第727回 男子中の入試問題 場合の数 2
「第727回 男子中の入試問題 場合の数 2」
前回から、近年に男子中の入試で出された「場合の数」について考えています。
今回は「ゲーム」をテーマにした問題を取り扱います。
1問目は「さいころ」に関する問題です。
【問題】下の図のように、Oを基準として、右に E1、E2、E3、…、左に W1、W2、W3、…、と目盛りをつけました。はじめにA君はOにいます。さいころを投げて、偶数の目が出たらその目の数だけ右へ進みます。また、奇数の目が出たらその目の数だけ左へ進みます。このとき、次の問いに答えなさい。
(1) さいころを4回投げたところ、A君はOにもどりました。そのうち1回目は4の目が、4回目は3の目が出ました。このとき、さいころの目の出方は全部で何通りありますか。
(2) さいころを3回投げたところ、A君はE1にいました。このとき、さいころの目の出方は全部で何通りありますか。
(明治大学付属中野中学校 2024年 問題3)
【考え方】
(1)
2回目と3回目について、場合分けをします。
・右→左 と移動する場合
4+□=■+3 → 1+□=■
よって、
(□、■)=(2、3)、(4、5)
の2通りがあります。
・左→右 と移動する場合
4+□=■+3 → 1+□=■
よって、
(□、■)=(2、3)、(4、5)
の2通りがあります。
2通り+2通り=4通り
答え 4通り
(2)
(1)より、移動する順ではなく、移動する量に着目することが必要とわかります。
A君がE1にいるのは、右に移動する量の和が左に移動する量の和よりも1大きいときです。
このことを踏まえながら、場合分けをして調べていきます。
・右へ3回、左へ0回移動する場合
「偶数+偶数+偶数=1 」はなりませんから、このような移動の仕方はありません。
・右へ2回、左へ1回移動する場合
(2、2、3)→ さいころの目の出方は3通りです。
(2、4、5)→ さいころの目の出方は 3通り×2通り×1通り=6通り です。
3通り+6通り=9通り
・右へ1回、左へ2回移動する場合
左に移動する量の和は「奇数+奇数=偶数」です。
右に移動する量の和はそれよりも1大きいので奇数となりますが、右に移動するときの目は偶数なので、このような移動の仕方はありません。
・右へ0回、左へ3回移動する場合
A君はOよりも左に移動しますから、E1にいるという条件にあてはまりません。
以上から、目の出方は全部で
0通り+9通り+0通り+0通り=9通り
です。
答え 9通り
本問は、「移動する量 → 目の出方」の順に考えることがポイントとなる問題で、(1)が(2)のヒントになっています。
2問目は「コイン」の問題です。
【問題】A君とB君で、1枚のコインを交互に1回ずつ投げるゲームをします。ゲームは2人のうち、どちらかが2回連続で表が出るまで続けます。コインの表が出たら3点、裏が出たら1点もらえます。A君から投げ始め、A君B君合わせて9回コインを投げ終えたところで、ゲームは終わりました。このとき、あとの問いに答えなさい。
問1 ゲームが終わったとき、コインの表裏の出方は何通り考えられますか。
問2 ゲーム終了時に、B君はA君よりも得点が高くなる可能性はありますか。解答用紙のある・ないのどちらかを○で囲みなさい。また、ある場合はその例を1つ答え、ない場合はその理由を答えなさい。
(東京都市大学付属中学校 2024年 問題5)
【考え方】
問1
A君から投げ始めますから、A君が1回目、3回目、5回目、7回目、9回目に投げ、B君が2回目、4回目、6回目、8回目に投げます。
そして、9回目に投げ終えたところでゲームが終わりましたから、A君が7回目と9回目に連続して表を出したことになります。
連続して表が出ないということは、表が出る前の回は裏に限られ、裏が出る前の回は表でも裏でもよいということになりますので、2人が投げたコインの表裏の出方は次の表のようになります。
3通り×8通り=24通り
答え 24通り
問2
A君の得点が最小になるのは、1回目と3回目と5回目に裏が出たときです。
3点×2回+1点×3回=9点
B君の得点が最大になるのは、2回目と6回目に表が、4回目と6回目に裏が出たとき、または、その逆順の場合です。
3点×2回+1点×2回=8点
ですから、B君がA君よりも得点が高くなることはありません。
こたえ ない 理由:解説参照
本問の前半は「踏み台解法」の利用、後半は「最大と最小」の問題です。
踏み台解法は「ある場合の数を、その1つ前の場合の数から求める」という大切な考え方です。
踏み台解法を未習の場合や苦手な場合は、次のような樹形図をかいてもよいでしょう。
最後は「すごろく」の問題です。
【問題】ゆきお君とつよし君は、下の図のような、ます目と1から10までの数が書かれたルーレットを使って、次のようなゲームをしました。
・はじめは2人とも自分のコマを「S」の位置に置く
・ゆきお君、つよし君の順番でルーレットを回し、それぞれがルーレットに書かれた数だけ自分のコマを進める。ただし、2巡目以降もゆきお君、つよし君の順番でルーレットを回し、止まっている位置からそれぞれルーレットに書かれた数だけ自分のコマを進める
(例)1巡目に7が出た場合はS→A→B→C→D→G→D→Cと進み、2巡目に5が出た場合はC→B→A→S→A→Bと進む
・コマが「D」の位置にちょうど止まった場合は1回休みとなり、次の自分の順番のときに1回だけルーレットを回すことができない
・コマが先に「G」の位置にちょうど止まった方が勝ちとなり、ゲームは終了とする
次の問いに答えなさい。
1) ゆきお君が2巡目で勝つとき、2人のルーレットの数の出方は全部で何通りありますか。
2) ゆきお君が3巡目で勝つとき、2人のルーレットの数の出方は全部で何通りありますか。
(立教池袋中学校 2024年 問題10)
【考え方】
1)
コマが「G」の位置に止まるのは、1巡目と2巡目に出た数の和が5または15のときです。
このとき、1巡目に4、5、6が出ると、「2巡目に勝つ」という条件にあてはまらないことに注意します。
・和が5となるとき
(1巡目、2巡目)=(1、4)、(2、3)、(3、2) … 3通り
・和が15となるとき
(1巡目、2巡目)=(7、8)、(8、7)、(9、6)、(10、5) … 4通り
ですから、ゆきお君のルーレットの数の出方は
3通り+4通り=7通り
です。
つよし君が自分の順番のときにゴールできないルーレットの数の出方は、5以外の9通りです。
7通り×9通り=63通り
こたえ 63通り
(別解)
1巡目に4、5、6以外の数が出てコマがS、A、B、Cのいずれかにあるとき、2巡目にルーレットを回してGの位置にちょうど止まるような数が必ず1通りずつあります。
(10通り-3通り)×1通り=7通り … ゆきお君のルーレットの数の出方
2)
数の和に着目する解き方もありますが、ここでは1)の別解の考え方を利用することにします。
はじめに、ゆきお君のルーレットの数の出方について考えます。
1巡目のルーレットを回して4、5、6以外の数が出ればコマはD、G以外のます目に進み、そのます目から2巡目にルーレットを回してコマがD、G以外のます目に進む数の出方がそれぞれ7通りあり、さらに3巡目にルーレットを回したときコマがGの位置にちょうど止まるような数が必ず1通りずつあります。
(例)
また、1巡目のルーレットを回して4または6が出ればコマはDのます目に進み、2巡目に1回休んだ後、3巡目に1が出ればコマはGの位置にちょうど止まります。
7通り×7通り×1通り+2通り×1通り=51通り … ゆきお君のルーレットの数の出方
次に、つよし君のルーレットの数の出方について考えます。
1巡目のルーレットを回して4、5、6以外の数が出ればコマはD、G以外のます目に進み、そのます目から2巡目にルーレットを回してコマがG以外のます目に進む数の出方がそれぞれ9通りあります。
(例)
また、1巡目のルーレットを回して4または6が出ればコマはDのます目に進み、2巡目は休みとなり、コマはDにます目にとどまります。
7通り×9通り+2通り=65通り … ゆきお君のルーレットの数の出方
ですから、2人のルーレットの数の出方は全部で
51通り×65通り=3315通り
です。
こたえ 3315通り
本問は、1)だけの正解することを目指すときは、出た目の和に着目する解き方でもよいと思います。
しかし、2)の正解も得たいときは、ゴールする1巡前から考える「踏み台解法」を使えることが望ましいです。
今回は、2024年度に男子中の入試で出されたゲームをテーマとする問題をご紹介しました。
樹形図などの書き出しで問題を解くことができるときは、場合分けの仕方や「1つ前の場合の数に着目する」踏み台解法のマスターを目指しましょう。