第740回 女子中の入試問題 速さ 3
「第740回 女子中の入試問題 速さ 3」
近年の女子中の入試で出された「速さ」の問題について考えています。
今回も「速さと比」の問題を中心に見ていきます。
1問目は、前回の最後にもありました「坂道の問題」です。
【問題】A地点からB地点までは上り坂で、B地点からC地点までは下り坂です。花子さんは上り坂を時速3㎞、下り坂を時速4㎞で進みます。A地点を出発し,B地点を通ってC地点までの道を往復したところ、行きは4時間30分、帰りは4時間15分かかりました。このとき、次の問いに答えなさい。
(1) 花子さんは、下り坂1㎞を進むよりも上り坂1㎞を進む方が何分多く時間がかかりますか。
(2) A地点からB地点までの距離は、B地点からC地点までの距離より何㎞長いですか。
(3) A地点からB地点までの距離は何㎞ですか。
(立教女学院中学校 2025年 問題4)
【考え方】
(1)
1㎞÷4㎞/時×60=15分 … 下り坂1㎞を進むのにかかる時間
1㎞÷3㎞/時×60=20分 … 上り坂1㎞を進むのにかかる時間
20分-15分=5分
答え 5分
(2)
行きにかかった時間の方が帰りにかかった時間よりも多いので、行きの方が帰りよりも上り坂が長かったとわかります。
ですから、花子さんがAC間を往復する様子は、次のように表すことができます。(考えやすくするため、いったん「時間」を「分単位」で表しています。)
よって、往復の時間を次のような式で考えることができます。
(1)より1㎞の坂道を上り下りする時間の差が5分ですから、AD間の距離は1㎞の
15分÷5分=3倍
の3㎞とわかり、これが AB間の距離とBC間の距離の差です。
答え 3㎞
(3)
D地点からB地点までにかかる時間を求めます。
3㎞÷3㎞/時=1時間 … A地点→D地点にかかる時間
4時間30分-1時間=3.5時間 … D地点→B地点→C地点にかかる時間
DB間の距離とBC間の距離は同じですから、速さの比と時間の比は逆比の関係です。
速さの比 (D → B):(B → C)=3㎞/時:4㎞/時=3:4
↓
時間の比 (D → B):(B → C)=4:3
3.5時間×4/(4+3)=2時間 … D地点→B地にかかる時間
ですから、A地点からB地点までの距離は
3㎞×(1時間+2時間)=9㎞
です。
答え 9㎞
本問は、差集め算を利用して解く坂道の問題です。
もし、(1)が(2)誘導であることに気づけず、前回と同じようにAD間にかかる時間を比で考えているときは、それでも構いませんので、答え合わせをするとき、差集め算が利用できることも確認しましょう。
2問目も、定番の「線路沿いの旅人算」問題です。
【問題】線路に沿った道を、自転車に乗り毎時15㎞で走っている人がいます。この人は、16分間隔で運行している電車と12分おきにすれ違います。この電車は毎時何㎞で走っているか求めなさい。
(恵泉女学園中学校 第1回 2025年 問題2-(3))
【考え方】
「16分間隔で運行」とは、ある電車がいる地点に次の電車が16分後に来るという意味です。
ですから、「12分おきにすれ違う」は、次のように表せます。
自転車はAB間を、電車はCB間をそれぞれ12分で走りますから、電車がAB間にかかる時間は
16分-12分=4分
です。
AB間の2つの → に着目すると距離が同じですから、速さの比と時間の比は逆比の関係です。
時間の比 自転車:電車=12分:4分=3:1
↓
速さの比 自転車:電車=1:3
よって、電車の速さは
15㎞/時×3=45㎞/時
です。
答え 毎時45㎞
本問は、線路沿いのすれ違いや追い越しという定番の問題です。
電車が等間隔に走っていることを図に表すと考えやすくなります。
なお、次のような式で考えることもできます。
(電車の速さ+自転車の速さ)×12分=(電車の速さ)×16分
↓
(電車の速さ+自転車の速さ):(電車の速さ)=④:③
自転車の速さ=④-③=①
③=15㎞/時×3=45㎞/時
では、3問目です。
【問題】地点A、B、Cがこの順で真っ直ぐな道に沿ってあり、AB間とBC間の距離の比は3:1です。ある日。愛さんは地点Aから地点Cに向かって、望さんは地点Cから地点Aに向かって同時に歩き始めました。望さんは地点Bで忘れ物に気づき、Cまで歩いて戻り、すぐに自転車に乗って徒歩の3倍の速さでAに向かったところ、地点Bで愛さんに出会いました。愛さんと望さんの歩く速さはそれぞれ一定です。次の問いに答えなさい。
(1) 愛さんと望さんの歩く速さの比を、最も簡単な整数の比で答えなさい。
(2) 望さんが忘れ物をしなかった場合、望さんは地点Bより150m進んだ場所で愛さんと出会っていました。AC間の距離を求めなさい。
(東洋英和女学院中学部 A・帰国生 2025年 問題11)
【考え方】
(1)
2人が進む様子は、次のように表すことができます。
望さんの3つの → の距離はどれも同じですから、速さの比と時間の比は逆比の関係です。
速さの比 徒歩:自転車=1:3
↓
時間の比 徒歩:自転車=3:1
愛さんは距離が3であるAB間を
③分+③分+①分=⑦分
で歩き、望さんは距離が1であるCB間を③分で歩きます。
線分図を見ても、愛さんと望さんについて条件が距離共通や時間共通となる → が見つかりません。
このように、条件が共通な → が見つからないときは、「速さの3公式(ここでは 距離 ÷ 時間 = 速さ)」を比で利用します。
答え 9:7
(2)
望さんが忘れ物をしなかった場合、2人が進む様子は、次のように表すことができます。
2つの → の時間が同じ(●~△)ですから、速さの比と距離の比は同じです。
AC=⑨m+⑦m=⑯m
AB=⑯m×3/(3+1)=⑫m
⑫m-⑨m=150m → ①m=150m÷(12-9)=50m
よって、AC間の距離は
50m×16=800m
です。
答え 800m
本問は、比による「速さの3公式」の利用方法を確認できる問題です。
線分図を利用するときは、はじめに共通な条件をのある → を探し、そのような → が見つからないときは解答例のように比で「速さの3公式」を用いることを考えます。
今回は、2025年度に女子中で出された「速さと比」の応用レベルの問題をご紹介しました。
応用レベルではありますが、1問目の坂道の問題、2問目の線路沿いの旅人算は定番ですので、習い終えていたら正解させたい問題です。
3問目の「比を使った速さの3公式」も大切な解き方ですので、もし、間違えるようでしたら、すぐにおさらいをしましょう。