第718回 男子中の入試問題 立体図形 2
「第718回 男子中の入試問題 立体図形 2」
前回から、近年に男子中の入試で出された「立体図形」の問題を取り扱っています。
2回目の今回のテーマは「回転体」です。
1問目は、基本レベルの問題です。
【問題】下図の台形ABCDを直線Lの周りに一回転してできる立体の体積は何㎤ですか。ただし、円周率は3.14とし、円すいの体積は(底面積)×(高さ)÷3で求められます。
(巣鴨中学校 2024年 問題1-(6))
【考え方】
台形を1回転させてできる立体は円すい台です。
円すい台の体積は円すい(大)から円すい(小)を取り除いて求めます。
赤色の三角形と水色の三角形は相似で、相似比は
6㎝:3㎝=2:1
ですから、円すい(大)と円すい(小)体積比は
(2×2×2):(1×1×1)=8:1
円すい(大)と円すい台の体積比は
8:(8-1)=8:7
です。
また、
★㎝:☆㎝=2:1
で、その差にあたるABが6㎝ですから、
★㎝=6㎝×2/(2-1)=12㎝
です。
よって、円すい台の体積は
6㎝×6㎝×3.14×12㎝×1/3×7/8=395.64㎤
です。
答え 395.64㎤
本問は、円すい台の体積の求め方を確認できる問題です。
解答例では見取り図を用いましたが、考え方が身についたら回転させる平面図形(回転体の断面)の図だけで解いてもよいでしょう。
2問目は、回転の軸が回転する図形の内部にある問題です。
【問題】[図1]のような平行四辺形ABCDを、直線ACを軸として1回転させてできる立体の体積は何㎤ですか。また、表面積は何㎠ですか。ただし、円周率は3.14とし、(円すいの体積)=(底面積)×(高さ)×1/3で求められます。
(浅野中学校 2025年 問題1-(4) 問題文一部変更)
【考え方】
1回転させますから、三角形ACDを回転の軸について線対称な位置に移動させても、同じ立体ができます。(左下図)
ACと垂直で真ん中の点を通る直線EFで図形を上下に分けると、合同な円すい台が2つできることがわかります。(右下図)
三角形ABCと三角形AEFは相似で、相似比は
AC:AF=8㎝:4㎝=2:1
ですから、三角形ABCが1回転してできる円すい(大)と三角形AEFが1回転してできる円すい(小)の体積比は
(2×2×2):(1×1×1)=8:1
です。
6㎝×6㎝×3.14×8㎝×1/3×7/8×2=527.52㎤ … 体積
円すい台の表面積も円すい(大)から円すい(小)を取り除いた立体として考えます。
6㎝×6㎝×3.14=36㎠×3.14 … 円すい台の底面積(下側)
上下の円すい台で、半径が3㎝の円である底面はぴったり接していますから、立体の表面にはなりません。
最後に、側面積を求めます。
円すい(大)と円すい(小)の相似比は2:1ですから、側面積の比は
(2×2):(1×1)=4:1
円すい(大)と円すい台の側面積の比は
4:(4-1)=4:3
です。
円すいの側面積は(底面の半径)×(母線)×(円周率)で求められます。
6㎝×10㎝×3.14×3/4=45㎠×3.14 … 円すい台の側面積
以上より、合同な2つの円すい台が上下に組み合わさった立体の表面積は
(36㎠×3.14+45㎠×3.14)×2=508.68㎠
です。
答え 体積 527.52㎤、 表面積 508.68㎠
本問は、円すい台の基本を確認できる問題です。
また、回転の軸が1回転させる図形の内部にある場合、図形の一部を回転の軸について線対称な位置に移動させて、回転の軸の片側に集めて考えることも大切なポイントです。
最後は、比の利用がポイントとなる問題です。
【問題】図のように、面積が1㎠の正方形でできたマス目と、直線①があります。
下のそれぞれの図について、色をつけた部分を直線①のまわりに1回転させてできる立体の体積を考えます。ただし、円周率は3.14とします。
(1) 図2からできる立体の体積は、図1からできる立体の体積の何倍ですか。
(2) 図2からできる立体の体積を求めなさい。
(3) 図3からできる立体の体積を求めなさい。
図のように、面積が2㎠の正方形でできたマス目と、直線②があります。
下のそれぞれの図について、色をつけた部分を直線②のまわりに1回転させてできる立体の体積を考えます。ただし、円周率は3.14とします。
(4) 図5からできる立体の体積は、図4からできる立体の体積の何倍ですか。
(5) 図6からできる立体の体積を求めなさい。
(攻玉社中学校 2025年 問題4 問題文一部変更)
【考え方】
(1)
はじめに、下の図の影をつけた部分を直線①のまわりに1回転させてできるの図形A~C(円柱)について、体積比を考えます。
よって、図1からできる立体の体積を1とすると、図2からできる立体の体積は
1+4+9=14
です。
14÷1=14(倍)
答え 14倍
(2)
1マスの面積が1㎠ですから、1マスの辺の長さは1㎝、図形Aの円柱の体積は
1㎝×1㎝×3.14×1㎝=3.14㎤ … 体積比の1にあたる体積
です。
3.14㎤×14=43.96㎤
答え 43.96㎤
(3)
図3からできる立体の体積を(1)で求めた比で表すと
(4-1)+4+(9-1)+(9-4)=20
です。
3.14㎤×20=62.8㎤
答え 62.8㎤
(4)
はじめに、下の図の影をつけた部分を直線②のまわりに1回転させてできる図形D~F(2つの合同な円すいを組み合わせた立体)について、体積比を考えます。
図4、図5の色をつけた部分のうち、水色の部分は1回転するとき赤色部分と重なりますから、図4からできる立体は図形Dの立体と同じ、図5からできる立体は図形Eの立体と同じです。
よって、図4からできる立体の体積を1とすると、図5からできる立体の体積は8なので、
8÷1=8(倍)
です。
答え 8倍
(5)
図6からできる立体の体積を(4)の考え方の比で表すと
4×4×4=64
64-(1+27)=36
です。
また、マス目の面積が2㎠ですから、マス目の対角線の長さを□㎝とすると
□㎝×□㎝÷2=2㎠ → □㎝=2㎝
なので、図形Dの立体の体積は
1㎝×1㎝×3.14×2㎝÷3=157/75㎤ … 体積比の1にあたる体積
です。
157/75㎤×36=75.36㎤
答え 75.36㎤
本問は、回転体の体積を工夫して求めることができる問題です。
体積の公式を使って図1~6の回転体の体積を求めたときは、比を用いた工夫も確認します。
今回は、2024年度と2025年度に男子中の入試で出された「回転体」の問題をご紹介しました。
正解できない問題があるときは、回転する平面図形からできる立体の見取り図のかき方や相似の利用方法をチェックしてみましょう。