第730回 女子中の入試問題 数と計算 2
「第730回 女子中の入試問題 数と計算 2」
前回から、近年の女子中の入試問題について考えています。
今回も、引き続き「数と計算」の中から、「工夫のできる計算問題」を取り扱います。
1問目は、工夫をすると桁数の小さい数で計算ができる問題です。
【問題】次の□にあてはまる数を答えなさい。
101×24-99×17+102×21-98×17=□
(東京女学館中学校 2月1日(午後) 2025年 問題1-(1))
【考え方】
「101×24-99×17」と「102×21-98×17」について、かけられる数が100に近いことに着目し、面積図に整理してみます。
101×24-99×17+102×21-98×17
=34+707+68+408
=1217
答え 1217
本問は、計算をするときに面積図を使う工夫のできる問題です。
そのまま計算しても構いませんが、工夫をすると「桁数の小さい数」で計算することができます。
2問目も、工夫をすると桁数の小さい数で計算ができる問題です。
【問題】次の計算をしなさい。
2025×2025×2025-2026×2025×2024
(田園調布学園中等部 2月1日(午後) 2025年 問題1-(5))
【考え方】
2025とその前後の整数を用いた3つの数のかけ算であることに着目し、立方体と直方体の図に整理してみます。
図より、求める差は、赤色の直方体と青色の直方体の体積の差に等しいことがわかります。
2つの直方体の高さは同じなので、底面を真上から見た図(面積図)をかいて調べます。
よって、
2025×2025×2025-2026×2025×2024
=★×2025-☆×2025
=(★-☆)×2025
=(2025×1-2024×1)×2025
=1×2025
=2025
のように計算できます。
答え 2025
本問も、計算をするときを使う工夫のできる問題です。
3つの数のかけ算の式を立体の体積を求める式に読み替えること、それらの立体の高さが等しいことの2点がポイントになっています。
なお、分配のきまりを利用して、面積図の使える形に式を変形する方法もあります。
2025×2025×2025-2026×2025×2024
=2025×(2025×2025-2024×2026)
3問目は、大問形式の計算問題です。
【問題】次の先生と生徒の会話文を読んで、後の問いに答えなさい。
先生:それ以上約分できない1より小さい2つの分数で、引き算をしたら分子が1になるようなものを考えてみましょう。例えば、
のようなものです。
生徒:この例を見ると( A )のときは引き算をしたら分子が1になりそうですね。
先生:確かにそのようですね。もちろん、( A )に当てはまらないような例もあります。例えば
などですね。このような2つの分数を自分で見つけてみましょう。分母は31と40であるような2つの分数の引き算で分子が1になる例を作ることはできますか。
生徒:難しいですね。どのように考えたらよいのでしょうか。
先生:式で表すと
となればよいですね。ただし、□には同じ数字が入ります。まずは①について考えてみましょう。□に当てはまる数はいくつですか。
生徒:( お )だと思います。
先生:その通りです。通分して分子について考えると、○と△を使って( B )という式が成り立つことがわかります。○と△に当てはまる数字を求めてみてください。
生徒:一の位に注目すればすぐにみつかりました。○は( か )、△は( き )となります。
先生:よく気がつきましたね。②のほうも同じように工夫して計算してみてください。
生徒:#は( く )、*は( け )となります。
(1) ( あ )~( う )に当てはまる数を答えなさい。
(2) ( A )に当てはまる語句を答えなさい。
(3) ( え )、( お )に当てはまる数を答えなさい。
(4) ( B )に当てはまる式を答えなさい。
(5) ( か )、( き )に当てはまる数を答えなさい。
(6) ( く )、( け )に当てはまる数を答えなさい。考え方や途中の式も書きなさい。
(富士見中学校 算数1教科入試 2025年 問題2 問題文一部変更)
【考え方】
(1)
順に計算をします。
答え あ 6、 い 12、 う 20
(2)
3つの例で、分母の差はどの式も場合も1になっています。
3-2=1
4-3=1
5-4=1
答え (例) 分母の数の差が1
(3)
( え )
逆算をします。
( お )
先生が挙げたどの例の場合でも、2つの分数の分母の積が答えの分数の分母となっていることから、
お=31×40=1240
と考えられます。
答え え 3、 お 1240
(4)
31と40は互いに素(1以外の公約数を持たない)なので、通分すると分母は31×40となりますから、○/31の分子と分母に40を、△/40の分子と分母に31をそれぞれかけます。
よって、
○×40-△×31=1
です。
答え (例) ○×40-△×31=1
(5)
「一の位に注目」というヒントを利用します。
○×40の答えの一の位の数は0ですから、△=9の場合を調べてみます。
○×40-9×31=1
○=(1+279)÷40=7 → か=7、き=9 です。
答え か 7、 き 9
(6)
①と同様に、②を通分したときの分子に着目します。
#×31-*×40=1 … 分母を1240にそろえたときの分子
*×40の一の位の数は0ですから、#=11の場合を調べてみます。
11×31-*×40=1
*=(341-1)÷40=8.5 → 整数ではないので不適当です。
次に、#=21の場合を調べます。
21×31-*×40=1
*=(651-1)÷40=16.25 → 整数ではないので不適当です。
さらに、#=31の場合を調べます。
31×31-*×40=1
*=(961-1)÷40=24 → く=31、け=24 です。
答え く 31、 け 24
本問は、引き算をする2つの分数を通分をして1つの分数に表すときに分子を式で表せることを使った問題です。
先生と生徒の会話の中に出てきた例や誘導を見落とさないようにしましょう。
なお、(3)-(お)で答えを「1240」と決めきれな場合はいったん保留しておき、「先に続きの(4)に進む」という実戦的な対応をすると、(4)以降の問題を解く過程から(3)-(お)が「1240である」と確信できます。
今回は、2025年度に女子中の入試で出された「工夫のできる計算問題」を前回に引き続いてご紹介しました。
計算問題の中には、面積図や通分したときの分数の表し方などの工夫ができると、計算しやすくなったり解き方を見つけやすくなったりするものもあります。
練習を通して、工夫ができるようになるといいですね。