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第516回 女子中の立体図形 1

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図形の練習問題 2020年10月03日18時00分

「第516回 女子中の立体図形 1」


これまで、近年の女子中の入試問題から、「文章題」、「比と割合」、「速さ」、「平面図形」について見てきました。


今回からは、「立体図形」の問題について考えていこうと思います。


はじめは、体積や表面積を求める問題(「求積」)を取り扱っていきます。


「求積」では、どのような立体図形かを把握して正確に計算ができる力や、公式を使いこなす力が必要ですが、比較的取り組みやすい問題もありますから、既習範囲であれば5年生でもチャレンジできると思います。




【問題】
下図は、円柱の1/2と直方体を組み合わせた立体を正面と真横から見た図です。この立体の体積を求めなさい。ただし、円周率は3.14とします。

20200928094916.jpg

(東洋英和女学院中学部 2020年 問題8)








【考え方】
問題文中に「円柱の1/2」、「直方体」を組み合わせた立体とあることに気をつけながら、長さを求めます。

20200928094951.jpg

上の図のように、半円柱(大)の半径は6cm、半円柱(小)の半径は2cmと求められます。


以上から、直方体(白色部分)は、

6cm+5cm=11cm … 縦

6cm×2=12cm … 横

10cm … 高さ

とわかります。

20200928095014.jpg


6cm×6cm×3.14×1/2×5cm=90cm3×3.14 … 半円柱(大)の体積 

2cm×2cm×3.14×1/2×3cm=6cm3×3.14 … 半円柱(小)の体積 

和=96cm3×3.14=301.44cm3 

10cm×12cm×11cm=1320cm3 … 直方体の体積 

301.44cm3+1320cm31621.44cm3 






本問は、直方体(白色部分)を見た目で「立方体」と決めつけてしまう失敗をしなければ、正解にたどり着けると思います。


また、今回は「3.14の計算で得をする」ことはできませんでしたが、できるだけ上記のように「□×3.14の形で残して、後でまとめて計算するクセ」をつけておくとよいでしょう。


20200928095227.jpg




では、次の問題です。




【問題】
次の問いに答えなさい。ただし、円周率は3.14とします。

(1) 下の図の円すいAは、底面の半径が2cm、母線の長さが8cmの円すいです。

① 円すいAの側面積は何cm2ですか。

② 円すいAを横に倒して平面上をすべらないように転がすとき、元の位置にもどるまでに何回転しますか。

20200928095116.jpg

(2) 下の図の立体Bは、ある円すいを底面に平行な面で切ったときにできる立体です。この立体Bを横に倒して平面上をすべらないように転がしたとき、元の位置にもどるまでに5/3回転しました。アの長さは何cmですか。途中の式や考え方なども書きなさい。

20200928095137.jpg

(吉祥女子中学校 2020年 問題2 問題文一部変更)








【考え方】
(1)
① 立体図形の側面積や底面積などを求めるときは、見取り図を展開図などに書き換えるのが基本の解き方です。

20200928095210.jpg

上の展開図で、おうぎ形OABの弧AB(青線)と円O’の円周(赤線)は同じ長さですから、おうぎ形の中心角は

360度×{(4cm×3.14)/(16cm×3.14)}=90度

です。


従って、円すいAの側面積は

8cm×8cm×3.14×90度/360度=50.24cm2

と求められます。




なお、「円すいの側面積=母線×半径×円周率」という公式が使えると、

8cm×2cm×3.14=50.24cm2

のように求めることもできます。



② 倒した円すいを転がして1周させる問題です。


倒した円すいを転がした後にできる図形は円で、それは転がす円すいの側面を回転数分だけつなぎ合わせたものです。

20200928095326.jpg

①で、円すいAの側面の展開図であるおうぎ形の中心角は90度とわかっていますから、円すいAが転がる回数は

360度÷90度=4回転

とわかります。




なお、②でも「半径/母線=中心角/360度=1周/回転数」という公式を知っていると、

半径2cm/母線8cm=1/4=1周/4回転

なので

回転数=4

のように求めることもできます。


(2)
円すい台が転がる回転数は、底面に平行な面で切る前の円すいの回転数と同じです。

20200928095450.jpg

(1)-②で利用した公式「半径/母線=中心角/360度=1周/回転数」を使うと

半径9cm/母線=1周/(5/3)回転=1÷(5/3)=3/5

となりますから、元の円すいの母線は15cmです。


20200928095522.jpg

上の図のように、円すい台の断面の半分を図をかくと、三角形(小)と三角形(大)の相似比は

6cm:9cm=2:3

とわかりますから、

15cm×1/3=5cm

がアの長さです。






本問の(1)では、「長さを求めるときは、見取り図を展開図・投影図・断面図に書き換える」という原則を利用しましたが、「円すい」の特別な公式を利用して答えを求めることもできます。



20200928095600.jpg





今回は、女子中の2020年度の入試問題の中から、「立体図形」の体積や表面積を求める問題(「求積」)を中心に、円すいの特別な公式が利用できる問題を見ました。


立体図形の問題は、どのような立体なのかを問題の本文と見取り図から正確に把握し、展開図や投影図あるいは断面図から長さや面積などを求めていくものが出されますので、5 年生が家庭学習で立体図形に取り組むときは、自分の手で図をかくとよい練習になると思います。


また、計算においては、分配の決まり、公式、そして今回は出てきませんでしたが、相似な図形の場合は面積比や体積比の関係を使うことができれば理想的です。

mflog.GIF

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図形の練習問題 / 中学入試の算数問題 2020年10月03日18時00分
主任相談員の前田昌宏
中学受験情報局『かしこい塾の使い方』の主任相談員である前田昌宏が算数の面白い問題や入試問題を実例に図表やテクニックを交えて解説します。
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