第722回 男子中の入試問題 立体図形 6
「第722回 男子中の入試問題 立体図形 6」
これまで、近年に男子中の入試で出された「立体図形」の中から、「求積」、「回転体」、「立体図形の見方」、「立体の切断」がテーマの問題を見てきました。
今回は「立体図形の移動」を取り扱います。
1問目は円すいを移動させる問題です。
【問題】体積が37.68㎤の円すいを図のように横にしてすべらないように転がしたところ、半径5㎝の点線の円上を1周するのに、円すいは1 2/3回転しました。このとき、次の問いに答えなさい。ただし、円周率は3.14とします。
(1) 円すいの底面の半径を答えなさい。
(2) 円すいの高さを答えなさい。
(3) 下の図のように、この円すいを立てて、底面の円の中心が点線の円上を1周するように動かしてできる立体の体積を答えなさい。
(日本大学豊山中学校 2024年 問題6)
【考え方】
(1)
円すいは5/3回転して点線の円上を1周しますから、円すいの底面の円の円周と点線の円の円周の3/5が同じ長さです。
円すいの底面の半径を□㎝とします。
□㎝×2×3.14=5㎝×2×3.14×3/5 → □㎝=3㎝
答え 3㎝
(別解)
円すいの特徴である「底面の半径/母線=1/1周するときの回転数」を利用して、
□㎝/5㎝=1/(5/3)回転
□㎝/5㎝=1÷5/3回転
□㎝/5㎝=1×3/5=3/5 → □㎝=3㎝
のように求めることもできます。
(2)
円すいの体積は、(底面積)×(高さ)÷3で求められます。
円すいの高さを■㎝とします。
3㎝×3㎝×3.14×■㎝÷3=37.68㎤ → ■=37.68㎤÷9.42㎠=4㎝
答え 4㎝
(3)
立体図形が移動してできる立体の考え方は、「立体図形を正面から見たときに見える図形が移動する様子で考える」が基本です。
ですから、円すいの底面の中心をO、点線の円の中心をO’とすると、円すいが1周してできる立体は、OO’と底辺が重なる二等辺三角形ABCが1周してできる回転体と同じです。
「回転体の体積を求めるときは、回転体の断面の図と見取り図をかく」が基本の解き方です。
見取り図から、求める立体が円すい(大)から円すい(小)と円すい台を取り除いたものとわかります。
三角形ABCはAB=ACの二等辺三角形、AO”とBO’は平行ですから、○印をつけた角の大きさはどれも同じです。(下図)
三角形BOAは、底辺BOと高さAOの比が
3㎝:4㎝=3:4
の直角三角形(左上図)で、三角形BOAと三角形BO’D、三角形AO”D、三角形CO’Eはどれも相似な三角形ですから、それぞれの三角形の底辺と高さの比も 3:4 です。
BO’=8㎝、AO”=5㎝、CO’=5㎝-3㎝=2㎝
なので、三角形BO’D、三角形AO”D、三角形CO’Eが1回転してできる円すいの体積比は
(8×8×8):(5×5×5):(2×2×2)=512:125:8
です。
CO’=2㎝ より
EO’=2㎝×4/3=8/3㎝
なので、体積比の8にあたる三角形CO’Eが1回転してできる円すいの体積は
2㎝×2㎝×3.14×8/3㎝÷3=2512/225㎤
です。
2512/225㎤÷8=314/225㎤ … 体積比の1にあたる体積
314/225㎤×{512-(125×2-8)}=376.8㎤
答え 376.8㎤
本問は、円すいの特徴と移動させる立体の見方を確認できる問題です。
(1)の別解で用いた「底面の半径/母線=おうぎ形(円すいの側面)の中心角/360度=1/1周するときの回転数」は、「母線×底面の半径×円周率=円すいの側面積」とともに大切な特徴です。
もし、忘れていたときは、理由といっしょに覚え直しましょう。
また、立体図形の移動を正面から見たときに見える平面の移動とする考え方も重要です。
2問目は、直方体を組み合わせた立体を移動させる問題です。
【問題】図1は、対角線の長さが2㎝の正方形を底面とする、高さが3㎝の直方体①、②、③、④、⑤の計5個を組み合わせた立体です。次の各問いに答えなさい。ただし、円周率は3.14を用いなさい。
(1) 図1の立体の体積は何㎤ですか。
(2) 図2のように、図1の立体を2点A、Bを通る直線ℓのまわりに1回転させました。できた立体の体積は何㎤ですか。
(3) 図3のように、図2の立体から直方体③、④,⑤の計3個を取り除き、直線ℓのまわりに1回転させました。できた立体の体積は何㎤ですか。
(高輪中学校 2023年 問題5 問題文一部変更)
【考え方】
(1)
2㎝×2㎝÷2=2㎠ … 直方体の底面積
2㎠×3㎝×5個=30㎤
答え 30㎤
(2)
1問目と同様に、回転する立体を正面から見たときに見える図形が回転すると考えます。
ここでいう「正面」とは、左下図のように回転の軸から最も遠い点に着目して立体を見る向きのことです。
さらに、赤色部分のうち、回転の軸の右側にある長方形は半回転すると回転の軸の左側にある図形と重なるので、省いて考えることができます。
以上から、求める立体図形は、縦の長さが3㎝、横の長さが 2㎝×2=4㎝ の長方形ACDBが直線ℓのまわりを1回転してできる、底面の半径が4㎝、高さが3㎝の円柱です。
4㎝×4㎝×3.14×3㎝=150.72㎤
答え 150.72㎤
(3)
回転する図形が回転の軸から離れているときは、回転の軸から最も遠い点の動きと最も近い点の動きの両方に着目します。
ですから、赤色の長方形ACDBが1回転してできる円柱から、青色の長方形AEFBが1回転してできる円柱を取り除いた立体ができます。
AEは対角線の長さが2㎝の正方形の辺ですから、
□㎝×□㎝=2㎝×2㎝÷2 → □㎝×□㎝=2㎠
です。
(4㎝×4㎝×3.14-□㎝×□㎝×3.14)×3㎝
=(16㎠-2㎠)×3.14×3㎝
=131.88㎤
答え 131.88㎤
本問も、立体図形を回転させるときの考え方を確認できる問題です。
平面図形のときと同じように、回転の軸から最も遠い点と最も近い点の動きに着目することがポイントです。
今回は、2024年度と2023年度に男子中の入試で出された「立体図形の移動」の問題をご紹介しました。
「立体図形の移動」は、体積や表面積を求める計算公式の他に、立体図形の見方、着目する点などの知識を必要とする問題です。
このテーマの問題が苦手なときは、はじめに計算公式を確認し、次に移動する立体図形の中にある三角形や長方形などの平面図形の見つけ方を練習してみましょう。