

第738回 女子中の入試問題 速さ 1
「第738回 女子中の入試問題 速さ 1」
これまで、近年の女子中の入試で出された「比と割合」について考えてきました。
今回からは「速さ」を取り扱っていきます。
1回目の今回は「速さの3公式と旅人算」の問題を見ていきます。
1問目は基本レベルの問題です。
【問題】恵さんの家から駅までの道のりは1200mです。恵さんは家を出発し、分速45mで歩いていました。8分歩いたところで、あと6分で電車が来ることに気づき、そこから走ったので、電車に乗ることができました。恵さんは分速何m以上で走りましたか。
(東洋英和女学院中学部 A・帰国生 2025年 問題2)
【考え方】
あと6分で電車が来ることに気づいた地点をPとすると、次のような線分図をかくことができます。
「速さの線分図解法」の基本は
① → に距離を書く
② → に距離比を書く
です。
速さの公式「速さ×時間=距離」を使うと、→に距離をかくことができます。
45m/分×8分=360m … 家からPまでの距離
1200m-360m=840m … Pから駅まで(→)の距離
速さの公式「距離÷時間=速さ」から、Pから駅までの速さは少なくとも
840m÷6分=140m/分
であることがわかります。
答え 分速140m以上
本問は、「速さ×時間=距離」などの速さの3公式と速さの線分図解法の考え方を確認できる問題です。
頭の中で条件を整理できないときや正解できなかったときは、線分図をかいて解き直しましょう。
なお、「道のり」と「距離」は同じ意味ではありませんが、問題に指定がない限り、この単元では区別をせずに取り扱うことにします。
2問目は大問形式の問題です。
【問題】7200m離れたP町とQ町があります。AさんはP町からQ町へ分速50mの速さで出発し、同時にBさんはQ町からP町へ分速40mの速さで出発しました。2人は途中で出会い、10分間話をした後、AさんはP町へ、BさんはQ町へそれぞれ来た時と同じ速さで引き返しました。2人が別れて6分後にAさんはBさんにプレゼントを渡すのを忘れていたことに気づき、速さを2倍にしてBさんを追いかけプレゼントを渡しました。プレゼントを渡した後、すぐにAさんは速さを元に戻しP町へ戻りました。このとき、次の問いに答えなさい。
(1) プレゼントを渡した場所はP町から何mのところですか。なお、この問題は答えまでの考え方を表し式や文章・図なども解答欄に書けます。
(2) AさんがP町に戻ったのは、P町を出発してから何時間何分後ですか。
(洗足学園中学校 第1回 2025年 問題3-[Ⅰ])
【考え方】
(1)
条件を線分図に整理します。
50m/分×2=100m/分 … AさんがBさんを追いかけるときの速さ
2人が出発する時から、順に考えます。
出会い(反対向き)の旅人算の公式は
(2人の速さの和)×(出会うまでの時間)=(2人のはじめの隔たり)
です。
7200m÷(50m/分+40m/分)=80分 … 2人が出会うまでの時間
10分間話をした後、2人は反対向きに6分間進みます。
(50m/分+40m/分)×6分=540m
80分+10分+6分=96分
ですから、出発してから96分後の2人の隔たりは540mです。
追いつき(同じ向き)の旅人算の公式は
(2人の速さの差)×(追いつくまでの時間)=(2人のはじめの隔たり)
です。
540m÷(100m/分-40m/分)=9分
AさんはS地点から9分進んでBさんに追いつきます。
50m/分×80分=4000m … PR間の距離
50m/分×6分=300m … RS間の距離
100m/分×9分=900m … ST間の距離
4000m-300m+900m=4600m
答え 4600m
(2)
96分+9分=105分 … 出発してからプレゼントを渡すまでの時間
105分+4600m÷50m/分=197分=3時間17分
答え 3時間17分後
本問は、旅人算の考え方を確認できる問題です。
旅人算が苦手なときは、本問のような比を利用しなくても解ける問題を使って、旅人算の公式や線分図の練習するとよいと思います。
3問目はグラフのある問題です。
【問題】兄と妹は、家からP地点へ向かう予定を次のように立てました。ただし、歩く速さは分速60mの速さで一定とします。
① 2人は7時30分に同時に家を出て、600m離れたX駅まで歩く。
② X駅に7時40分に到着し、同じ時刻に発車する時速42㎞の速さの電車でY駅に行く。
③ Y駅に8時に到着し、Y駅から800m離れたP地点まで歩く。
2人で家からX駅まで歩いていると、途中で妹は忘れ物に気づき、1人で走って家に戻りました。兄は予定通りの電車に乗り、そのままP地点へ向かいました。妹は7時45分に帰宅してすぐに忘れ物を取り、自転車に乗って時速12㎞の速さでX駅まで向かい、到着と同時にX駅を発車する電車に乗りました。この電車の速さは時速60㎞です。Y駅に到着した後、P地点まで分速84mの速さで走っていると、歩いている兄に追いつきました。グラフはこのときの時刻と2人の移動の様子を表したものです。
(1) 妹がY駅に到着した時刻を求めなさい。
(2) 妹が兄に追いついたのは、P地点から何m手前の場所ですか。
(鷗友学園女子中学校 第二回 2025年 問題9)
【考え方】
(1)
わかることをグラフに書き込んでもよいですし、線分図に整理し直しても構いません。
ここでは、線分図を利用することにします。
7時40分-7時30分=10分 … 兄が家からX駅まで歩いた時間
60m/分×10分=600m … 家からX駅までの距離
8時-7時40分=20分=1/3時間 … 兄が電車に乗っていた時間
42㎞/時×1/3時間=14㎞ … X駅とY駅の間の距離
12㎞×1000÷60分=200m/分 … 妹の自転車の速さ
600m÷200m/分=3分 … 妹が家からX駅まで自転車に乗った時間
14㎞÷60㎞/時×60=14分 … 妹が電車に乗っていた時間
7時45分+3分+14分=8時2分
答え 8時2分
(2)
Y駅に兄は8時に、妹は8時2分に到着しました。
8時2分に、兄は妹の
60m/分×2分=120m
先を歩いています。
120m÷(84m/分-60m/)=5分 … 妹が兄に追いつくまでの時間
84m/分×5分=420m … Y駅とQ地点の間の距離
800m-420m=380m
答え 380m
本問も、旅人算の考え方を確認できる問題です。
与えられているグラフを利用してもよいですし、グラフが苦手なようでしたら、解答例のように線分図をかいてもよいでしょう。
今回は、2025年度に女子中で出された「速さの3公式と旅人算」の問題をご紹介しました。
速さの3公式や旅人算の公式を使いこなせると、続けて学習する「速さと比」の問題に役立ちます。
比を使った速さの問題を学ぶまでに、線分図を利用した条件整理とあわせて、確実に定着させましょう。