小川大介の中学受験合格を実現する逆算受験術

中学受験情報局『かしこい塾の使い方』 -> 主任相談員の中学受験ブログ -> 前田昌宏の中学受験が楽しくなる算数塾 -> 速さの練習問題  -> 第739回 女子中の入試問題 速さ 2

第739回 女子中の入試問題 速さ 2

このエントリーをはてなブックマークに追加
速さの練習問題 2025年09月06日18時00分

「第739回 女子中の入試問題 速さ 2」

前回より、近年の女子中の入試で出された「速さ」を取り扱っています。

今回は「速さと比」の基本問題を中心に考えていきます。

 

1問目は、旅人算の問題です。

 

【問題】AさんとBさんは、同時に駅を出発して公園まで行きます。2人の歩く速さは、Aさんが分速80m、Bさんが分速55mです。Aさんが公園にとう着したとき、Bさんは公園の手前300mのところにいました。駅から公園までの道のりは何mですか。

(国府台女子学院中学部 第1回 2025年 問題2-(3) 問題文一部変更)

 

【考え方】

条件は次のような線分図で表せます。

前回見た「旅人算」の公式を利用すると

(80m/分-55m/分)×(●~○の時間)=300m

となりますから、線分図のような状態になるのは出発してから

300m÷25m/分=12分後

とわかります。

80m/分×12分=960m

答え 960m

 

(別解)

線分図解法の原則である「→に距離の比をかく」を利用することができます。

●~○の時間が2人に共通で、時間が同じときに進む距離の比と速さの比は等しいです。

速さの比 80m/分:55m/分=16:11 → 距離の比 16:11

⑯-⑪=300m → ①=300m÷5=60m

60m×16=960m

 

本問は、旅人算の公式や速さと比の関係を確認できる問題です。

比を利用するときは、解答例のように「時間が共通な→に着目する」や、下の別解のように「距離が共通な→に着目する」など、原則として、「共通」を利用します。

速さと比の問題が苦手なときは、本問題のように「比を使わなくても解ける問題」を使って比で解く練習をしてみましょう。

 

(別解)

同じ距離を進むとき、速さの比と時間の比は逆比の関係です。

300m÷55m/分=60/11分 … 駅から公園までにかかる時間の差

16□-11□=60/11分 → 1□=12/11分

80m/分×(12/11分×11)=960m

 

では、2問目です。

 

【問題】姉と妹が100m走をしたところ、姉がゴールしたとき、妹はゴールの手前15mの位置にいました。2人が再びそれぞれ同じ速さで走り、同時にゴールするためには、姉はスタートの位置を何m後方にすれば良いですか。ただし、2人は同時に出発するものとします。

(大妻中学校 第2回 2025年 問題3)

 

【考え方】

はじめの100m走の様子を線分図に表します。

「同時マーク(同じ時刻にいる位置を示す印 ●や○)」のある→に着目すると、●から○までの同じ時間に、姉は100m、妹は

100m-15m=85m

進むことがわかります。

同じ時間に進む距離の比 姉:妹=100m:85m=20:17 … (ア)

次に2回目の100m走の様子を線分図に表します。

「同時に出発(●)」して「同時にゴール(■)」するという条件がありますから、時間(●~■)は同じです。

ですから(ア)より、姉が走った距離を⑳mとすると、妹が走った距離は⑰mです。

⑰m=100m → ①m=100/17m

?m=⑳m-⑰m=③m=100/17m×3=300/17m=17 11/17m

答え 17 11/17m

 

本問は、速さと比の関係を確認できる問題です。

比を利用する問題であることに気づけないときは、線分図に表すことで速さの3公式が使えないことを確認しましょう。

 

続けて、3問目です。

 

【問題】A地点とB地点を往復するとき、行きは20分かかり、帰りは行きより毎分45m遅い速さで歩いたため、36分かかりました。A、Bの間の道のりは何mですか。

(品川女子学院中等部 算数1教科 2025年 問題10 問題文一部変更)

 

【考え方】

往復する様子を線分図に表します。

2つの→に着目すると、距離が同じです。

距離が同じとき、時間の比と速さの比は逆比の関係にあります。

行きの速さを⑨m/分、帰りの速さを⑤m/分とすると、その差の④m/分が48m/分にあたります。

①m/分=48m/分÷4=12m/分 → ⑨m/分=108m/分 … 行きの速さ

108m/分×20分=2160m

答え 2160m

 

本問も、速さと比の関係を確認できる問題です。

「往復する」ときは、「行きと帰りの道のりが同じ」であることに着目します。

 

最後は、応用問題です。

 

【問題】A地点からB地点までは上り坂、B地点からC地点までは下り坂となっているハイキングコースがあります。平地を分速60mで歩く葉子さんは、上り坂だと平地より2割遅く歩き、下り坂だと平地より2割速く歩きます。葉子さんはA地点を出発し、B地点を通り、C地点まで歩いて往復したところ、行きより帰りの方が6分多くかかりました。A地点からB地点までの道のりとB地点からC地点までの道のりを比べたとき、どちらが何m長いですか。

(横浜雙葉中学校 1期 2025年 問題1-(4))

 

【考え方】

60m/分×(1-0.2)=48m/分 … 上り坂の速さ

60m/分×(1+0.2)=72m/分 … 下り坂の速さ

坂道を往復する様子を、線分図で表します。

行きより帰りの方が時間がかかったので、行きよりも帰りの方が上り坂が長かったことがわかります。

はじめに、AB間の2つの→に着目します。

2つの→の距離は同じなので、速さの比と時間の比は逆比の関係です。

このことはBC間についてもいえますから、かかる時間を次のように表すことができます。

 

③分+2□分+6分=②分+3□分 → ①分+6分=1□分

両辺を3倍すると

③分+18分=3□分

となりますから、AからBまでを上るよりもCからBまでを上る方が18分多くかかります。

48m/分×18分=864m

答え B地点からC地点までの道のりの方が864m長い

 

本問は、「坂道の問題」と呼ばれるものです。

坂道の問題を解くときは、解答例のように同じ区間にかかる時間の比に着目する解き方と、下の別解のように同じ距離を上り下りするときの時間の差に着目する解き方の2つが主にあります。

 

(別解)

BC間にAB=BDとなるようなD地点を考えると、AD間にかかる時間は行きも帰りも同じです。

よって、時間の差の6分はDC間で生じたことになります。

DからCまで下るのに②分かかるとすると、CからDまで上るのに③分かかります。

③分-②分=6分 → ③分=18分

48m/分×18分=864m

 

今回は、2025年度に女子中で出された「速さと比」の問題をご紹介しました。

3問目までは基本レベルの問題ですから、もし、正解できないようでしたら、どこで間違えたのかを明確にして、正しい解き方をマスターしましょう。

4問目の坂道問題は応用レベルの問題です。

しかし、坂道の問題も定番問題の一つですので、既習であれば正解したいところです。

間違えたときは、解答例と別解の2つの解き方のうち、考えやすい方法から習得していきましょう。

このエントリーをはてなブックマークに追加
速さの練習問題 / 中学入試の算数問題 2025年09月06日18時00分
主任相談員の前田昌宏
中学受験情報局『かしこい塾の使い方』の主任相談員である前田昌宏が算数の面白い問題や入試問題を実例に図表やテクニックを交えて解説します。
Copyright (c) 2008- 中学受験情報局『かしこい塾の使い方』 All rights reserved.