数を求めなさい。
20.24×12+2.024×80-20×0.24=□
(恵泉女学園中学校 第1回 2024年 問題1-(2))
【考え方】
「20.24」と「2.024」で、数の並びが同じであることに着目します。
20.24=2.024×10 なので
20.24×12+2.024×80-20×0.24
=2.024×10×12+2.024×80-20×0.24
=2.024×(120+80)-20×0.24
=2.024×200-20×0.24
のように変形できます。
さらに、200=10×20 なので
2.024×200-20×0.24
=2.024×10×20-20×0.24
=20.24×20-20×0.24
=(20.24-0.24)×20
=20×20
となりますから、□にあてはまる数は400です。
答え 400
本問は、小数点の位置をずらす(20.24=2.024×10)ことで分配のきまりが利用できるようになる問題です。
前問の数の分解と合わせ、分配のきまりを利用するときの工夫の仕方として、頭の隅に残しておきましょう。
なお、2.024×80 を20.24×8 として、20.24にそろえる計算方法もあります。
最後の問題も、「分配のきまり」を利用することができます。
【問題】次の□にあてはまる数を書きなさい。
(25×24-24×23+23×22-22×21)÷(25+24+23+22+21)=□
(立教女学院中学校 一般入試 2024年 問題1-(3))
【考え方】
式前半の( )内は、
25×24-24×23+23×22-22×21
=(25-23)×24+(23-21)×22
=2×24+2×22
=2×(24+22)
=2×46
のように変形できます。
また、「連続する奇数個の整数の和=中央の整数×個数」を利用すると、式後半の( )内は
25+24+23+22+21
=23×5
となります。
ですから
(25×24-24×23+23×22-22×21)÷(25+24+23+22+21)
=(2×46)÷(23×5)
=4/5
となります。
答え 4/5(0.8)
本問は、「25×24-24×23+23×22-22×21」を「25×24-24×23」と「23×22-22×21」の2組に分けることで分配のきまりを利用することができる問題です。
ここまで見てきたように、分配のきまりを使えるようにするには、いろいろな工夫の仕方があります。
1つずつで構いませんので、できるだけ「工夫の引き出し」を増やしていきましょう。
今回は、2025年度と2024年度の女子中の入試で出された「工夫のできる一行計算」をご紹介しました。
答えが整数や小数にならない計算問題もありますから、分数を利用できることは大切です。
また、分配のきまりを利用できると複雑な計算を省くことができる場合がありますから、普段、計算練習をするときから、「工夫できるかな?」と考えるようにしてみましょう。