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流れる水 ~流水算~

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速さの練習問題 2012年10月13日18時00分
曼珠沙華!

20121019_1.jpg

お元気ですか?

マンジュシャゲです。


実は「マンジュシャゲ」というのはこの花の別名で、正確にはヒガンバナ科に属する「ヒガンバナ」です。

今年は咲くのが少し遅かったのですが、
「彼岸花」という漢字からわかるように、秋のお彼岸のころに花を咲かせることが多いようです。

園芸用の品種もあるのですが、田のあぜ道に今でも多く見られます。

もともとは、田のあぜをモグラなどから守るためにヒガンバナの球根の毒性を利用して植えられたとか、
根の張りを利用してあぜを強化したとかいわれています。

この他に、飢饉のときの食料として植えられたとも聞きます。

しかし、この花の球根には毒があるため、
栄養分のでんぷんを取り出すためには、何度も水にさらすことが必要だったようです。


「水にさらす…」というと、水を桶などに流し込みながら毒を洗い流すといった映像イメージがわきますよね?


ということで、今回のテーマは「流れる水 ~流水算~」です。


流水算を解くときの基本は、
1. 問題条件を線分図に書き表す
2. 上りの速さ、静水時の速さ、下りの速さ、流速の線分図を書く
ですね。

この他には、
「上る船の速さ+下る船の速さ=上る船の静水時の速さ+下る船の静水時の速さ」
といった、「技」もあります。

また、
何度も往復する問題では線分図よりもダイヤグラム(進行グラフ)の方が解きやすい
ことも頭にとどめておいてほしいところです。


さて、今回は「上り+下り=静水時の速さの和」という「技」の応用として、
愛媛県の進学校として有名な愛光中の入試問題(改題)をご紹介します。

【問題】
Aさんは川の上流に向かってP地点から船に乗って出発しました。出発してから18分後に流れ下る浮き輪とすれちがいました。そのまま、さらに上流のQ地点まで行き、すぐに折り返したところ、船は浮き輪と同時にP地点に着きました。PQ間の距離は何kmですか。ただし、船の静水での速さは毎時4km、川の流れは毎時1.5kmとします。


それでは基本通り、線分図を書いてみましょう。

20121019_2.jpg

線分図のポイントは2つでしたね。

1. →に距離や距離の比を書きこむ。
2. 「同時マーク(同時刻にいた位置に同じ印)」を記入する。

この2点を守りながら線分図を完成させましょう。

(4-1.5)㎞/時×(18/60)時間=0.75㎞

20121019_3.jpg

しかし、これだけではどうにも解けそうにありませんね…。


こんなときこそ基本に立ち返って、「折り返したときも同時マーク」を書いてみましょう。

流水算ですから、折り返すと速さが変化しますよね?
ですから同時マークを記入しておくといいことがありそうです!

20121019_4.jpg

よーくみると、「同時マークは、時間が同じ(時間一定)」が利用できますよ。

20121019_5.jpg

それは…、

(→ア)+(→イ)は、同じ時間で船が上った距離と浮き輪が流された距離の和ですから、

{(船-川)+川}×□時間=(→ア)+(→イ)

です。

20121019_6.jpg

また、
(→エ)-(→ウ)は、同じ時間で船が下った距離と浮き輪が流された距離の差ですから、

{(船-+川)-川}×★時間=(→エ)+(→ウ)

です。

20121019_7.jpg

しかも、線分図を見ると、(→ア)+(→イ)=(→エ)-(→ウ) です。

20121019_8.jpg

ところで、さきほどのの2つの式を見てください。

{(船-川)+川}×□時間=(→ア)+(→イ)
{(船-+川)-川}×★時間=(→エ)+(→ウ)

どちらも{  }の中を整理すると「船」だけになりますね!

「上り+下り=静水時の速さの和」と同様に、
流水算と旅人算を「合体」させると、

「上りの船の速さ+川=船の静水時の速さ」や「下りの船の速さ-川=船の静水時の速さ」

のように、うまく計算ができようになるんです。


ですから、この問題では
船×□時間=船×★時間 となり、□時間=★時間とわかります。

ということは(→イ)と(→ウ)が同じ距離だということになりますから
1.5km/時×□時間×2=0.75km  □時間=0.25時間 です。

20121019_9.jpg

船も★時間=□時間=0.25時間でPQ間を下る距離と分かりますので
(4+1.5)㎞/時×0.25時間=1.375㎞が答えです。



ところでこの問題をダイヤグラムで解くとどうなるのでしょうか。

ダイヤグラムを書いてみましょう。

20121019_10.jpg

ダイヤグラムは「図形解法」です。

ですから、「砂時計型の相似」に代表される、特徴的な図形に着目することを意識して問題に取り組めば、
ダイヤグラムも利用しやすくなります。


この問題のダイヤグラムの着目図形は、「琵琶湖形」と呼ばれる三角形です。
この図形は「同じ距離を進む(距離一定)」が利用できる部分です。

20121019_11.jpg

三角形アは船と浮き輪が離れていく
つまり、船が上る速さ+浮き輪の速さ=(4-1.5)+1.5=4㎞/時で進んだ距離、

三角形イは船が浮き輪を追いかけていく
つまり、船が下る速さ-浮き輪の速さ=(4+1.5)-1.5=4㎞/時で進んだ距離、

ことを表しています。


このことからどちらも同じ速さで同じ距離を進むので、時間も同じということがわかります。

20121019_12.jpg

さらに、もう一つの特徴的な図形、「山」にも着目します。

「山」も「同じ距離を進む(距離一定)」が利用できる図形です。

20121019_13.jpg

同じ高さの山を、
登る速さ=船が上る速さ=4-1.5=2.5㎞/時
下る速さ=浮き輪が流される速さ=1.5㎞/時
より、

速さの比 2.5:1.5=5:3 → 時間の比 3:5(=6:10)

です。

20121019_14.jpg

このグラフから、
⑥=18分
①=3分
⑤=15分=0.25時間
となり、
PQ間は船が0.25時間で下る距離と分かりますので
(4+1.5)㎞/時×0.25時間=1.375㎞が答えです。


ダイヤグラムの長所として、
○グラフが書きやすいこと
○着目すべき特徴のある図形を利用すると解きやすいこと
が上げられます。

中級レベル以上の流水算には有力な解法といえるでしょうね。


いずれにせよ、流水算の基本レベルの問題は、
1. 問題条件を線分図に書き表す
2. 上りの速さ、静水時の速さ、下りの速さ、流速の線分図を書く
だけで解けるのですが、少し問題のレベルが上がるとこの問題のように、
3. ダイヤグラムで解くことができる
4.  「上り+下り=静水時の速さの和」が利用できる
といった「追加のテクニック」が必要になります。


基本的な解き方をマスターできたら、便利な解法にもチャレンジしてみてください。
解法技術をランクアップさせて問題にかかる時間を短縮し、
残った時間を有効に利用できるようになれるといいですね!

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速さの練習問題 2012年10月13日18時00分
主任相談員の前田昌宏
中学受験情報局『かしこい塾の使い方』の主任相談員である前田昌宏が算数の面白い問題や入試問題を実例に図表やテクニックを交えて解説します。
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