小川大介の中学受験合格を実現する逆算受験術

中学受験情報局『かしこい塾の使い方』 -> 主任相談員の中学受験ブログ -> 前田昌宏の中学受験が楽しくなる算数塾 -> 速さの練習問題  -> 第740回 女子中の入試問題 速さ 3

第740回 女子中の入試問題 速さ 3

このエントリーをはてなブックマークに追加
速さの練習問題 2025年09月13日18時00分

「第740回 女子中の入試問題 速さ 3」

近年の女子中の入試で出された「速さ」の問題について考えています。

今回も「速さと比」の問題を中心に見ていきます。

 

1問目は、前回の最後にもありました「坂道の問題」です。

 

【問題】A地点からB地点までは上り坂で、B地点からC地点までは下り坂です。花子さんは上り坂を時速3㎞、下り坂を時速4㎞で進みます。A地点を出発し,B地点を通ってC地点までの道を往復したところ、行きは4時間30分、帰りは4時間15分かかりました。このとき、次の問いに答えなさい。

(1) 花子さんは、下り坂1㎞を進むよりも上り坂1㎞を進む方が何分多く時間がかかりますか。

(2) A地点からB地点までの距離は、B地点からC地点までの距離より何㎞長いですか。

(3) A地点からB地点までの距離は何㎞ですか。

(立教女学院中学校 2025年 問題4)

 

【考え方】

(1)

1㎞÷4㎞/時×60=15分 … 下り坂1㎞を進むのにかかる時間

1㎞÷3㎞/時×60=20分 … 上り坂1㎞を進むのにかかる時間

20分-15分=5分

答え 5分

 

(2)

行きにかかった時間の方が帰りにかかった時間よりも多いので、行きの方が帰りよりも上り坂が長かったとわかります。

ですから、花子さんがAC間を往復する様子は、次のように表すことができます。(考えやすくするため、いったん「時間」を「分単位」で表しています。)

よって、往復の時間を次のような式で考えることができます。

(1)より1㎞の坂道を上り下りする時間の差が5分ですから、AD間の距離は1㎞の

15分÷5分=3倍

の3㎞とわかり、これが AB間の距離とBC間の距離の差です。

答え 3㎞

 

(3)

D地点からB地点までにかかる時間を求めます。

3㎞÷3㎞/時=1時間 … A地点→D地点にかかる時間

4時間30分-1時間=3.5時間 … D地点→B地点→C地点にかかる時間

DB間の距離とBC間の距離は同じですから、速さの比と時間の比は逆比の関係です。

速さの比  (D → B):(B → C)=3㎞/時:4㎞/時=3:4

時間の比  (D → B):(B → C)=4:3

3.5時間×4/(4+3)=2時間 … D地点→B地にかかる時間

ですから、A地点からB地点までの距離は

3㎞×(1時間+2時間)=9㎞

です。

答え 9㎞

 

本問は、差集め算を利用して解く坂道の問題です。

もし、(1)が(2)誘導であることに気づけず、前回と同じようにAD間にかかる時間を比で考えているときは、それでも構いませんので、答え合わせをするとき、差集め算が利用できることも確認しましょう。

 

2問目も、定番の「線路沿いの旅人算」問題です。

 

【問題】線路に沿った道を、自転車に乗り毎時15㎞で走っている人がいます。この人は、16分間隔で運行している電車と12分おきにすれ違います。この電車は毎時何㎞で走っているか求めなさい。

(恵泉女学園中学校 第1回 2025年 問題2-(3))

 

【考え方】

「16分間隔で運行」とは、ある電車がいる地点に次の電車が16分後に来るという意味です。

ですから、「12分おきにすれ違う」は、次のように表せます。

自転車はAB間を、電車はCB間をそれぞれ12分で走りますから、電車がAB間にかかる時間は

16分-12分=4分

です。

AB間の2つの → に着目すると距離が同じですから、速さの比と時間の比は逆比の関係です。

時間の比 自転車:電車=12分:4分=3:1

速さの比 自転車:電車=1:3

よって、電車の速さは

15㎞/時×3=45㎞/時

です。

答え 毎時45㎞

 

本問は、線路沿いのすれ違いや追い越しという定番の問題です。

電車が等間隔に走っていることを図に表すと考えやすくなります。

なお、次のような式で考えることもできます。

(電車の速さ+自転車の速さ)×12分=(電車の速さ)×16分

(電車の速さ+自転車の速さ):(電車の速さ)=④:③

自転車の速さ=④-③=①

③=15㎞/時×3=45㎞/時

 

では、3問目です。

 

【問題】地点A、B、Cがこの順で真っ直ぐな道に沿ってあり、AB間とBC間の距離の比は3:1です。ある日。愛さんは地点Aから地点Cに向かって、望さんは地点Cから地点Aに向かって同時に歩き始めました。望さんは地点Bで忘れ物に気づき、Cまで歩いて戻り、すぐに自転車に乗って徒歩の3倍の速さでAに向かったところ、地点Bで愛さんに出会いました。愛さんと望さんの歩く速さはそれぞれ一定です。次の問いに答えなさい。

(1) 愛さんと望さんの歩く速さの比を、最も簡単な整数の比で答えなさい。

(2) 望さんが忘れ物をしなかった場合、望さんは地点Bより150m進んだ場所で愛さんと出会っていました。AC間の距離を求めなさい。

(東洋英和女学院中学部 A・帰国生 2025年 問題11)

 

【考え方】

(1)

2人が進む様子は、次のように表すことができます。

望さんの3つの → の距離はどれも同じですから、速さの比と時間の比は逆比の関係です。

速さの比 徒歩:自転車=1:3

時間の比 徒歩:自転車=3:1

愛さんは距離が3であるAB間を

③分+③分+①分=⑦分

で歩き、望さんは距離が1であるCB間を③分で歩きます。

線分図を見ても、愛さんと望さんについて条件が距離共通や時間共通となる → が見つかりません。

このように、条件が共通な → が見つからないときは、「速さの3公式(ここでは 距離 ÷ 時間 = 速さ)」を比で利用します。

答え 9:7

 

(2)

望さんが忘れ物をしなかった場合、2人が進む様子は、次のように表すことができます。

2つの → の時間が同じ(●~△)ですから、速さの比と距離の比は同じです。

AC=⑨m+⑦m=⑯m

AB=⑯m×3/(3+1)=⑫m

⑫m-⑨m=150m → ①m=150m÷(12-9)=50m

よって、AC間の距離は

50m×16=800m

です。

答え 800m

 

本問は、比による「速さの3公式」の利用方法を確認できる問題です。

線分図を利用するときは、はじめに共通な条件をのある → を探し、そのような → が見つからないときは解答例のように比で「速さの3公式」を用いることを考えます。

 

今回は、2025年度に女子中で出された「速さと比」の応用レベルの問題をご紹介しました。

応用レベルではありますが、1問目の坂道の問題、2問目の線路沿いの旅人算は定番ですので、習い終えていたら正解させたい問題です。

3問目の「比を使った速さの3公式」も大切な解き方ですので、もし、間違えるようでしたら、すぐにおさらいをしましょう。

このエントリーをはてなブックマークに追加
速さの練習問題 / 中学入試の算数問題 2025年09月13日18時00分
主任相談員の前田昌宏
中学受験情報局『かしこい塾の使い方』の主任相談員である前田昌宏が算数の面白い問題や入試問題を実例に図表やテクニックを交えて解説します。
Copyright (c) 2008- 中学受験情報局『かしこい塾の使い方』 All rights reserved.