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2016年度中学入試 浦和明の星女子中・洛南高校附属中

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中学入試の算数問題 2016年03月05日18時00分

第277回 「平成28年度 私立中学入試 浦和明の星女子中・洛南高校附属中」


前回は2016年度の中学入試から、
首都圏の武蔵中と関西圏の神戸女学院中の問題をご紹介しました。


今回は、首都圏の浦和明の星女子中、関西圏の洛南高校附属中で
出題された問題をご紹介いたします。


浦和明の星女子中の入学試験は1月14日に実施される、いわゆる「1月校」で、
例年2000人弱の受験生が志望します。


試験時間は50分、100点満点です。


今年度の受験者平均は67.7点、合格者平均は80.8点で、
昨年度の受験者平均52.0点、合格者平均62.6点と比べ、易化しました。


この5年間は隔年で難度が変化していますが、今年度は定番問題が比較的多く、
その結果、大幅な点数アップとなっています。


その浦和明の星女子中の入試問題からご紹介するのは、大問3です。


ニュートン算の中では上級問題に属するものです。


ニュートン算が得意なお子さんはチャレンジしてみましょう。




平成28年度 浦和明の星女子中学 入学試験問題 算数 より

大問3 ある都市の水源となっているダムがあります。このダムの1日当たりの水の流入量と放水量が、例年の夏と同じであれば、満水の状態から水がなくなるまでに80日間かかるとわかっています。ところが、今年の夏の1日当たりの水の流入量は例年の夏の80%しかなく、ある時点で、ダムの貯水量は満水時のちょうど半分になっていました。放水量は例年の夏と同じで、このまま80%の流入量が続くとして計算すると、ダムの水はあと20日間でなくなることがわかりました。

(1)例年の夏の1日当たりの水の流人量と放水量の比を、最も簡単な整数の比で表しなさい。

(2)例年の夏の80%の流入量が続くとして、ダムの貯水量が満水時の半分になった時点から、毎日の放水量を例年の夏の75%に制限すると、ダムの水がなくなるまでにあと何日間かかりますか。








問題の条件を整理します。


ニュートン算の場合、線分図、面積図、水そう図などがありますが、
貯水量が変化しますから、水そう図が書きやすそうです。

20160304102111.jpg

例年の夏が80日間でダムの水がなくなりますので、
はじめの貯水量を80○とすると、
今年の夏は半分になっていますので40○です。


すると1日あたり例年は①、今年は②の水がダムから減りますが、
水そう図を見ると例年と今年の違いは流入量だけですから、
「ダムの水が減る量の差=流入量の差」となります。

20160304102147.jpg

(1)の答え 5:6 

(2)㊵÷(⑥×0.75-⑤×0.8)=80日間




ニュートン算を「水そう図」に整理して解くときは、
「満水時の貯水量=日数の最小公倍数 → 1日分の減少量を求める」
の順に進めていくと、問題を解くことができます。


「線分図」に整理する場合は、
「貯水量(または総放水量)をそろえる」
ようにして解くことがポイントです。




次にご紹介するのは、洛南高校附属中です。


試験時間70分、150点と非常にボリュームのある試験で、
問題自体もタフな問題が多い点が特徴です。


今回ご紹介する大問8は非常に難度の高い立体図形の問題です。


「2回切断」を学んでいれば、(2)までは挑戦してみましょう。




平成28年度 洛南高校附属中学 入学試験問題 算数 より

大問8 図の(あ)~(え)の立体の頂点は、1辺の長さが1cmの立方体の頂点または辺の真ん中の点です。このとき、次の問いに答えなさい。

20160304102413.jpg
(1)(あ)の体積は何cm3ですか。

(2)図のA、B、Cをそれぞれ重ねたとき、(あ)と(い)の重なる部分の体積は何cm3ですか。

(3)図のA、B、Cをそれぞれ重ねたとき、(う)と(え)の重なる部分を立体(お)とします。
(ア) (お)の面はいくつありますか。
(イ)  (お)の体積は何cm3ですか。








(う)(え)の立体は2015年度の洛南高校附属中の入試問題で、
そのものの体積を求める難問として出題されましたが、
今年度はさらに難度の高い「重ねる」問題に使用されています。


20160304102449.jpg(1)は右の図のようにして求めることができます。






図の三角すいは、底面が立方体の1/2、高さも1/2ですから、
体積は立方体の1/2×1/2×1/3=1/12です。


それを4つ、立方体から取り除いた立体が(あ)なので、
1cm×1cm×1cm×(1-1/12×4)=2/3cm3
が(1)の答えと計算できます。


(2)は、問題文の通りに立体図形を重ねて解けるお子さんは、かなり立体図形に強いお子さんです。


「どんなふうに重なるか、わからない」というお子さんは、
この問題の紹介部分にも書きましたように
「2回切断の問題」として取り組んでみるとよいかも知れません。


難しい問題のですが、(あ)と(い)は向きが違う同じ立体図形ですから、
重なる部分も「規則的」になることを利用します。

具体的には、一部分だけに着目します。(いくつかの解き方があります。以下は一例です。)

20160304102625.jpg

この断頭三角柱は、
底面が立方体の1/8、高さは(0+1/4+1/2)÷3=1/4ですから、
体積は立方体の1/8×1/4=1/32です。


それを16個取り除くので、
1cm×1cm×1cm×(1-1/32×16)=1/2cm3
が(2)の答えと計算できます。


(3)も(2)と同様に、一部分(一部の面)だけに着目します。

20160304102745.jpg

上図より、
(ア)12面、(イ)1/3×5/18×2=5/27cm3
という答えが求められます。


入試当日は、この問題の(2)(3)は時間が余れば取り組む問題だと思いますが、
練習のときは「2回切断」の超難問としてチャレンジしてみてもよいと思います。




洛南高校附属中の大問8は非常に難しい問題ですが、
「切断は見取り図と投影図を利用する」
という大原則でなんとか解くことができました。


この問題より易しい一般的なレベルの問題であれば、
「切断は見取り図と投影図を利用する」という大原則で、
より簡単に解くことができますので、
早く理解して、使えるようになるといいですね。

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中学入試の算数問題 2016年03月05日18時00分
主任相談員の前田昌宏
中学受験情報局『かしこい塾の使い方』の主任相談員である前田昌宏が算数の面白い問題や入試問題を実例に図表やテクニックを交えて解説します。
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