第723回 男子中の入試問題 立体図形 7
「第723回 男子中の入試問題 立体図形 7」
これまで近年に男子中の入試で出された「立体図形」の問題を見てきました。
立体図形の最終回となる今回は、「水問題」について考えていきます。
1問目は水中におもりを入れる問題です。
【問題】下の図のような、水の入った直方体の水そうと直方体のおもりA、Bがあります。おもりAだけを正方形の面を下にして水そうの底面にぴったりとくっつくように入れたとき、水の高さはおもりAの高さと同じになりました。次に、おもりAを取り出して、おもりBだけを正方形の面を下にして水そうの底面にぴったりとくっつくように入れたとき、水の高さはおもりBの高さと同じになりました。このとき、おもりAの高さを求めなさい。
(明治大学付属中野中学校 2023年 問題3-(1))
【考え方】
水そうにおもりを入れる問題を解くときは、水そうを正面から見た図を横に並べてかくことが基本です。
このとき、横の長さには、原則として、底面積を書くようにします。
また、おもりを入れる前の図(図1)があると考えやすくなります。
図1と図3に着目します。
図1と図3の水の体積は同じですから、図3の水面を延長してできる図1のすき間(★)の体積と図3のおもりBの体積も同じです。
すき間の高さを□㎝とします。
12㎝×12㎝×□㎝=8㎝×8㎝×18㎝ → □㎝=8㎝
ですから、図1の水の高さは
18㎝-8㎝=10㎝
です。
また、図2のときの水の底面積(△㎠)は、
144㎠-4㎝×4㎝=128㎠
です。
図1と図2の水の体積は同じですから、図2の水の高さを■㎝とすると
144㎠×10㎝=128㎠×■㎝ → ■㎝=11.25㎝
です。
答え 11.25㎝
本問は、水中におもりを入れるときの考え方を確認できる問題です。
慣れないうちは見取り図で考え、考え方が身についてきたら、解答例のように正面から見た図を利用して解きましょう。
なお、おもりを入れる前と入れた後の様子を重ねた図で考える方法もあります。
2問目はグラフ問題です。
【問題】一辺の長さが30㎝の正方形を底面とし、高さが50㎝の直方体の形をした水そうがあります。この水そうに9本の直方体のブロックを並べます。直方体のブロックの底面はすべて一辺の長さが10㎝の正方形で、高さは10㎝のものが1つ、20㎝のものが2つ、30㎝のものが3つ、40㎝のものが3つあります。ただし、同じ高さのブロックは区別しないものとします。ブロックを倒したり傾けたり重ねたりせず、水そうの中にすき間なく並べることを考えます。たとえば、[図1]のようにブロックをすき間なく並べた場合、それを[図2]のように表すこととします。
高さが10㎝のブロックの真上からこの水そうが満水になるまで、毎分1Lの割合で水を注ぎます。ブロックを[図2]のように並べたとき、水を注いだ時間と水面の高さの関係をグラフに表すと、[図3]のようになります。ただし、水面の高さとは、水そうの底面から水そうの中でもっとも高い水面までの高さのことをいいます。
このとき、次の問いに答えなさい。
(1) [図3]のア~エにあてはまる数をそれぞれ求めなさい。
以下の問いでは、[図2]の高さが10㎝のブロックの位置と水を注ぐ位置は変えずに、それ以外のブロックの並べ方を変えていくことを考えます。ただし、ブロックや水そうの辺どうし、面どうしの間から水はもれないものとします。
(2) ブロックを[図4]のように並べる場合、この水そうが満水になるまでの水を注いだ時間と水面の高さの関係を、[図3]のように解答用紙のグラフに書き入れなさい。
水そうが満水になる前に、水面の高さが連続して変わらない時間がもっとも長くなるブロックの並べ方をしました。このとき、水を注いだ時間と水面の高さの関係をグラフに表すと、[図5]のようになります。
(3) [図5]のグラフになるようなブロックの並べ方の1つを、[図2]のように解答用紙のマス目に書き入れなさい。
(4) [図5]のグラフになるようなブロックの並べ方は全部で何通りありますか。
(浅野中学校 2024年 問題4 問題文一部変更)
【考え方】
(1)
水を1辺の長さが10㎝の立方体に分ける工夫をします。
1L/分=1000㎤/分 ですから、立方体1個分に水を入れる時間は
(10㎝×10㎝×10㎝)÷1000㎤/分=1分
です。
上の図より、
ア=1
イ=1+3=4
ウ=4+6=10
エ=10+9=19
です。
答え ア 1、 イ 4、 ウ 10、 エ 19
(2)
(1)は次のように表すこともできます。
[図4]の場合についても、これと同様の表し方て考えることにします。
[図4]の場合は[図1(図2)]の場合と異なり、凹み(赤色部分)があることに気をつけます。
凹みに水が入る間は、問題文中にある「水面の高さ」が変化しませんので、グラフは次の通りです。
答え 解説参照
(3)
[図4]のブロックの並べ方のように凹みがあると、「水面の高さ」が変化しない時間があります。
高さが40㎝のブロックが凹みになることはありませんが、それ以外のブロックがすべて凹みになると、[図5]のように「水面の高さ」が連続して変わらない時間を最も長くすることができます。
答え 解説参照(その他の並べ方は(4)の解説を参照)
(4)
3つある高さが40㎝のブロックのうちの2つが次の図の位置にあるとき、高さが20㎝と30㎝のブロックをどこに並べても、そのすべてを凹みにすることができます。
上の図でブロックを並べていない6つのマス目のについて、残った高さ40㎝のブロック1つの並べ方が6通りあり、続けて高さ20㎝のブロック2つを残りの5つのマス目のうちの2つのマス目に並べる方法が
5C2=(5×4)/(2×1)=10通り
あり、最後に残った3つのマス目に高さが30㎝のブロック3つを並べますから、これら6つのブロックの並べ方は
6通り×10通り×1通り=60通り
あります。
答え 60通り
本問の(1)と(2)はグラフ問題の基本が確認できる問題、(3)と(4)は水面の高さが変化しない理由を考える応用レベルの問題です。
(1)、(2)が正解できないときは「段差のある水そう」の問題で、(3)、(4)が正解できないときは「仕切りのある水そう」の問題で考え方のおさらいをしてみましょう。
今回は、2024年度と2023年度に男子中の入試で出された「水問題」をご紹介しました。
1問目のおもりを水中に入れる問題も、2問目の水面の変化のグラフの問題も、底面積の変化に着目することが基本となっています。
「水問題」が苦手なようでしたら、問題で与えられた見取り図だけで解けるような基本レベルの問題で正面から見た図にかき、かいた図を用いて水の体積、底面積、高さの関係をマスターすることから取り組んでみましょう。