第725回 男子中の入試問題 文章題 2
「第725回 男子中の入試問題 文章題 2」
前回は、近年に男子中の入試で出された「文章題」の中から、「和と差の文章題」について考えました。
今回は、範囲のある問題、やりとり算、年令算を見ていきます。
では、1問目です。
【問題】次郎くんはある本を読み始めて最初の5日間は同じページ数を読み進め、そのあとの3日間は旅行中のため1日あたり6ページ減らして読みました。旅行から帰ったあとは毎日、旅行中の1日あたりの4倍のページ数を読んだところ、旅行から帰って4日目にはじめて200ページを超え、この日にちょうどこの本を読み終えました。この本は全部で何ページありますか。
(早稲田中学校 2024年 問題1-(2))
【考え方】
「旅行中の1日あたりの4倍のページ数」という条件に着目します。
旅行中は1日あたり①ページ読んだとすると、最初の5日間は1日あたり(①+6)ページ、旅行から帰った後は1日あたり④ページ読んだことになります。
また、「4日目にはじめて200ページを超え、この日にちょうどこの本を読み終えました」は、次のように考えることができます。
(①+6)×5+①×3+④×3=200
とすると
①=8.5
(①+6)×5+①×3+④×4=200
とすると
①=7.03…
ですから、①ページ=8ページです。
(8+6)ページ/日×5日間+8ページ/日×3日間+(8×4)ページ/日×4日間=222ページ
答え 222ページ
本問は、「割合があるときは、割合の条件から着目する」という文章題の基本とページ数が整数であることを使って範囲を絞り込む考え方を確認できる問題です。
「4日目にはじめて200ページを超え、この日にちょうどこの本を読み終えました」という条件の使い方がポイントになっています。
2問目は「やりとり」がテーマの問題です。
【問題】AさんとBさんとCさんはそれぞれいくらかお金を持っていました。最初にBさんとCさんの所持金が2倍になるように、Aさんが2人にお金を渡しました。次にAさんとCさんの所持金が2倍になるように、Bさんが2人にお金を渡しました。最後にAさんとBさんの所持金が2倍になるように、Cさんが2人にお金を渡しました。その結果、所持金は3人とも1600円になりました。初めのAさんの所持金は何円でしたか。
(成城中学校 2024年 問題1-(2))
【考え方】
3人でやりとりをした最後の結果がわかっていますから、最後のやりとりをするひとつ手前の状態を、流れ図をかいて考えます。
□円×2=1600円 → □円=1600円÷2=800円
■円×2=1600円 → ■円=1600円÷2=800円
△円-(□円+■円)=1600円 → △円=1600円+800円+800円=3200円
残りのやりとりも同じようにさかのぼって考えていくと、次のようになります。
答え 2600円
本問は、やりとり算の基本を確認できる問題です。
正解できないときは、条件を「流れ図」に整理できるか、結果のわかっている最後からはじめに向けて戻れるかなどをチェックしましょう。
続けて、3問目です。
【問題】チョコレートが150個あります。150個すべてを使って、3個入りと5個入りの袋をどちらも少なくとも1袋は作るとき、袋の作り方は全部で何通りありますか。また、3個入りと5個入りの袋の数の差が一番小さくなるのは、それぞれが何袋のときですか。
(芝中学校 2024年 問題4 問題文一部変更)
【考え方】
どちらか一方の袋を作らなくてもよいことにすると、
3個×50袋+5個×0袋=150個
から
3個×0袋+5個×30袋=150個
までを考えることができます。
(3個入り、5個入り)=(50袋、0袋)のときから、3個入りの袋を減らし、5個入りの袋を増やしてもチョコレートの合計の個数を変えないようにするには
3個入り×□袋=5個入り×■袋
の式を満たせばよいことになりますから、
□:■=5:3
となります。
5個入りの袋に着目します。(3個入りの袋に着目しても構いません。)
30÷3=10
10+1=11(通り)… どちらか一方の袋を作らなくてもよい場合
実際には、(3個入り、5個入り)=(50袋、0袋)と(0袋、30袋)の2通りが条件にあてはまりませんから、全部で
11-2=9(通り)
です。
次に、袋の数の差に着目するとは、差は8袋ずつ減っています。
50袋÷8袋=6あまり2袋
ですから、3個入りが
50袋-5袋×6=20袋
5個入りが
0袋+3袋×6=18袋
のとき、差が2袋となります。
この次は、3個入りが
20袋-5袋=15袋
5個入りが
18袋+3袋=21袋
で、差が
21袋-15袋=6袋
と2袋より多くなりますから、条件にあてはまるのは(3個入り、5個入り)=(20袋、18袋)です。
答え 9通り、 3個入り 20袋 5個入り 18袋
本問は、答えが複数あるつるかめ算の考え方を確認できる問題です。
チョコレートの総数を変えずに袋の数を変えるとき、比や最小公倍数を利用できることをチェックしましょう。
また、袋の数の差が2袋となった後は再び増えることにも注意が必要です。
最後は、年令算です。
【問題】両親と息子2人がいます。現在、父と長男の年齢の和は44です。20年後に父の年齢は長男の年齢の2倍となります。次の問いに答えなさい。
(1) 現在の父と長男の年齢を求めなさい。
(2) 現在、母と次男の年齢の比は8:1です。( あ )年後、父と長男の年齢の和と母と次男の年齢の和の比が7:6となり、次男が10才になります。( あ )にあてはまる数を答えなさい。
(暁星中学校 2024年 問題2 問題文一部変更)
【考え方】
(1)
現在と20年後の父と長男の年令は、次のように整理できます。
②才+①才=44才+20才×2 → ①才=84才÷3=28才 … 20年後の長男の年令
28才-20才=8才 … 現在の長男の年令
44才-8才=36才 … 現在の父の年令
答え 父 36才、長男 8才
(2)
現在と( あ )年後の4人の年令は、次のように整理できます。
20年後の父と長男の年令の和が母と次男の年令の和よりも大きいことから、現在も父と長男の年令の和が母と次男の年令の和よりも大きいとわかります。
ですから、現在の母と次男の年令の和は44未満の9の倍数と決まります。
また、現在の長男の年令が8才ですから、現在の母の年令は9才以上です。
これらのことは、次のように整理できます。
( あ )年後の母と次男の年令の和は6の倍数ですから「48才」の1通りだけとわかり、( あ )にあてはまる数も「6」に決まります。
答え 6
本問は、年令算の整理方法と着眼点を確認できる問題です。
年令算を解くときは、「2人の年令の差は一定」という基本の知識の他に、条件に応じて見やすく整理できる力も重要です。
なお、解答例では範囲を絞り込んで調べる方法を用いていますが、
(44才+(あ)×2):(⑨才+(あ)×2)=7:6
①才+(あ)=10才
のような関係式を作り、消去算の考え方を利用する解き方もあります。
今回は、2024年度の男子中の入試で出されたいろいろな「文章題」をご紹介しました。
中学入試において、「文章題」で得点できることはとても大切です。
もし、「文章題」が苦手なようでしたら、少しやさしめの基本問題を使って条件の整理方法や解き方の基本を確認し、その後、今回ご紹介したような問題を解いて「文章題」の経験値を高めていきましょう。