第720回 男子中の入試問題 立体図形 4
「第720回 男子中の入試問題 立体図形 4」
ここまで、近年に男子中の入試で出された「立体図形」の問題について考えています。
今回は「立体図形の切断」の問題を取り扱います。
1問目は、「1回切断」の基本問題です。
【問題】図のような1辺の長さが6㎝の立方体があります。辺AB、DC、EF、HG上にそれぞれ点I、J、K、Lをとります。AI:IB=DJ:JC=4:5、EK:KF=HL:LG=2:1です。このとき、次の問いに答えなさい。
(1) この立方体を3点I、K、Lを通る平面で切ったとき、点Aを含む立体Pの体積は何㎤ですか。
(2) 立体Pについて、辺EK、HL上にそれぞれER:RK=HS:SL=2:1となるように点R、Sをとります。このとき、5点I、R、K、L、Sを頂点とする立体の体積は何㎤ですか。
(3) 辺AD上にAM:MD=1:1となるような点Mをとります。立体Pを3点M、H、Lを通る平面で切ったとき、点Aを含む立体の体積は何㎤ですか。
(本郷中学校 2024年 問題5)
【考え方】
(1)
はじめに、切断のきまり「同じ面上の2点を結ぶ」に従って、点Iと点K、点Kと点Lを結びます。
次に、切断のきまり「平行に向かい合う面の切り口は平行」に従って、AKと平行なJL、KLと平行なIJをかくと、立体Pが台形AEKIを底面とする、高さ6㎝の四角柱とわかります。
AI=6㎝×4/(4+5)=8/3㎝
EK=6㎝×2/(2+1)=4㎝
(8/3㎝+4㎝)×6㎝÷2×6㎝=120㎤
答え 120㎤
(2)
5点I、R、K、L、Sを頂点とする立体は、長方形RKLSを底面とする、高さ6㎝の四角すいです。
四角すいの体積は(底面積)×(高さ)÷3で求められます。
RK=4㎝×1/(2+1)=4/3㎝
6㎝×4/3㎝×6㎝÷3=16㎤
答え 16㎤
(3)
面AEHDが底面となるように立体Pを左に倒した図をかくと、作図がしやすいです。
はじめに、切断のきまり「同じ面上の2点を結ぶ」に従って、点Hと点L、点Hと点Mを結びます。
次に、「平行に向かい合う面の切り口は平行」に従って、HLと平行なMNをかきます。
最後に、同じ面上にある点Lと点Nの2点を結びます。
求める立体は、立体Pから、三角形DMH底面とする三角柱を平面で切断した「断頭三角柱DMH-JNL」を取り除いた立体です。
断頭三角柱の体積は(底面積)×(3つの高さの平均)で求められます。
120㎤-6㎝×3㎝÷2×(8/3㎝+8/3㎝+4㎝)/3=92㎤
答え 92㎤
本問は、切断のきまりと断頭三角柱の考え方を確認できる問題です。
(3)は、解答例のように立体を倒しておくと、断頭三角柱を作図しやすいでしょう。
なお、(2)を(3)の誘導問題と考えると、次のように、立体Pを四角柱、(2)の四角すい、三角すいの3つの立体に分けて体積を求めることができます。
2問目は、「2回切断」を含む問題です。
【問題】下の図のような底面が直角二等辺三角形の三角柱があります。辺BE上の点PはBP:PE=1:3となる点で、点Qは辺CF上の点です。5点D、E、F、Q、Pを頂点とする立体をVとし、立体Vの体積が15㎤であるとき、次の問いに答えなさい。
(1) 四角形EFQPの面積を求めなさい。
(2) FQの長さを求めなさい。
(3) 立体Vを3点A、E、Fを通る平面で切断したときの切り口をTとします。三角形AEFと切り口Tの面積の比を求めなさい。
(城北中学校 2024年 問題4)
【考え方】
(1)
立体Vは、底面が台形EFQPで、高さがDEの四角すいです。
四角すいの体積は(底面積)×(高さ)÷3で求められますから、台形EFQPの面積を□㎠とすると
□㎠×3㎝÷3=15㎤
□㎠=15㎤×3÷3㎝=15㎠
です。
答え 15㎠
(2)
台形EFQPの下底PEの長さは
8㎝×3/(1+3)=6㎝
です。
(FQ+6㎝)×3㎝÷2=15㎠
FQ=15㎠×2÷3㎝-6㎝=4㎝
答え 4㎝
(3)
点Aと点Eは面ADEB上に、点Aと点Fは面ADFC上にありますから、「同じ面上の2点を結ぶ」という切断のきまりに従うと、3点A、E、Fを通る平面は三角形AEFとわかります。
立体Vの辺DPと三角形AEFの辺AEとの交点をR、立体Vの辺DQと三角形AEFの辺AFとの交点をSとします。
「交わる面の辺の交点と交点を結ぶ」という2回切断のきまりに従って、交点Rと交点Sを結ぶと、切り口T(四角形EFSR)を作図できます。
(ア)から見た図の三角形ADRと三角形EPRは相似で、相似比は
AD:EP=8㎝:6㎝=4:3 … (ウ)
です。
また、(イ)から見た図の三角形ADSと三角形FQSも相似で、相似比は
AD:FQ=8㎝:4㎝=2:1 … (エ)
です。
三角形AEFと三角形ARSは角Aが共通な三角形で、(ウ)、(エ)より
AE:AR=7:4
AF:AS=3:2
ですから、面積比は
(7×3):(4×2)=21:8
です。
よって、三角形AEFと切り口Tの面積の比は
21:(21-8)=21:13
です。
答え 21:13
本問の(3)は、「交わる面の辺の交点と交点を結ぶ」という2回切断のきまりを確認できる問題です。
なお、(3)では、「1つの角が共通な三角形の面積比は、その角をはさむ2辺の積の比に等しい」という考え方を利用していますが、EとS(またはFとR)を直線で結んで、高さが等しい三角形を作る解き方でも構いません。
今回は、2024年度に男子中の入試に出された「切断」の問題をご紹介しました。
切断の問題のポイントは、「切断のきまりに従って作図をする」ことにあります。
1問目は1回切断の作図、2問目は2回切断の作図を確認できますので、既習範囲であればチャレンジしてみましょう。