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第497回 合否を分ける問題の解き方 図形の回転移動 2

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図形の練習問題 2020年05月23日18時00分

「第497回 合否を分ける問題の解き方 図形の回転移動 2」


前回は、中学入試の合否を分ける問題の中から「直線上を転がる四角形」について見ました。


そこから図形の回転移動の問題のポイントは、正確な作図にあることがわかりました。


今回は、前回よりもさらに作図が難しい「円の内側にそって転がる三角形や四角形」の問題について考えてみようと思います。


出題校は神奈川県の男子御三家、栄光学園中学校です。






2019年度 栄光学園中学校 入試問題 算数より 

問題1 次の問に答えなさい。ただし、円周率は3.14とします。

(1) 半径10cmの円の内部に1辺の長さが10cmの正三角形ABCが図1のようにあります。点Aをつけたまま、点Bが円周につくまで、正三角形を回転させます(図2)。

20200517141926.jpg

次に点Bをつけたまま、点Cが円周につくまで回転させます。このような回転を同じ向きに繰り返していきます。図1の位置からもとの位置に戻ってくるまで回転を6回繰り返したとき、点Bの動いた道すじの長さを、四捨五入して小数第2位まで求めなさい。

(2) 半径10cmの円の内部に1辺の長さが10cmの正方形ABCDが図3のようにあります。点Aをつけたまま、点Bが円周につくまで、正方形を回転させます(図4)。

20200517141955.jpg

(1)と同じように図3の位置からもとの位置に戻ってくるまで回転を6回繰り返します(点A~Dの位置は元に戻るとは限りません)。点Bの動いた道すじの長さを、四捨五入して小数第2位まで求めなさい。ただし、この正方形の対角線の長さは14.1cmとします。途中の式も書きなさい。








【解答例】
(1)
与えられた図の中に、点Bの動きをかいてみます。


このとき、点Aが円の中心になっていることに気をつけましょう。

20200517142030.jpg


ところで、円の半径と1辺の長さが同じ正三角形は、円の中にピッタリ6個はいります。

20200517142049.jpg


ですから、上の図より、1回に回転する角の大きさは60°であるとわかります。


さらに2回目、3回目の回転をかいていきます。

20200517142106.jpg


上の図のように、3回の回転で正三角形ABCは初めの位置(図1)と同じように、頂点Bが円の中心と重なりましたから、残り3回の回転は、はじめ3回の回転と同じ動きをすることになります。


ですから、点Bが動いた道すじの長さは、

20cm×3.14×1/6×2回×2周期=41.866… → 41.87cm

と求められます。




この問題では、回転の様子がわかるように図1、2が与えられていましたから、正確な作図は難しくないでしょう。


また、「3回の回転が1周期」ということに気づけば、計算も簡単にできますし、試験時間を節約することもできます。






ところで、円周にそって図形が転がる問題は、「直線上を転がる → 直線を曲げて円にする」という手順で考えることもできます。

20200517142148.jpg


上図(下)のように、直線上を回転する場合と円周にそって回転する場合では、「回転する角度は異なります」が「回転の中心の移り変わる順序は同じ」です。


本問では、回転の中心がA→B→C→A→B→Cと移り変わっていきますから、点Bは3回に1回の割合で回転の中心となって動かないことがわかります。


つまり、6回の回転のうち、

6回×2/3=4回

だけ点Bは回転することになります。


このことを利用すると、点Bが動いた道すじの長さは、

20cm×3.14×1/6×4回

という式でも求めることができます。




(2)
(1)の解答例の後半で見た「直線上を転がる → 直線を曲げて円にする」という考え方を利用してみましょう。

(2)でも回転の中心はA→B→C→D→A→Bと移り変わりますから、点Bは6回の回転のうち回転の中心になることが2回あります。


1回に回転する角度は、

20200517142301.jpg

のように30°です。


ただし、(1)の「図1→図2」では点Bも点Cも回転の半径は10cmですが、(2)の「図3→図4」では、点Bと点Dの回転の半径は10cm、点Cの回転の半径は正方形ABCDの対角線となっていることに注意が必要です。


点Bの場合、点Dが回転の中心となっているとき、回転の半径が正方形ABCDの対角線14.1cmになります。


点Dが回転の中心となる回数が1回ありますから、点Bが動いた道すじの長さは、

20cm×3.14×1/12×3回+28.2cm×3.14×1/12×1回=23.079 → 23.08cm

と計算できます。






本問の(2)は、正確な作図は難しいのですが、「直線上を転がる → 直線を曲げて円にする」という考え方を利用すると、問題で与えられた図を使うだけで答えを得ることができます。


ただし、「動く道すじをかきなさい」という問題も中学入試にはありますから、回転の中心の移り変わる順序に従って、点Bの動いた道すじを

20200517142350.jpg

のように作図できるようになっておくことは大切です。


その上で、「直線上を転がる → 直線を曲げて円にする」という考え方を身につけて、限られた試験時間でも正解が得られるように、これからの学習ができればいいなと思います。

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図形の練習問題 / 算数の成績アップ勉強法 2020年05月23日18時00分
主任相談員の前田昌宏
中学受験情報局『かしこい塾の使い方』の主任相談員である前田昌宏が算数の面白い問題や入試問題を実例に図表やテクニックを交えて解説します。
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